No.06「八神はやての失敗」

 八神はやて
 ロストロギア「闇の書」の主。
 天涯孤独だったが10歳の誕生日に主になって以来守護騎士たちと暮らしている。
 両足の麻痺という持病がある。このため小学校は休学中。
 ヴィータシグナムシャマルザフィーラ:闇の書の守護騎士。
 ※極力アニメの設定に準拠しています。詳しい設定はウィキペディア又は本編をご覧ください。

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  グルルルルルルルルゥ……

 八神はやては腹痛で目をさました。すぐにトイレに行かなければならないが彼女は足が不自由である。その上腹痛に襲われている今はベッドから車椅子に移ることもままならない。そこでいつも隣に寝ているヴィータに助けを求める。
「ヴィータ起きてー!」
 片手でお腹を押さえつつヴィータをゆすって必死に訴える。がしかしこの鉄槌の騎士は非常に寝起きが悪いのであった。
「なんだよはやて、まだもう少し寝かせてくれよ。むにゃむにゃ」
 そうして万策尽きたところに大きな波が来た。必死に耐えようとするが突然の波にはやての肛門は決壊してしまう。

  ブジュジュジュジュジューーーーー……

 両手でお腹を押さえ腹痛に耐える。痛みと羞恥心で目からは涙がこぼれた。下着の中に不快な暖かさが広がる。腹の調子は相当悪いのか、米の少ない粥のようだった。水分は下着やパジャマなど用意にすり抜けシーツに茶色い世界地図を広げていく。
 ただならぬ気配にようやくヴィータが目をさます。
「どうしたんだよはやて。大丈夫か」
「ごめんなヴィータ。お布団汚してしもた。早く退かないとヴィータまで汚れてまう」
「そんなことより早くトイレに行かねーと」
 そう言ってはやてを抱きかかえる。見た目は少女でもやはり守護騎士、力は強い。
「ほんまごめんな。こんな汚いことさせてもうて」

 ヴィータはトイレの前で待っていた。

  ジョジョジョジョ……ジョボ……ジョボ。 ジョボ

 音だけでもはやての体調がはっきりとわかった。まるで男子の小用の音だ。しかし、女性が小用を足してもこんな音はしないだろう。つまり、肛門から吐き出される排泄物が尿と大差ない状態なのだ。

  ゴボジャーーーーーッッ

 水音のあと、
「ヴィータ、お願いや」
 そう言われてヴィータはトイレのドアを開ける。そこにははやての痛ましい姿があった。顔には血の気がなく、額には油汗が浮かんでいる。また、足元に脱いである子供らしいパンツはほとんど白いところがなく、ヴィータとおそろいのピンクのパジャマも後ろ側は裾まで染まっていた。ヴィータは持ってきた着替えを渡す。
「ありがとな」
 そう言ってはやては新しい下着を履きズボンを着替えた。自分が辛くても笑顔を絶やさない主の姿は逆に痛ましさを際立たせている。ヴィータは着替えたはやてを抱き上げトイレの外の車いすにうつした。
 手は腹をさすっている。
「大丈夫ですか主はやて」
 最初に声をかけたのは守護騎士のリーダー的存在であるシグナム。トイレの前には心配そうな表情で主を見る守護騎士4人(3人と1匹)がいた。
「大丈夫。少し風邪引いてしもたみたいやわ。おなか痛いのと熱もあるかな。それより、お布団どないしよ。ひどく汚してしもた」
 はやてはも押し訳なさそうに言った。
「それなら大丈夫ですはやてちゃん。私が片付けておきましたから」
「悪いなシャマル。そんなことさせてもうて」
「それより主はやて、早くおやすみになったほうが」
「ありがとうシグナム。そないさせてもらうわ」

 はやてがベッドに戻ってしばらくして、シャマルが朝食を運んできた。お粥など消化の良さそうなものが中心だった。
「ありがとうなシャマル」
「はい、はやてちゃん。しっかり食べて早く良くなって下さいね」
 守護騎士たちは主のことが心配なのか、はやてが食事をする間ずっとベッドの周りで見守っていた。
 そうしているうちヴィータが突然声をあげた。
「そうだ。シャマルお前回復系の魔法得意だろ。はやての風邪治せないのかよ!」
「そうね。忘れてたわ。私の魔法なら風邪くらい簡単に治せるわ」
「じゃあ早く治してやろうぜ!」
「まあ待てヴィータ。主は食事中だ」

 朝食のあと彼等は早速魔法での治療に取り掛かった。
「じゃあはやてちゃんは横になって体の力を抜いてて下さいね」
「わかった。よろしくなシャマル」
「はい、まかせてください」
「クラールヴィント使わねーのか?」
 回復系の魔法詳しくないヴィータは尋ねた。
「そうよ。回復系は攻撃魔法と比べてデバイスの補助が効きにくいの」
「へぇー。そんなもんなのか」

 シャマルははやての下腹部に両手をのせ目を閉じた。するとシャマルの手がかすかに翠の光を発する。
「どうだシャマル。出来そうか?」
「静かにしていろヴィータ。シャマルの集中力を欠く」

 しばらくして。
「終わったわ。はやてちゃん。具合はどう?」
「うん、良くなった。もう全然大丈夫や。ありがとうなシャマル」

 こうして八神家のある慌ただしい朝は過ぎていった。


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 数週間後。

 夕食の後八神家はひと時の団欒の時間を過ごしていた。はやてとヴィータはお気に入りのアイドルが出演する歌番組をみている。シャマルは後片付け、シグナムは読書、ザフィーラはソファーの下に寝そべっている。彼もれっきとしたベルカの守護獣だが、こうしていると本当にペットの大型犬のようだ。
 しかし、穏やかな時間は長く続かなかった。

 最初に異変に気付いたのはヴィータだった。
「おい、はやて……」
「ん? なにヴィータ」
 ヴィータの視線の先に目を向けると、はやての座る車いすから水滴が落ちカーペットに染みを作っている。
「うそ……」
 はやては愕然とする。
 実は、このようなことは今週に入って3回目だった。おそらく持病の下半身麻痺が進行し膀胱括約筋にまで達し始めたのだろう、はやてが突然失禁するようになった。
「ぐす……私……またやってもうた。もう3回目や。この年になっておもらしなんて……」
「大丈夫よはやてちゃん。病気のせいなんだからしかたないじゃない。気にすることないわ」
「ぐす……うん」
「はやて、風呂入ろうぜ」
「うん」
 ヴィータははやての車いすを押して風呂場へ向かった。
 二人が行った後、
「主の病状はかなり進んでいる」
「そうね」
「闇の書の魔力蒐集をいそがねばならない」
 三人は時間があまり残されていないことを改めて確認したのだった。

風呂場では。
「はやて、脱がすぞ」
「うん……」
 はやてはまだ落ち込んでいるようだった。ヴィータはとりあえずはやてのズボンと下着に手をかけおろそうとした。しかし、ぬれた衣類はなかなか思うように脱がせられない。
 脱がすとそこには無垢なわれめがあった。ヴィータは思わず見入ってしまった。ヴィータも今まで様々な主に仕え、その秘所を目にすることも幾度もあった。大抵のそれは思い出すだけでも悪寒がするような外観であり、それを目にするときはほぼ間違いなく思い出すことが躊躇われるような行為を強要されるのであった。今はやてのを見て今回の主が長い転生の中で格段に幼いことを改めて実感したのだった。

「ヴィータ、どないしたん?」

「いや、なんでもねえよ。上は自分で脱いでくれ」
「うん」

 そのときヴィータは気づいた。われめからまた水が流れ出していることに。はやてに気づかせまいと入浴を急かす。
「ほら、早く入らないと風邪引いちまうぞ」
 そう言ってはやてを抱き上げようとする。しかし、遅かった。
「ヴィータ、私、赤ちゃんに戻ってしもたみたいやね……」
「はやて……」
 その絶望とも開き直りともつかないはやての表情にヴィータはかける言葉を失った。
 そして、
(はやてにこれ以上こんな惨めな思いをさせてたまるか。絶対すぐに助けてやるからな。もう少しの辛抱だからな)
 拳を硬く握り締め、闇の書を必ず完成させると心に誓ったのだった。


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 ある夕方、はやては台所で夕食の支度をしていた。守護騎士たちは皆外出している(どこかの異世界で白い悪魔と戦闘中だろう)。
 ここ最近皆の外出が多いため、はやては少し寂しさを感じていた。ほんの数ヶ月前までは一人でいることが当たり前だったが、一度ぬくもりを得た後ではそれを失うことはとても恐ろしかった。出会い方が出会い方だったこともあり、今でもときどきこれは夢で覚めれば来たときと同じように消えてしまうのではないかと思うことがある。しかし、この日は久しぶりに全員で夕食を食べられる予定だったのではやてはいつもより気合を入れて食事を作っていたのである。
 また、最近は体調も落ち着いており、ここしばらく失禁もない。一時は主治医の石川医師からオムツの使用も薦められていたが今はその必要もない。

そうしているうちに、はやては下腹部に違和感を覚えた。

  ゴロゴロロロロッ

(少しお腹の具合悪いんかな?)
 そう思ったが大したことはないので特に気にしなかった。しかし、料理を続けるうち徐々に悪化し気づくとはっきりとした腹痛に変わっていた。
(お腹痛いよう……。何か悪いもんでも食べたんかな)
 けれど便意はなかったので片手で下腹をさすりつつそのまま料理を続けた。久しぶりに全員でとる食事なので完璧に仕上げたかったのだ。

  グルゥ……グルルルルルッ!
 さらに腹痛が強まってきた。けれども便意がないことにはやては覚え始めていた。

(どないしたんやろ)
 さすがに料理を続けるのが辛くなってきたので休むことにして台所を離れた。
 そして、しばらく休んでいると、

  ジュブジュブジュジュジュジュジューーーーーーゥッ!
 突然の異音、それに続く異臭。はやてには何がおこったのか分からなかった。

(まさか……!)
 と思い前から股を覗き込む。

(うそや……)
 事態ははやての恐れていたとおりのことだった。下半身の麻痺が肛門まで進行したため、便意を感じることができなかったのだ。そうなれば無論自分の意思で肛門を締めることなど不可能である。

(やってしもた……)
 しかし事態ははやてに感傷に浸る暇を与えなかった。

  グルルルゥゥゥゥゥッ!
「ううー、痛っ。 いやーーー!」
  ジュブブブブーーッ!
 もはや彼女の意思で止めることはできないのである。腹痛に顔をゆがめ腹をさするはやて。しかし、それをあざ笑うかのようにあふれ出た便が車椅子の座席を流れて床に落ちカーペットを汚していく。

「ぐすっ……。どないしよう……」
 そのとき、玄関で解錠の音がして、

「ただいまー、はやて」
 同時に次の波が襲ってきて、

「来ないでーーーー!」
  ブジュジュウジュジュウ……

「はやて!?」
 ヴィータが異変を感じてリビングへ行くとそこには泣いているはやてがいた。車椅子の下の床が悲惨なことになっている。

「はやて……」
「私、もうだめや……」

 このあと、シャマル、シグナム、ザフィーラも帰宅し、皆で片づけをした。はやてが楽しみにしていた全員での夕食は終始重い空気が流れた。
 第97管理外世界が特定遺失物「闇の書」の暴走で消滅しかけた、俗に言う「闇の書事件」が起こるのはこれからすぐのことである。




<あとがき>

 はじめまして、Lolisca Library常連のkaibaと言います。このサイトに出会って早6年、この度はついに自分でも書いてみようと思い立ち投稿させて頂きました。何分初めてなもので至らぬ点も多々あると思いますが暖かい目で見ていただけたら幸いです。
 私はほとんど腹を下した経験がないのでそういう場面の描写は先輩方の作品を参考に想像力で書いています。それと、関西弁について詳しくないので台詞でおかしいとこあったらすいません。
 今までもいくつか構想はありましたが受験で書いてられませんでした。しかしそれも終わったのでまた投稿しようと思っています。よろしければまたお付き合いください。

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