No.11「美帆と香帆」

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「あ〜、ううっ」
 ゴールデンウィーク二日目となる火曜日。
 とある大型ショッピングセンターは大きな賑わいを見せていた。昼過ぎとあって混雑も盛況を迎えている。
 そんな人込みの中を掻き分けていく少女、古宮美帆。
 映画館の意図的に作られた暗がりを抜け、すぐ近くのトイレに駆け込んだ。
 美帆は女子便所の洗面台スペースで立ち止まり、一列に立ち並ぶ個室を一瞥、すぐに一番近い個室――手前から六番目の空席――に入っていく。幸いにも大人数の使用に備えた映画館も寄りのトイレは満室になりきっておらず、美帆は我慢することなく和式の個室を使うことができた。そのトイレは和式と洋式が混在している造りだが、緊急事態の彼女にはどちらかを選ぶ余裕がなかった。
「ううぅぅっ!」
 荒々しい施錠、下ろしたてのスカートと下着をずり下げる音、少女の喘鳴が立て続けに起こる。彼女は重力に身を任せるように腰を落とし、終始締めていた力を緩めた。その直後、かわいらしい肛門、その窄まりが一挙に隆起して――
  ブッ ブリブリブリブリブリブリブリ〜〜〜!!
 菊花に似た蕾が開花すると同時に放たれるのは、濁流。水で清められた便器の後方に黄土の本流がなだれ込む。
 美帆は壮絶な便意に急かされ、喉から声を搾り出すようにうめく。
「あっ、うう〜〜〜んっ! んぐっ!」
  ギュル〜 ゴロゴロゴロ!
  ビュビビブチュブチュブチュ! ブリブリブリュッ!
 辛うじて形を成している軟便が先陣を切った山に積もっていき、より高い山に塗り替えていく。
 美帆の蕾が突き出される唇の如く蠢き、次々と便を吐き出していく。
  ブリ、ニチャ…… ビビッ! ビリビリビリブビ!
  ビチビチビチビチビチ!! ブゥ――――ッ!
 遂に柔らかな泥は途切れ、餡のような下痢が降り注ぐ。不気味に軟便の山をぬめりと照らし、便器の底に裾野を広げていく。
「はぁーっ、うぅん、いたぁい……」
  ブビッ ブビブチュチュッ ブリュリュ
 右手をお腹と畳んでいる膝の間に差し込み、ゆっくりとさする。左手は便器前方のパイプを握り、体調不良で危なっかしい彼女を支える一部となっている。
 美帆は公衆トイレで下痢をしているということを忘れ、ただただ排泄に専念している。もう恥ずかしいという理性は持ち合わせていない。個室の領域から脱出した悪臭がトイレに広がっていっていることなど、美帆は片鱗も察していないのだろう。
 だから、流されることなく積もったままの下痢は絶えず腐った激臭を放ち、空気を汚染する。菊花から飛び散ったのは芳しい香りではなく、鼻を突く臭いだった。
「おなか、いたいよぉ」
  ビィ――! ビチュ、ビチ……
  グルグルグル〜
「はぅっ」
  ブビブビブビ! ブリビチビチビチ! ビチチチチッ!!
  ビビビッ ブッ!
 どろどろの下痢、水っぽいおならが続き、お腹の具合をありありと示している。
 それから数十分にも感じられる数分間、渋り腹と戦い、やっと痛みを伴う便意は引いていった。
(もう、でないかな……? 朝は調子がよかったのに)
 美帆は家族で映画を見にショッピングセンターにやってきていた。
 ちょうど昼食を済ませて映画館に入り、指定席に着いた矢先の出来事である。座って数刻もしない内にお腹が暴れだし、物凄い便意となって襲い掛かったのだ。美帆は隣席の姉・香帆に荷物を任せ、トイレに走った……という経緯だ。
 美帆は普段から腸が弱く、出かけた先で濁った排泄をすることは珍しくない。そのため学校に行く平日や、どこかへ出かける直前にはトイレに篭り、出せるだけの排便をしてくる。
 もちろん今朝も出発する直前までトイレを占めていた。結果として少量の軟便を絞りだせただけだった。無論、出ないことに越したことはないので美帆にとっては調子の良い方になる。
  カランカラン
 ホルダーから紙を引っ張り出し、三重にも重ねてお尻にあてがう。菊花の周りは下痢で塗りたくられていた。美帆は紙を千切って穴を拭っては確認し、裏返して拭く、便器に落とすという行為を五回ほど繰り返し、ようやく水を流した。美帆が苦労して絞りだしたそれらを、あっという間に水流が飲み込んで消し去った。
「うー、くさい……」
 嗅ぎ慣れた臭いであれど、不快感を催すことには変わりない。
 恐る恐る外に出ると、目の前には姉の香帆が立っていた。
「お姉ちゃん?」
「だいじょうぶかー、美帆? やっとでてきたね」
 陽気に香帆は返し、片手を上げる。その腕には手提げ鞄が一つ、ぶら下がっている。もう片方の手にもデザインの違うものが一つ握られている。
「もしかして、待ってた?」
 自分が駆け込んだ後にお姉ちゃんも催したのかな……と想像を広げ、美帆は個室を譲ろうと個室の外に出る。だが香帆はノー、と言う。
「まぁウンチしたくて来たんだけどね。これ持ってて」
 香帆は中学三年生である。思春期の真っ只中である少女は事も無げに『ウンチ』と公言し、妹に二人分の鞄を押し付ける。香帆は美帆に鞄を持たせるためにわざわざ待ち構えていたらしい。
「じゃ、ウンチしてくるわ〜」
 香帆はトイレの奥まったところにある洋式の個室に入っていく。ちょうどこのトイレは手前に和式、奥に洋式と便器が半々で分けられている。
「もぉ、お姉ちゃんったら……」
 美帆は姉の発言に赤面しつつも洗面台に向かった。


「お〜、もっちゃうもっちゃう」
 香帆は別に慌てた素振りもなく鍵を閉め、飾り気のないパンツを下ろし着座する。ロングスカートが彼女の膝、便器を覆うように広がった。
「ん、っふぅ」
 香帆は膝頭を揃え、お腹に力を込め始める。昼食後の蠕動のせいか、楽々と物は降りてくる。
「んっ、ん〜」
  ミリ……
 柔軟な肛門を広げつつも茶色の塊がせり出してきた。
「ふぅー」香帆はここで息を継ぎ「んんっ!」声を張って一気に踏ん張る。腹筋に押され便が下降していっている。
  ミチ……ミチチチッ
「んっ、んっ」
  ぷすぅー
 乾いたおならを鳴らしつつ、彼女はきばるのを止めない。
「うぅん、んぅ〜」
  ぷす ぷすっ
 便がずるずると吐き出され、人繋がりに垂れていっている。さながら、蛇のよう。
 そして、その先端が水面に着こうというとき、
「……出るっ!」
  ミチ ミチプリプリプリプリ! ブリブリッ!!
 その一声と同時に便が勢いよく放たれ、着水していく。着水してなお、うんちは途切れることなく排泄されていく。
  ブリブリブリブリブリブリッ ボチャン!!
 一本繋がりの健康便が15センチほど吐き出され、ようやく千切れて出なくなった。硬くも柔らかくもないといった、健康便といって差し支えのない見事なものだった。それは便器の底に沈んでなお、存在感をありありと示し付けている。
「んー、でたぁ〜〜」
 香帆は痺れるような快感に打ち震え、はばかりなく声にする。
 古宮香帆という少女に、大便排泄が恥ずかしいという概念は存在しないのだ。
 肛門がばくばくと運動するが、もううんちが出てくる様子がない。香帆も力を緩めたのか肛門は窄まっていった。
「……んふぅ」
 その時、香帆のお尻がぶるっと震えた。自然と背筋が伸び僅かな快意が口をつく。そして――
  チィィ――――ジョボジョボジョボジョボボ〜〜
 陰毛に覆われた香帆のスリットから、おしっこが放たれたのだ。便意による緊張が解けて、おしっこがしたくなったのだ。軽快にうんちで濁った水面を叩き、黄色が拡散する。
  ジョボジョボジョボジョボ シィィ――チョボボボッ ポチョン
 やがて力なく水流が止まり、雫が垂れるのみとなる。
「あ〜っ、スッキリ〜〜!」
 香帆は声を大にして解放感を叫び、紙を巻き取る。前の方を一回目で吹ききり、後ろの方も一回のみで綺麗にしてみせた。
 立ち上がって水洗レバーを倒すと、大質量の清水が香帆の排泄物をまとめて奥底に押しやっていった。それからパンツを上げてスカートの履き心地を直して個室を空にした。
「さって、早く映画に戻るかな」
 本編の前座、長い長い宣伝も終わったことだろうと香帆はのんびりと歩を進めた。


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