No.12「うみろり」

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 志穂:小学校六年生。ちょっと気が小さい。
 千佳:小学校六年生。クラスの人気者。

 どうしよう、やっぱり恥ずかしい……。
 曇りがちな空を眺め、志穂は嘆息した。
 志穂の憂鬱に感化されたのか、千佳が戸惑いがちに言葉を紡ぐ。
「ね、ねぇ」
 人前でしおらしい姿を見せない千佳の、やけに心細げな声色だった。
 クラスの中でも特に冷静で、自尊心の強いこの子の、弱々しい姿を志穂はまだ見たことがなかった。なのに。
「えぁ、うぅっ」
 ひどく青ざめた表情。
 今の志穂の顔も同じ色だった。がちがちと鳴らし合う歯が寒いと主張している。
「おなかいたいよぉ」
 やっぱり下痢をしちゃったんだ。志穂は確信した。
 海の中でお腹をさすっているのか、浸かった二の腕がリズムよく揺れ、絶えず波紋を海面に漂わせている。
水面下ではぎゅるぎゅる〜、と下品な音を志穂みたいに鳴らしているに違いない。お腹を壊した千佳にとってそれが他人に聞こえないのは幸いなのだろうか。少なくとも志穂にとっては不幸である。
「はぁっ、あぐっ」
 苦しげな喘鳴に、解決に導けそうな返答を出せなかった。だって志穂も辛い。
 昔から仲のよかった志穂たちは、前日から約束した通り海にやってきた。ただ空は雲。志穂たちが海に飛び込んだ頃から陰り出していた。まるでまぶしいばかりの太陽が、志穂たちを見た途端に顔を引っ込めたかのような勘違いさえ感じてしまうほどに、唐突だった。
 それにまだ初夏。水温は曇り空と相まって低すぎて、志穂もお腹を壊してしまった。
「まずいよ、でちゃう」
 お腹の不調を口にしてからは恥も何もなく、千佳は苦心の言葉を漏らす。言葉通り千佳は我慢の限界を迎えようとしていて、間もなく小言以外のものも漏れてしまうだろう。
 不審に砂浜を隠すように茂る林を凝視する千佳。もう排泄する事しか考えられないような焦り様。迷い込んだ街でトイレを探すような必死さが、ちらほらと挙動に垣間見える。
 だが志穂たちが来た海は、観光に来た人が知っているような場所じゃない。ちょっとした裏道を経て辿り着ける穴場だから。
 つまり、ちょっとしたプライベートビーチ状態。だから。トイレなんてない。
「ねぇ、……してきたら?」
 主語のない一言の意図を理解して千佳は首を振る。正直自分がかけてほしい言葉であると同時に、さも痛みを共有できなくて都合も知らずに提言してしまったようだと、言った本人は密かに思った。
「だって、だって」
 一人の少女としての尊厳が躊躇を余儀なくする。
 志穂は仕方なしに、やっぱり言えない、と本音ではない方の――言いたくは無かった方を言う。
「大丈夫だよ。ここに誰も来ないから」
 彼女は黙ったままだった。きっと決めあぐねている。志穂が言いたい方を言えば、すぐに決心できただろうか。
「ごめんね……!」
 彼女はついに決心し、海水をかき分けるように走り砂浜へ。
 海で漏らしてしまうより、陸で出す選択肢を選んだのだ。それは、志穂に出来なかった選択で、とても一人でできそうにもなかったから取り止めた一択。
 言いたかったのは「志穂もお腹痛いの、だから一緒にしよう」
(結局、志穂の下痢は気付かれなかったな……)
 よほど切羽詰まっていたのだろう、途中でおならを漏らしながらも一目散に林へと消えていった。恐らくいつもトイレにしている場所に向かったんだろうと推測する。
 両手で押さえられているお尻が妙に印象深くて、心臓を握られるような寂しさを覚えた。
「ごめんね、志穂も、うんちなの」
  ギュルギュルルギュルルル!!
 ずっと平静を装ったふりをしていたが、もう意味はなかった。
『異変に気付いてトイレに誘ってくれる』なんて都合のいい妄想は、叶わなくなったから。
 緊張が解けると、お尻の強張りが弛緩していくのが分かった。海の中で我慢、という味わった事のない苦境の真っ只中で少しも漏らさなかったのが不思議なくらいだ。
  ギュ〜〜 ゴロゴロゴロ!!
「もうだめぇ――」
  ブブブブブブブブブブブブブブブ――ッ!!
「あああああ……」
 力を抜いた途端、お尻から大量の気泡と、生温い泥が溢れ出した。
 密着率の高いスクール水着の中で濁流が爆発する。
「いやあ、あぁぁぁ……」
 充血した肛門より噴き出した下痢便は、まだ麦色の日焼けすらない背中を這うように浮上していく。
 スクール水着の密着が不幸に不幸を上乗せ。下痢便がうまいこと海中に逃げ出さず柔肌に抵触していく。
 熱されたガスが、べちゃべちゃのウンチが、どろどろのうんちの一群――泥と水の混ざった得体の知れぬ感触は、絶望すら考えさせるおぞましさだったろう。
「ぁ、あ……」
 感じたままの悲鳴が萎縮し、嗚咽に変貌する程なのだから。悲の感情が驚の感情を上回ったのだ。
  ブボボボボボボ! ゴボボボボボッ!
 水中では普通の排泄――おもらしの時点で普遍的ではないが――では聞けない音響が、現在進行形で鳴っている。
「あ、あぁ、いやぁ……」
 絶望を目の当たりにしても、荒れ狂う流水が止まらない。あまりにも耐え難い異常に肛門の括約筋は垂れ流し状態である。
  ゴボボババババババ! ボブゥ――!!
「っあ!」
 水っぽいうんちがおならと共に噴出、水着の中で大爆発を起こした。水着の中が一瞬膨らみ、ふっと萎む。生地の目を抜けておならがブクブク海面で破裂する。
 もはや発声すらままならない志穂。嗚咽とも悲鳴とも取れない音が喉を擦って飛んでいく。
「ト、トイレ……」
 驚愕にまみれた表情で志穂は呟いた。虚ろな瞳は便器を探しているが、捉えたのは白い砂浜。たが極限状態の彼女は、ただ白い陸の上なだけでそこ一帯が便所にしか見えない。
(外で、すればよかった)
 今の彼女にとって外とは、陸上の事だ。
 ただ千佳の告白を聞いていた時にはもう限界だった。それは一歩も動けないぐらいに。
 たとえ千佳が野外排泄に誘ってくれたとして、結局は間に合わなかったのかもしれない。一緒に向かう途中で、決壊していたのかもしれない。
  ブブブ……ブブ
  ゴロゴロギュルルルル〜!
「あくっ! ひっ」
 一瞬落ち着いたかと思われた便意が、中から響くゴロ音と共に再び顔をもたげる。
 弛緩しきった今の状態では噴出も間もないだろう。そう悟った志穂は、せめて陸上でと奮起し一歩を踏み出す。もらしてしまった以上、我慢していて動けないという懸念はなくなった。
(はやく、もれちゃ――)
  バブゥ!
 遅かった。
 動けないぐらい抑え辛い便意だったのだ、切迫して前進すれば……
 志穂は頭の中が白くなり、宙――いや水中に浮いた。脱力して〈転んだ〉のだ。
  バチュバチュブブブ!
 お尻が水面近く浮上し、おならが炸裂する。
 水面を掻き立てるような破裂音が砂浜に響き渡った。
「ひやっ! あぁぁ……」
  ゴロゴロゴロゴロ!
 腹が鳴り、せき立てる下痢便が直腸に流れ込んでゆく。
(もぉ、いいや)
 志穂は悟った。抵抗したって無理だと。
 肩まで浸かった海の中、志穂は地に足を着いて――お腹に力を込めた。
  ボブッバブブブブブ! ボチュブブブブブブブブブ!
「んはぁぁぁあ、かはっ」
 楽な方へ身を任せた排泄は、気持ちがよかった。
  ボボボブブブッ! ゴボボボボボチュ! ブブブブチュアッ!!
 背中を舐めるように沸いてでるどろどろうんちに慣れたのか、〈背中を犯される〉感覚の中、駆けていった千佳の事を思い出す。
(千佳ちゃん、うんちできたのかな)
 下痢を漏らしながら浅瀬へと歩みつつ、勇気を振り絞った友達を思う。
  ゴブブ……ゴポポポッ
 我慢さえしていなければ辛うじて動く事はできる。志穂は膝が浸かる場所まで上がり、まるで便器にしゃがみ込むように、腰を下げる。
 そう、海中でウンチ座り。
「んっ、あああっ!」
  ゴボブビュブブブブブブッ!!
 海中排泄に躊躇いも恥も忘れた少女の、限界を超えた行為に他ならない。
  ボビュウゥゥゥゥ!
「はぁっ、んくぅ!」
 ホースから放水されたような水流の如く噴射する水便は、水着越しに直下の砂を巻き上げる。白い噴煙の中に茶色の欠片が漂う。
  ボブブブブブ! ゴポポポボッ!
 弾けるようなおならを最後に、志穂の便意は潮のように引いていった。
(うぇ、気持ち悪いよぉ)
  ばちゃばちゃぼちゃっ
 ふらふらとしながら志穂は立ち上がる。肌と水着の間から茶色の海水が零れ落ちる。
 おならと違い水着の生地を抜けられなかった大便――特に形のある軟便は、密着しようとする水着と背中や尻たぶに挟まれてただ異様な有り様。
 背中に排泄物を塗りたくられるのに似た感覚を、志穂は小学生だというのに体に刻んでしまった。
 疲弊した肉体を引きずるように砂浜へ上がる。海水から離れて間もない背中はよりひどい悪環境に晒された。
「きたないよぉ」
 背中のうんちが引力に引かれてずり落ちていっているのだ。志穂は全身に鳥肌を震わせ、立ち竦んだ。
  べちゃ べちゃべちゃぼちゃ!
「ふぁっ!」
 遂には股の生地にせき止められていた泥が、砂浜に叩きつけられる。
 志穂はいよいよ纏わりつく排泄物の陵辱に耐えられなくなり、破り捨てる勢いで水着を脱ぎはじめる。その間にも……
  べちゃべちゃぶちゅっ!
 挟撃から解放されたウンチが砂浜に堆積し、積み重なっては下品な音を立てていく。
 水着を脱ぎ切った時に志穂の足元は――おもらしの惨状と何ら変わりのない、泥たまりへと変貌していた。
 漂着したゴミに埋もれる海岸よりも汚らわしい砂浜がそこにはあった。
「やあっ!」
 ゴミでも投げ捨てるように海へ投げ出された水着。回りを染み出た茶色が漂う。
 志穂は浅瀬に広がる下痢の海を目撃し、何ともいえぬ感傷・感情・感想を抱いた。
 きっとそれは言葉にできない、混沌とした思念であろう。志穂の両目から雫が伝う。
 漏らしたうんちはまだ背中や股間にべっとりと付着していた。志穂は水着の浮かぶ場所よりも離れて海に浸かる。
 そして一心不乱に、汚れを落とそうともがいた。

 ――軟便のカケラが浮かび、汚染された一帯。
 志穂は、海で、うんちをもらしちゃったんだ。

 私はいつもの場所を目指し、お腹を庇いながら走っていた。
 この人知れぬ海に来た時のトイレ。林の中の開けた場所なだけだけど、二人で遊びに来た時はいつもそこでおしっこをしていた。
 一人でこっそりと、たまに交互で地面を濡らしあって。時には二人並んで。
 友達の隣で恥ずかしい事をしているのに、二人だとどこかこそばゆい嬉しさみたいなものがあった。
 だけどそこでウンチするのは初めて。それも一人で。
「はあっ……はぁ」
 やっと、着いた……。
  グルギュルギュルギュル〜
「ひぁっ!」
 便意が盛り上がり、お腹が悲鳴を上げる。
 やだ、もれちゃう……。
  ブビュ!
 我慢も束の間、お尻に広がる冷たい――
「ウンチ、でちゃった」
  ブチュ! ブジュアァ――
 はやくしゃがんで、もう我慢できない!
  ゴギュギュギュ〜〜!
「あ、あぁ……」
 今までで最大の便意の波が殺到した。
 瞬間、
 理性の鍵が、外れてしまった。
  ミチミチュミチミチミチッ! ミチュチュチュブリブリブリ! ブチブチ! ギチュ!!
「イヤぁ――――!!」
  ブチュブビブビブビブビッ! ブボボボ!!
 や、やっちゃった……。
 やっとここまできたのに、ウンチが…………。
 私の三日ぶりのウンチは、壮絶なおもらしで始まった。
 以来溜め込んでいたウンチが押し出されるように飛び出し、水着の中に吐き出されてしまった。いつもは時間をかけてやっと出しているのに。
 私の便秘ぎみなお腹を圧倒する下痢が、暴れ狂う。
  ゴロゴロギュルルル!!
「ひいっ!」
  ブボボボボボ!
 もうなりふり構っていられなかった。私は水着の中でウンチを爆発させながら、しゃがんだ。
 できるだけ楽な姿勢で。壊れた理性は一挙に常識のバーを下降させて普段では考えもしない行為に走らせる。
 もう遅いと分かりながら私はただ漏れるウンチに気を逸らされながらも水着を脱いでいく。
「くふぅ……」
  ニュルブチビチュビチュ! ブチチチチ! ブボォッ!
 下痢で満たされた水着の中でおならが爆発する。たちまち泥のようなウンチが沸騰でもするかのように弾け飛ぶ。まるで虫でも蠢いているみたい。
 味わった事のないおもらしの恥辱に吐き気や苦痛を感じながらも、便意は留まる事を知らない。
 水着の肩紐を外し、お腹を気にかけつつ下ろしていく。その間にもお腹のウンチは、
  ゴロゴロゴロ――!
「あくぅっ! んっ!!」
 雷みたいな音を響かせてお腹が震える。直腸に流れ込むや否や軟便が即座に吐き出される。
  ニュルルルルブチブチブチ! ブリブリブリ――!!
「ああ、もぉ、やあっ!」
 鼻を挫くような激臭。腐った臭いが酸っぱい嗚咽をこみ上げさせる。
「ハァ、ハァ……うぅっ」
 フラフラになりながらも、笑うみたいにガクガクと震える膝で立ち上がる。すると水着と肌の間を縫うようにどろどろ――異臭を放つ下痢便――がこぼれて落ちる。何条もの筋となって伝う茶色はただおぞましいばかり。
 朦朧となりかけた意識の中、水着を脱ぐ。
  べちゃべちゃべちゃ!
 脱ぐために片足を上げると水着が傾いて軟便が落下する。足元で無残にも飛散し、くさい飛沫が素足を汚した。
  ギュグギュグルルル ゴポポポッ!
 やだ、まだ出るの!?
 激痛に顔をしかめながらも、ようやく水着を脱ぎ切る。お尻の部分だけが異様に変色している、紺色がもっと黒に近付いていて、水着でないみたい。そして水を吸ったような重さ。
  ドチャ! ボタタタッ
 水着の肩紐と股の布を摘み、意を決して横に。……降って落ちたのは虫、じゃなくて紛れも無く黒い色のウンチだった。
 水着の中で押し潰されたにも関わらず、私のべんぴウンチは一本を保っていた。
 下痢に濡れて鈍く光る一本、目算でも三〇センチ、いやそれ以上……?
 私は眼下に広がる惨劇をまざまざと見つめる。
 やだ……。言葉にならない声にしかならない。
 私のやや後ろに散らばる液状便の水たまり。水着の間からこぼれたものだ。うす茶色の一面に消化しきれていない野菜のかすやウンチのかけらが滲んでいる。
 お腹が突然壊れたのを嫌でも思い知らされる。
 野外でおもらしなんて、と思う。
 学校では成績優秀でおしゃれな女の子で通っているのに……。こんな姿を見られたら、見限られるかもしれないよ。
 それに志穂だって、おもらしそれもこんなにビチビチのウンチだって知ったら……。
「うぅ」
 私はどこか熱っぽさを感じながら、肩を縮こまらせた。
 ……さむい。
 お腹を冷やして、いっぱい下して、水着も脱いだ。
 いよいよ感じていた寒さ・悪寒がぞわぞわと刺さるみたいにやってきた。
 それに呼応するかのごとく――
  グルグルグル〜〜!
「ひゃっ!」
 ま、まだ出るの……?
 壊れたお腹に便意とウンチをせき止める余力なんてなかった。私は便に塗れた水着を宙高く投げると同時にしゃがんで、きばる!
「はああああぁうっ!!」
  ベチャッ!
  ボビュッブボボボボ! ニチニチャミチミチミチ!
 水着の落下音と同時に炸裂するウンチ。それも、まだ硬いウンチが。
 ただ腸の暴れるがままに身を任せ、ひたすらにひり出す。
  ブリリリリリリリ! ビジュビジュジュジュバッ! ブピピピピ! ビリュビチチ!!
「ん〜〜〜〜、はぐぅ!」
 ひりひり熱いお尻の穴。
 中からとげの刺すような苦痛。
 止まらないウンチ、鼻の曲がる悪臭。
 いつものトイレスポットで、味わった事のない苦境に私。
  ブジュ ブシュ…………
 痛みは徐々に和らいでいき、噴出も渋りだしてきた。
 それでも、まだお腹に残る残便感。
「はぁ、どうしよ……」
 今頃、志穂は海で待ちぼうけを食らっているに違いない。もしかしたら心配してこっちに来るかも……。
 その前に戻らなくちゃ……。おもらしも水着の汚れも仕方ない。でもせめてウンチだけは見られないように……。
  がさっ
「ち、ちか、ちゃん……?」
 聞きたくなかった声が、した。
「だいじょうぶ、千佳ちゃん!?」
「志穂……!」
 私は驚愕を隠せず、振り向いた。
 全裸で、佇む志穂を見つけ、私は更に驚嘆する。
「えへへ、私も、げりしちゃった」
  グルルルルル!
 間近にと迫ってきた志穂から、聞こえたお腹の悲鳴。
「さっきはごめんね」
「えっ?」
「実はね、私も、一緒にうんちしたくて……」
 ほんとに? と訊くと黙って志穂は頷いた。
 そっか、私が催した時には、志穂も……。
「こっちも、気付いてあげられれば」
 きっと志穂もここでウンチしたかったに違いない。でも志穂は気が小さいから、言い出せなかったんだろう。せめて私が手を差し出せていたら。
「志穂も、もらしちゃった」
 志穂は汚物に染まった水着を見て、そう言った。
「実はね、海でうんちしちゃったの」
「えっ」
「でもまだ痛いの。…………だから、いっしょに、していい?」
「――うん!」
 どうしてだろう。一緒にウンチするのが、嬉しいだなんて。
 志穂は広がる下痢の水溜りに構わず侵入し、私の隣にしゃがんだ。
  グギュルルル!!!
 どっちのお腹からか分からない轟音。私たちは顔を見合わせて、はにかむ。
「うんち、でるっ」
「んんっ、ウンチ……」
 呟きが途切れた途端、私たちは噴出させた。
  ボボボジュブビビビビビビ!! ブビィ――ブバババビビィ――!!
 二人の爆音が交じり合って、甘い喘ぎが重なって。
 お尻の穴だけじゃない、おしっこの所も熱かった。
 足を濡らす飛沫も、鼻をぐちゃぐちゃにかき混ぜる便臭も、ただ悲劇にしか思えなかった腹痛も気持ちよかった。
 志穂と一緒に
 千佳と一緒に

 ――痛みを共有できるから。


 渋るうんちを出し切ってわたしたちは海に戻った。
 まだ私の汚した砂浜や海は恥ずかしかったけど。
 海の隅っこでぐしょぐしょのお尻や、なぜか熱っぽいおまたを洗いあった。
 もう恥ずかしくない。だって千佳は笑ってたから。

 この一件以降、志穂と千佳の仲は何者も引き裂けぬ断固なものになった。
 そして必然的に抱いた性癖もまた、本能のように身に刻まれる事になったのだが。
 それでも二人は、親友であってそれ以上の関係として、学校生活を過ごしていった。




<あとがき>

 ゲストの高町です。
 今回は趣向を変え、『水中排泄』という新ジャンルを確立してみようとチャレンジしました。
 正直見たことも聞いたこともしたこともないので、憶測混じりの作品となりましたが、いかがだったでしょうか。
 事情シリーズのあとがきで『おもらしは書かない』と記しましたが、今回は気付かぬ内におもらし書いていました……。
 水着なら汚しても構わないという身勝手な考えがあったかもしれません。
 野外もおもらしも苦手なのですが、何とかやりきって見せました。
 この作品執筆にあたって掲載スペースを提供してくださるbrown様、ならびに閲覧して下さる読者の皆様に感謝の意を表して締めたいと思います。
 ……感想とか、お待ちしています。

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