No.13「ふたろり」

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 志穂:高校二年生。ちょっと気が小さい。
 千佳:高校二年生。クラスの人気者。

 小雨が町を撫でる。
 本格的、いや本物の梅雨が到来した六月の午後。
 湿気に包まれた住宅街に佇む高層マンション、とある階層の一つの部屋に制服を身に纏った少女が訪れた。
  ピンポーン――……
 軽快なインターホンの後数十秒、重厚な施錠の外れる音と共にドアが開け放たれる。
「いらっしゃい、千佳ちゃん」
 むあ、とした熱気が外から舞い込むことも厭わず、パジャマ姿の少女――志穂は来客を出迎えた。
「ごめんね、突然押しかけちゃって」
「……いいの」
 声も弱々しい志穂が後退して道をあけると彼女に気を遣うように千佳が入室。
 千佳は出された来客用のスリッパを履き、ふらつくような志穂に着いていった。
「えっと、まずはこれね。今日の配布プリント」
 居間に通されてから千佳は鞄からプリントを取り出し、志穂に渡した。市からのアンケートのようで、封筒に詰められている辺り、それは保護者対象のものらしい。志穂はそれに目敏く気付くと無意識に封筒を机の隅によかしてしまう。
「別にすぐ出せってやつじゃないし、志穂のお母さん……帰り遅いもんね。先生も急がなくていいって言ってた」
「ん、そう」
「一人じゃ色々と不便でしょ? インスタントのお粥とか買ってきたの!」
 千佳は手に下げていたエコバックからあれよこれよと商品を運び出す。桃の缶詰や赤々と実ったリンゴをはじめ、温めるだけで食べられるパックのお粥、額に貼る解熱シートなどを机に並べていく。
「ごめんね、こんなに……ありがと」
「いーのいーの! 風邪なんだから甘えていいんだよ?」
 もはや隠すべくもないが、志穂は風邪を患い、高校を欠席していたのだ。
 小学校からの親友である千佳がそれを知ったのは一時間目後の休み時間だった。朝礼になっても姿を見せない親友が気がかりでメールを送ったところ、夜から熱っぽくて大事を取って休むとの胸が電子フォントで打たれていたのだ。
 お見舞いに行くね、と千佳は盛大に絵文字で飾られたメールを送信し、志穂が飾り気のない文面で『うつしちゃわるいから』と丁重にお断りするのも構わず、持ち前の図太さで押しかけた、という次第だ。
 意見を前面に押し出さないような気弱な少女は、風邪に中てられたせいもあって気力が更に減退しているように見える。志穂の父親は単身赴任でいないし、母親も深夜に帰ってくるような職業なので、今まで一人きりで寂しかったに違いない。千佳は自分が励ましてあげなきゃ、と机の陰で拳を握る。
「何かお昼食べた?」
「ヨーグルトがあったから何口かだけ……でもそれで、あの……」
 志穂の声が窄んでいく。
「おなか、こわしちゃって」
「風邪っぽいのに乳製品はちょっとねー。……調子は?」
「少しだけ、よくなったかも。すごい、しゃーしゃーだったの」
 千佳は沸きかけた感情を努めて冷静に抑え込みながらも答える。
「そっか、まだお腹いたいの? 食欲ある?」
「今はいたくないよ。ちょっと、おなかすいたかも」
「じゃあ消化にいいお粥とか果物でも食べよっか」
 千佳は志穂の遠慮がちな制止を振り切って台所に立った。
 食器棚から適当に器を出してパックのお粥を一食分だけ開ける。それを電子レンジに放り込んで規定の加熱時間をセット。温めている間に桃の缶詰を開封、しようとして缶切りがないことに気がつく。千佳は迷わず食器棚の上から二段目の引き出しを開け、目的の缶切りを見つけ出した。千佳は親のいない志穂の家を訪れては、仲良く昼食を作った経験があるので、缶切り一つでも見つけ出すのは容易であった。
 ざっくりと半分に割られた白桃を一口分に切り、爪楊枝を刺して底の深い皿に盛り付けた。レンジが電子音を鳴らして止まるのを見計ってトレーに乗せ志穂の元へ。
「さー召し上がれ〜」
「ありがとっ。……いただきます」
 志穂は千佳の用意した遅い昼ごはんを、数十分かけてたいらげた。どこか無理をしたような様子ではあったが、千佳は気がつかなかった。志穂もまた、千佳に感づかれないようにと、気力を振り絞って食していた。後からちょっと無理したなぁ、と思いふけることになるのだが。
「ごちそうさま……」
「全部食べちゃったね。無理してない? ぼーっとして」
「う、ううん。お腹空いてたもん。それよりも、千佳ちゃんもちょっと顔赤くない?」
「学校は学校で欠席者多かったし、もらってきたかも。六月なのにちょっと寒いからだと思うけどね。お皿洗ってくるね」
「ごめんね。私、ちょっと横になるね」
 千佳は牛に〜などと茶化す言葉を飲み込んで、台所へ。
 ちょっとだけ倦怠感があるのは否めなかった。
 小雨に濡れたせいかもしれない。それとなく風邪の気配がするけど、間違っても志穂からもらったものじゃない、と否定。
 皿を洗い終わった頃、千佳は自分のお腹が不気味な塊が震え出したことを気取った。
  ぎゅるる……っ
 同時に鋭い刺激がお腹をのた打ち回る。
「やだ、お腹いたっ」
(うそ、下しちゃった!?)
 この慣れ親しんだ痛み、間違えるはずもなく下った便意だった。
(ん〜、トイレ借りよっかな)
 でも我慢できそう……という相反する意見を導き、即座に打ち消す。出せる時に出しておくに越したことはない。それに、気になることがあるからトイレには行っておきたい。
 軽くお腹を擦りながら居間に戻るが、志穂の姿はなかった。横になる、と言っていたので自室に戻ったんだろう。
  コンコン
「志穂―、いる?」
「うん、どうしたの?」
 ドア越しに弱ったような声が届く。
「ちょっとトイレ借りるねー」
「うん……」
 千佳は志穂の許可をもらったやいなや、早足気味に廊下突き当たりのトイレへ。ドアを引くと、台所のように慣れ親しんだ洋式便器が垣間見える。一日中志穂の家で遊ぶことなどよくあったので千佳のおしっこと、うんちも受け止めたことのある便器だ。
 ドアを半開きのままにして便器と向き合う。施錠はしない。まるで自宅のトイレのような気軽さだった。
 便意に急かされながらも便座にかかった蓋を開ける。すると千佳の鼻腔に僅かながらも異臭が舞い込んだ。……大便の、それもきつい臭い。
(志穂の、下痢のにおいだ)
 ヨーグルトで下したということを聞いてから、千佳はそのことが気になって仕方がなかった。表面では精力的に志穂を支えようと振舞っていた一方で、便座に座り込みぴーぴーの下痢便を放つ妄想を繰り広げていたのだ。
 今にも腰を下ろして排泄したい意欲を押しのけ、便座をも持ち上げた。排泄するには必要なそれを恐る恐る上げ切り、便座の裏を見据える。
「あっ……」
 見つけた。下痢の雫がこべりついていた。薄い黄土色の水玉模様がいくつか、散って染み付いている。千佳は例えようのない興奮を覚え、まじまじとそれを見つめる。
(見慣れてるはずなのに……状況が違うとやっぱ……)
 それから便器自体にも目を移せば、水流のさらいきれない箇所にも下痢の残滓が。
(あたし、志穂がウンチした後のトイレで、ウンチするんだ……それも、げりぴーの)
 千佳の異常ともとれる性癖は今に始まったことではない。それも志穂を巻き込んで、だ。
 少女の歪んだ始まりには、小学生の時に無人の海を訪れたことが起因する。
 冷えた海水でお腹を壊した二人は揃って下痢をもらしてしまい、並んで野外排泄を試みたことがある。中でも志穂は海中で大便を噴射するという奇異な体験までこなしている。
 そんな事件以来、蜜にでも誘われるかのように浅いスカトロジーをこなし合った。
 といっても言葉通りに浅かった。単に片方が排泄をして、もう片方がそれを眺める。千佳はそれに重ねて便秘気味の硬質便を排泄して、トイレを詰まらせたこともある。また、コーヒーやキシリトールのガムを多量に摂取し、無理やりお腹を下させたこともした。
 だから千佳は志穂の便など見慣れていた。
 数刻それらを代わる代わる見つめ、振り切るように便座を下ろす。もう千佳も我慢ができなくなった。レースの細かい黒の下着を膝ほどにまで下げ、スカートのホックを外す。そして着座。それからパンツもろとも床まで降ろす。千佳の下半身は完全に晒された。
 重みを感じて自動的に便座に熱が循環していく。
「ウンチ、でるっ」
  ブリュッ ニチニチミチミチミチッ ボチャンッ!!
 肛門がむりむりと隆起し、大便を吐き出していく。猛烈な便意によって押し寄せた下痢が、元から潜んでいた便を加速させる。大きな音を立てて太い一本糞が水の張った便器に着水した。
「あ、ふぅ……んんっ」
  ゴロゴロ〜〜ギュルルルッ!
 たまらず千佳が上半身を倒して膝を抱える。
  ミチニチムリムリムリッブリブピピピッ! ブリブリブリィ――――ビシャシャシャシャッ!!
 茶色がかった軟便の後は形の崩れかかったウンコが噴出されていく。充分に水分が吸収されず、ふやけたスナックのような下痢がぼとぼとと着水音を立てていく。
(おなか、いたいっ! ウンチが……っ)
  ビジュィ――ブピッ! ブビビビビビ、ブビュゥ――ッ!!
 千佳の肛門の周りを汚しつつも下痢便はなおも勢いを緩めない。卵の傷んだ腐臭が閉じた膝の間から湧き上がり、千佳の鼻に突き刺さる。
「あたしのウンチ、くさっ……ふぅんんっ」
  ブビュッ ビチビチビチュ、ビヂヂヂッ
(あぁ、やだ……感じてる)
 液状便の摩擦で熱を帯びた肛門のように、千佳のスリットも妙なあたたかさを湛えていた。
(あたし、また志穂のトイレでウンチしてるっ。それも志穂がウンチしたあとで……!)
 折りたたんでいた上半身を起こし、貯水タンクにもたれかかる。挟まれた蓋がぎし、と軋む。
(ドア閉め切ってないからくさいの、廊下に漏れてる……きっとウンチの音も、いっぱい)
 このトイレと志穂の部屋はわりかし近いため、水洗の音は小であっても筒抜けなのだ。きっと志穂にもあたしのウンチの音、下痢の音が聞こえてるよぉ……などと興奮を更に守り立てる。
 その時不意にドアの開け放たれる音がした。びく、と目前のドアを見据えたが半開きのまま。となると、
(志穂の部屋の、ドア?)
 千佳が疑問を解決する暇もなく慌てた足音が千佳に向かって殺到する。明らかにトイレに向かっていた。
「え、ちょ、志穂!?」
 騒音を立てて半開きだったドアが完全に解放される。その向こうの景色に映ったのは、口元を抑え、顔面蒼白にした志穂だった。
「ちかちゃんあけて!」
 早口にくぐもった声を放ち、志穂が崩れるように膝をついた。千佳は意図を察して逡巡することなく足を大股に開いて腰を奥へと持ち上げる。
 志穂もまた迷うことなく両手を千佳の両足にかけて、顔を便器に押し込む。そして、その瞬間――
「げえぇぇぇえええぇ――――――っ!!」
  ドボゴボシャシャボヂャボチャボヂャッ!!
 志穂は大口に、盛大に胃の中の何もかもを、ぶちまけた! 千佳はその異常な光景を、陶酔するような気持ちで、体感する。
 千佳の両足に挟まれるようにして顔を便器へ押しやり、嘔吐する。
「おうえぇぇええぇぇぇっ! げほっ、げぼっ!」
  ビシャボチャボヂャボシャン! ビシャシャシャッ! ドボン!
 クリーム色の濁流が怒涛の勢いで下痢便のたゆたう便器を満たしていく。
「ごほっ、えほっ……うえぇぇっ!」
 吐き戻した空気を取り戻すように呼吸を繰り返す志穂。逃げ場のない激臭が直撃し、更に吐き気を刺激する。
「げえええぇ――――っ!」
  ベチャボチャドボボボシャッ!! ボシャボシャボシャッ、ベチャ
「えほ、げほ、うえっ!」
 もう戻す内容物がないのか、えづいても逆流はしてこなかった。
「志穂、大丈夫?」
「うぇ、はぁ……あぐっ」
 志穂は便器と足に顔を埋めたまま、答えることもままならない。
(すごい、志穂が、ゲボしてた……!)
 不謹慎な感動が千佳の脳髄を駆け巡り、言いようのない激昂が走る。千佳のスリットはぬらりと光る体液に濡れぼそっている。
 今までに大便し合ったような興奮じゃ、収まりきらない快感がそこにはあった。
「ちか、ちゃん……ごめ、ん」
「いいの、いいの……しょうがない、もんね……あふぅ。しほ、頭上げて、ウンチ……でちゃう」
  ゴロギュゥ〜〜〜ゴポポポッ
 何が急かしたか、まだ残っていた液体が直腸に注がれていく。
「いいよ」
「えっ?」
「このまま、うんちして、いいよ……。しほの、……しほの汚物にうんち、かけてっ」
「わかったよ、するね。……でる、ウンチでるっ!」
 もう志穂に下痢がかかるだとか、そんな懸念はどうでもよくなっていた。誰もが快感に抗えない。
 赤く腫れ上がった菊花が隆起し、膨らみ上がる。
  ビュビィィィィ――ブリビシャビチャブビッ!! ブビビビビビビッ!!
 千佳は力強くきばり、穢れた雫を大仰に噴射する。その飛沫は首をつっこんでいた志穂の汗にくすんだ頭髪にも降りかかっていく。
「私も……出ちゃうよおっ!」
 超至近距離で下痢を浴びせられたことは、生理的嫌悪か性的興奮か。どちらにせよ志穂もまた吐き気を再発させていた。
「うおえぇぇぇぇぇっ!」
「ふあぁぁぁ、んんっ!」
  ドボビシャシャシャシャシャッ!
  ブリビチビヂヂヂヂッ! プピピピ、ブピィ――!!
 嘔吐と下痢の二重奏が、狭い個室に響き渡った。

 二種類の汚物に汚染された便器の中身は散々たるありさまであった。
 便器一面に飛び散った黄土色とクリーム色の水玉模様は、便器の白であった部分をほとんどと言っていいほどに塗りたくっていた。水面は原型を留めたお粥が浮かび、どろどろの桃も浮かび沈みしていた。そこへ混ざるように千佳の下痢便の欠片、崩れた繊維のような便も見え隠れしている。
「志穂、無理して食べた、んだよね? ごめん、気がつかないで……」
「いいの。だって、嬉しかったの。看病されるって」
「ほんと、ごめんね、志穂。ね、お風呂入ろっか。志穂の頭、ウンチまみれだし」
「うん。熱っぽいけど、いいよ……」
 千佳は志穂が離れるのを待ってから立ち上がり、足元のパンツとスカートを抱える。当然お尻の後始末をしないままにトイレの外へ出ようとして、振り返る。
 そっと便器に蓋をして、千佳はトイレのドアを閉めた。


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