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それは梅雨があけようかという頃だった。僕は受験勉強の気分転換にと、午後遅く市民プールの開放に出かけた帰りだった。
天気予報が外れて、夕方からひどい雨が降り出した。
僕は駅から自宅までの途中にある公園で、雨をやりすごそうと唯一屋根のある建物に駆け込んだ。
それは男女共用の公衆トイレだった。
トイレの外に張り出したひさしの下にたどり着き、鞄の中から、なんとか雨にやられていないスポーツタオルを引っ張り出した。
びしょぬれの身体を拭いて人心地ついた僕は、ふとトイレの中が気になった。
(可愛い女の子が用を足してたらいいな)
しかし、実際に少女の排泄を覗く勇気なんて自分にはないだろうし、汚いところを見たらかえって幻滅するんじゃないかとも思っていた。少なくともその日までは―。
降りしきる雨に足音を忍ばせてトイレに入ってみる。残念ながらトイレは無人だった。
今どき男女共用というだけでも珍しいが、個室は狭苦しくて、上下に大きな隙間があるような和式トイレだ。
これでは女性が用を足しに来るわけがない。よほど切羽詰ってれば話は別だろうが。
諦めてトイレを出ようとした時、僕は制服を着た女子中学生と鉢合わせてびっくりした。
しかも彼女の顔には見覚えがある。マンションの隣室の娘なつみだった。
僕と彼女の兄とは小学校から高校までずっと一緒で、大の仲良しだった。彼は成績優秀で、この春に東京の大学に進学した。
かたや僕はといえば、親元で浪人生活を送っているというわけだ。
隣家の兄妹は年が離れていて、妹は、たしか彼女は3ヶ月前に中学生になったばかりだ。
なつみはいわゆる「お兄ちゃん子」で、小さいころは僕と遊んでいる兄にまとわりついていた。
しかし、さすがに高学年ともなるとそんなことはなくなり、兄が上京してしまうと、僕となつみとの交流は途絶えてしまった。
彼女は10代にさしかかるころから、僕好みの美少女に成長したので、とても残念なことだった。
この1年あまりの空白が、かえって僕に異性としてのなつみを意識させた。
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最初、僕はなつみも単に雨宿りのためにこのトイレに立ち寄ったのだろうと思った。
しかし彼女は、迷わずトイレの中に入ってきた。
そこでようやく僕の姿を認め、狼狽したような表情を浮かべて立ち止まった。
その時の彼女の様子は今思い出しても情欲をそそられる。
制服をまとっていたとはいえ、彼女の小柄で丸っこい身体は小学生にしか見えなかった。
以前と違ってアップにきちんとまとめられた髪が、わずかに女性を感じさせた。
スポーツが好きななつみはいつも健康的な小麦色に焼けて、明るい表情を絶やさない。
しかし、そんな彼女が顔面蒼白になり、焦燥と苦痛の表情を浮かべて大きな目をきょろきょろさせていた。
僕はこういう嗜好の人間だから、直感的に気付いた。彼女が下痢をしていることに。
「やあ、なつみちゃん?」
「こんにちは」
彼女は含羞を漂わせながら会釈した。彼女は鞄を脇に抱えるような仕草をしながらも、明らかにお腹を押さえていた。
僕は気付かないふりをして会話を続ける。
「久しぶりだね。学校はもう慣れた?」
「ええ……」
少女が額に玉の汗、脂汗を浮かべているのが見え、さらに近づくとかぐわしい体臭が、かすかに嗅ぎわけられた。
「お兄さんはどうしてる?」
「なんだか、授業にも行かずにアルバイトばかり……」
ぐう〜 ぎゅるるる
ついに彼女の腸が悲鳴を上げた。少女は目を伏せて黙り込んでしまった。
この時、なつみはどれほどの焦燥と苦悩に苛まれていたことだろう。
このまま我慢すれば、異性の前で決壊を迎えてしまうし、かと言ってトイレに駆け込めば、大便をしますと公言するようなものだ。
一瞬の気まずい沈黙が流れた。僕はとっさに
「何だ、お腹すいてるの?」
と、とぼけた。
「お昼から何も食べてないので……」
「そうか、育ち盛りだもんね。一緒に帰る?」
「いえ、私ここで着替えて行きます」
「そう、じゃあね」
僕は冷静を装って彼女と別れるふりをしながら、考えを巡らせていた。
雨どいを伝って隣の倉庫によじ登れば、通気用の小さな窓から個室の中を覗けるのではないかと―。
しかし、まずは彼女が個室に入るのを確かめることにした。息を殺して様子をうかがっていると、
ばたん がちゃ
なつみが個室に入り、扉に鍵を掛けるやや乱暴な音が響いた。
続いて、がさごそと衣擦れの音がする。どうやら雨でびしょびしょの制服を脱いでいるようだ。
その音が止むか止まないかというタイミングだった。
ぶぱっ ぶりぶりぶり〜
火山の爆発のような音が響いた。
僕はトイレの裏側に廻った。うまく倉庫の上に上れるか、また通気用の窓が開いているか、ふたつのことだけが気にかかった。
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結果は全て思い通りだった。小さな窓から覗いてみると、僕の眼下に素晴らしい光景が広がった。
少女は制服の上着とスカートを扉のフックにかけて、下着姿のまま和式便器にまたがっていた。
膝を抱え込むようにして腕を組み、その上に顔を伏せていた。
水色のジュニア・○ラの食い込む背中がまぶしい。同じ色のパンツが、良く鍛えられて引き締まった太腿に引っかかっている。
突き出された小さく、丸っこいお尻は、日に焼けた太腿との対照でよけいに白く見えた。
小さな身体は激しい下痢の爆発に耐え切れないかのように、はぁはぁと肩で息をしていた。
和式便器での大便は不慣れなのだろう、最初の爆発は便器の中におさまり切らず、黒っぽくどろどろとした便が周囲の床まで汚していた。
と、激しく上下に動いていた彼女の肩が止まった。
「ふぅん……」
僕が生まれて初めて聞く少女の息み声。
ぶりゅりゅりゅる ぶばぁ
「か、はぁ」
考えうる限りもっとも下品な排泄音が響き、少女はそれに見合った汚らしい大便を下した。
今度は用心したのか、床や便器の縁を汚すことはなかった。
「うぅん」
ぶぅ〜 びちちちち
なつみが間断なく腹圧をかけると、豪快なおならと液体に近い大便が排出された。
「はぁ、おなか痛いよ〜」
泣き声のような独り言が漏れる。
この頃になると、窓のところまで、なつみの便臭が漂って来た。
それはちょうどこの季節に排水溝やどぶ川から漂ってくるメタン臭そのもので、少女の甘酸っぱい体臭とは完全に異質の匂いだった。
体調を崩して、腸内環境を悪化させてしまった彼女のお腹の中に迷い込んだような錯覚。
それは僕にとって世界観を変える出来事だった。隣家の美少女の体内に、こんな腐敗臭が漂っていること。
含羞をたたえた、初夏の精のように愛らしい少女が汚い和式便所の中で見せる痴態。
そして嫌悪を催すに違いないはずのその痴態が、悪臭が僕にかつてないほどの性的興奮をもたらすこと。全てが驚きのの連続だった。
ふと僕はこの痴態をもっと近くから味わいたいという衝動にかられた。そこで音を立てないように窓から下り、トイレの入り口に廻った。
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「うん……ふ……うん……うん」
ぶり びち ぶり ぶしゅ ぶりりぃ
僕が息を殺してなつみの入っている個室に近づくと、まだ彼女は渋るお腹と格闘して、苦しげな気張り声を漏らしていた。
湿気の多い季節、狭くて換気の不十分なトイレは、なつみの便臭が充満して、まさに変態の桃源郷という趣きだ。
個室の下の大きな隙間から覗くと、丸いお尻が上下しながら懸命に汚物を吐き出していた。
「う うん」
びちちち
「はぁはぁ」
「あぁ……」
少女の排泄器官からは何やら繊維質のものがぶら下がってぷらぷらと揺れているが、とにかく排泄は一段落した様だ。
僕は声を掛けるなら今だと判断した。
こん こん……じゃばー
ノックの音に驚いたなつみが慌てて水を流した。
しかし、そんなことでトイレ内に充満した便臭が消えるわけなどないことは本人もいるだろう。
「なつみちゃん」
僕は中の人物が誰なのか、確信しているように呼びかけた。実際覗いていたのだから、確信はあったのだが。
「……はい」
しばしの間があって、蚊の鳴くような返事が聞こえた。少女はきっと、僕がいつからトイレにいたのか気になっているだろう。
この臭いを嗅がれているのは間違いないにしても、あの音は? この音はどうだったのだろうと。
そう考えるだけでも僕の声は興奮で上ずりそうだったが、平静を装って続けた。
「実は家まで帰ろうと思ったんだけど、僕も急にトイレに行きたくなってしまったんだ」
「……」
「共用トイレとは言っても、女の子が入ってる間に使うのは失礼だと思って外で待ってたんだけど、君がなかなか出てこないから」
「……すみません」
「いや、なつみちゃんは悪くないんだけど、まだ時間がかかりそう?」
目覚めたばかりの女性としてのプライドを引き裂くような残酷な質問だった。彼女の腹具合、便意を尋ねているに等しいのだから。
もっと直截的な言語に翻訳すれば、
「なつみちゃん、トイレ長すぎるよ。まだお腹痛いの? うん○はまだ出そう?」
というところだ。
ぐぎゅ〜 ごぽ
「ふぅっ」
その時行き場を失った下痢便とガスが彼女の大腸を逆流して、大きな音を立てた。そしてかすかに漏らしてしまった苦痛の声。
沈黙してしまった少女に代わって、彼女のお腹が雄弁に語ってくれた。
「君がまだ出れないようなら、僕もトイレを使うよ。かまわないかな?」
「はい、どうぞ」
なつみは観念したかのように、ようやくそれだけ言った。
個室が二つしかないトイレで、顔見知りの異性と並んで大便をしなくてはならないとは―
思春期の少女にとっては死刑宣告に等しいだろう。
僕は劣情を燃えたぎらせながら個室のドアをしめ、ズボンを下ろして座った。
今でも、あの日の自分の行動を思い返すと、強い罪悪感とそれ以上に激しい性的興奮を覚える。
僕は水を流して用を足すふりをしながら、なつみの様子をうかがった。耳をすますと
ぐうぅ ごろごろ
「はぁぁ……はぁあ」
と、お腹の鳴る音と必死にこらえているらしい、押し殺したうめき声が伝わってきた。次なる決壊の時は目前に迫っていた。
なつみが突然水を流した。
じゃばぁ〜 ぶりぶり ざー びちっ ぶり じゃばぁ〜 ぷぅ ざー
本来は清浄なはずの水洗音に混じって、かき消すことのできなかった汚濁音が延々と続いた。
なつみは我慢しすぎたために排泄のコントロールが利かなくなっているようで、何度も何度も水を流しては大便を発射し続けた。
やがて、タンクには十分な水が溜まらなくなり、
ぶりゅりゅりゅりゅ〜
少女の放つ爆音がトイレ全体に(いや、ひょっとすると公園じゅうに)響き渡った。
僕はどうしてあそこまで残酷になれたのか、自分でもわからない。人生に唯一の機会を捉えて声をかけた。
「なつみちゃん、お腹を壊してるの?」
「いえ、大丈夫です」
ぶりぶりぶり……
まさに現在進行形で、ヘドロのような大便をひり出している少女と並んで個室に入り、彼女と会話をかわすという嗜虐。
「大丈夫そうじゃないよ、外で待ってるから、ゆっくりね」
「はい、すみません」
びびびびび……
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どうやらそれが最後の大爆発だったらしい。なつみはほどなくトイレから姿を現した。
濡れた制服は鞄にしまったらしく、部活動で着るらしいジャージに着替えていた。
憔悴しきった表情で、もう隠してもしょうがないと思ったのか、お腹をさすっていた。
「おまたせして、すみませんでした」
今日の彼女は謝ってばかりだ。本当は僕のほうがいくら謝っても許されない立場なのだが。
「お腹の具合はどう? 良くなった?」
「はい、少しは落ち着いたみたいです」
「良かった。鞄をもってあげるよ」
「ありがとうございます」
全てをさらけ出してしまったからだろう。なつみは幼いころに戻ったかのように素直だった。
「じゃあ、雨もやんだみたいだし、行こう」
ふたりは家に向かって歩き出した。なつみは両手でお腹をかばいながら僕の後についてきた。
出来ることなら、この少女を連れてどこか遠いところに行って、二人きりで暮らしたかった。
もう少しで自宅のマンションに着くという時、コンビニの前でなつみは立ち止まった。
彼女の顔からは再び血の気が引いていた。
「あの、ここで―」
彼女は語尾を濁したまま店内に駆け込み、トイレに入ってしまった。
もう出るものもあまりなかったのだろう。5分ほどで彼女は出てきた。
入れ代わりに入った女性がすぐに飛び出してきて、不快そうな顔でなつみを睨んでいた。
また、成人向けの雑誌を立ち読みしていた見るからにオタクっぽい青年が、僕らに好奇の眼差しを向けてきた。
ふたりは駆け落ちでもするかのように、こそこそと店を出た。
ようやくマンションに帰り着き、僕はともかくなつみを家に送り届けようと、久しぶりに隣室のチャイムを押した。
しかし、返事はない。隣人夫婦は共働きだが、奥さんは昼間だけのパートタイマーである。
この時間には夕食の買い物を終えて、家に居るものだと僕たちは思っていた。
とにかくなつみをこのままにはしておけないので、僕は彼女を家に上げた。いや、実はそうしたくてたまらなかったのだが。
僕は少女に正露丸と温かいポカリスエットを与え、様子を見ることにした。
なつみはまだお腹が気持ち悪いといって、ソファの上で小動物のように丸くなった。
僕は心配と劣情とがないまぜになって、彼女のそばを離れられなかった。
僕は彼女の腹をさすってやりたくてたまらなかったが、かろうじてそれは我慢した。
僕はなつみにここ数日の体調や、下痢の原因として思い当たることを尋ねた。
なつみの答えは、興味深くも劣情を刺激するものだった。
昨日の夕食後、いつものように排便した時はふつうだった。
それが今朝も排便があったので、少しお腹がゆるいかなと思った。
しかし、日中は特に腹痛や便意は感じなかったので、いつもどおりに昼食をしっかりと食べ、部活動にも参加した。
暑い中、激しい練習をしたので、水をたくさん飲んだ。飲みすぎたかもしれない。
帰りにお腹が空くといけないので母がパンを持たせてくれるのだが、その味が少し変だったかもしれない。
帰宅のために電車に乗ると、すでにお腹がごろごろいいはじめ、下車した時には耐えられないくらいだった。
なんとか自宅まで、せめて清潔で完全個室のトイレがあるコンビニまでは我慢したかったが、
お腹の具合が急速に悪化して、やむをえず普段なら絶対に使わない公園のトイレに立ち寄った。
自分ではお腹が弱いほうだとは思わないが、部活の試合や定期試験の前に急にお腹が痛くなることがある。
最近、学校でお腹にくる風邪が流行っていると聞いたが、自分は夏に風邪を引いたことはないから気にとめたことはない。
ふだん、学校で大便をすることはない。小学生の時もどうしても我慢できなくなったら、他の校舎まで行って用を足していた。
やはり恥ずかしいから。また、慣れていないので、和式だと大きいほうがやりにくい。
なつみは羞恥心すらも衰弱したように、僕が問いかけるまま、こんなことを取りとめもなく語った。
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もしこれ以上彼女の体調が悪くなれば救急車を呼ぼうかと考えていた時、ようやくなつみの母親が帰宅した。
突然の雷雨で電車が止まり、バス・タクシーは長蛇の列。
おかげで奥さんは、パートタイムで事務をしている地方都市で、いつまでも足止めを食っていたのだという。
ともかく僕に何度もお礼を言って、奥さんは娘を連れ帰った。
その日以来、なつみは僕に懐くようになった。小さい頃兄にしていたように僕に付きまとった。
その年のバレンタインには本命と思われるようなチョコレートまでくれた。
さすがに中学1年生の告白を受け入れるわけにはいかず、適当にごまかした。
おそらく彼女の僕に対する愛情はファーザー・コンプレックスの延長のようなものだったのだろう。
ほどなくなつみは僕からもお兄ちゃんからも「卒業」して、同年代の男の子と付き合いはじめた。
あの公園のトイレも、清潔で管理の行き届いた男女別トイレに変わってしまった。
それでも僕はまだ、あの日の雨に濡れたなつみから卒業できずにいるのだ。