No.14「いんぼうのえんそく(後編)」

 木村優香(きむらゆうか):
 主人公、五年一組、セミショート、肌がきめ細やかで白い。最近少し大人びてきた。
 男性の目を気にする女の子らしさを身に付けつつあるが、性知識は未だ疎いままである。
 一方で漏らす事に奇妙な感覚を覚えつつあり、反面漏らしそうな状況に怖がる今日この頃。
 校内美少女人気投票第1位。しかしてその評価の半分は「運動会とかで戦力になるから」という色気ない理由だったりする。
 大野由布(おおのゆう):
 同級生、五年一組、後ろをおだんご状にしたミディアムヘア。チビッ子。
 クラスメイトたちにとっての妹的存在。クラスの子が着れなくなった服を貰ってたりして、それも幼く見える要因の一つ。
 優香と親友。小柄で幼いし、お古な服を脱いだってちっとも凄くないのだが、なぜか大人の恋人がいる。
 美少女人気投票第3位。評価内容は愛くるしさ一辺倒。しかし妹のいる男子には人気がない。
 山本知里(やまもとちさと):
 同級生、五年一組、栗毛色のロングヘア。芯の強さを伺わせる眉毛と色っぽい唇が特徴的。
 頭が良くて、物静かで、大人びている、クラスメイトに一目置かれた存在。頼りにはされるが、親しい友達はいない。
 人気投票の結果は第2位。見た目の美しさと、学年一発育の良いスタイルが主な評価内容であり、実質の1位。

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『もくてきち』

 目の前にトイレがあるにも関わらず、優香は体育座りで我慢を続けていた。
 座っているのは彼女だけではない。五年生全員が集合し並べられていた。場所は金郷山のふもと、他の学校の生徒達も訪れているので、全員が座れるスペースがここぐらいしか残ってなかったのだ。
 先生が前で自由行動前の注意事項について話しているが、その内容は優香の耳には入ってこない。
(うぐぅぅぅうぅぅぅぅぅぅううぅぅぅ〜〜〜〜〜〜)
 本来ならばとっくに漏らしてもおかしくないほどの便意に苛まれ、しかし栓によって解放されることのない苦痛に優香は必死に耐えていた。
 トイレに行きたいと主張しないのは、千里の無残な末路を既に見ているからだ。
 千里は今、前に立っている高坂の胸に顔を埋めるような姿勢で抱きついている。
 その姿は高坂の用意した体操着だが、酷く目立っており、遠足に来ている他校の生徒の注目さえ集めてしまったいた。
 上に着ているシャツは知里にはサイズが小さくてヘソが出てしまうほどで、下は毛糸のパンツのような、ブルマと呼ばれる今は廃れてしまった体操服で、こちらも小さいために股部分に素地が食い込んではっきりスジが浮いてしまうのだったが、目を引く理由はそこではない。
 お尻の真ん中がこんもりと膨らんでいた。膨らみの周りだけ紺色が濃くなっているのは、じっとり湿っているからだ。
 知里は再び漏らしてしまっていたのだ。
 着いて早々にトイレ要求をしたが、とりあえず集合が先、一人で行かせる訳にはとうやむやにされた。
 バス内で出し渋ったがゆえの、それは必然の二度目の破局ともいえた。
 トイレを要求したがゆえに前に立たされ、他クラス含めての皆の前で再び晒し者状態になった知里は、好奇の視線から逃れるため、そう仕向けた当人に抱き付かざるを得なかったのだ。
 高坂は羞恥が更なる羞恥を生む負のスパイラルを上手く発生させており、へたに目を付けて巻き込まれまいと優香は必死に欲求を押し殺していた。
 ちなみに知里と同じ様な格好で、由布も高坂のそばに立っているのだが、こちらはサイズも合っているためか妙に似合って自然であり、恥も外聞もなくバス内でひり出しまくったためにもうケロっとしている。
 教師の自由行動中の注意事項やら心構えの話やらが続く中、女子トイレ前には行列が発生し伸びてゆく。
 他校の生徒達が自由行動となり、どっとトイレに駆け込んで来たのだろう。今から並んでもかなり待たされてしまうに違いない。優香の心は絶望の淵に沈んでいく。
「……それでは、解散」
 他の生徒達が動き始めて、ようやく話が終わった事に気付く優香。
 完璧に出遅れてしまい、他の女子生徒達に先を越されてトイレに並ばれてしまう。
 しかし優香はもはやそっちを見ていなかった。
 普通に並んでも途中で高坂の邪魔が入るだろうと予測できたため、別の場所を目指そうと考えていたからだ。
 お腹を抱えた姿で足取りをフラつかせつつも、ゆっくりとしかし確実に人気の無い道のない茂みの中へと歩みを進めて行く。
 彼女はもはやトイレを探すというより、用の足せる場所を探していた。
 用の足せる場所がすなわちトイレで、人に見られなければどこでもトイレという、開き直った発想が支配していた。
 しかしそれが逆に事態を好転させた。
 目の前に古ぼけてこじんまりとした建物があった。その建物は入り口が二つあり、男子用と女子用を意味する看板が付いている。
「……え、うそ」
 優香は自分の幸運が一瞬信じられなかった。
 訳も無く辺りをキョロキョロ見回し、なぜかこっそりと女子用の方に近付いて覗く。
 個室は二つしかないがどちらも空いており、中には誰の気配も感じられなかった。そこでようやく、野糞もお漏らしもせずに済むのだという現実を実感する。
 喜び勇んで手前の個室に入り、扉を閉めようとすると――
「やあ優香。こんな所で会うなんて運命かねえ」
 個室内の扉の影に隠れて待ち伏せていた高坂が、イヤらしい笑みでにんまりと優香を見つめてきたのだった。


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『にぎられたよわみ』

 優香はせっかく見つけた楽園たる公衆トイレの建物の、その裏手の壁と茂みに囲われた一角で、全裸にされて立たされていた。
「先生、早く、はやくヌいて……っ」
「まあ待て。お前がそうなったのは下らない企みなどするからだろう。自業自得だ」
 高坂はそう言って優香の尻に嵌った栓を軽く引っ張る。あくまで軽くで、抜き取りはしない。
「ぅくっ……ごめんなさい。あやまります……からっ、……抜いて……下さい……うぅ」
 優香の屈辱を抑えた懇願をスルーして、高坂は持っていた鞄に優香の衣服を詰め込み、中から別の何かを取り出そうとしていた。
 現状の優香には理不尽な言葉に抗うだけの余裕はない。
 野外での裸に恥らう余裕すらなく、ただお腹を撫でさすって少しでも痛みを和らげようとするのみだ。
 なぜこんな事態に陥っているのか少し説明しよう。
 あの後、優香は強行手段に走った。隠れ潜んでいた高坂を物ともせずに素早くパンツを脱ぎ下ろし和式便器にしゃがみ込んでひり出そうとしたのだ。何かされる前に出してしまえという電撃作戦だった。我慢が限界を超えていたというのもある。
 しかし作戦は失敗した。皮肉にも満のくれた栓は、当人の排便行動をも鉄壁のガードで阻んだのだった。自力での抜き取りも試みたが力が上手く入らない。もはや彼女に残された道はもはや一つしかなかった。
 誰か別の人間に協力を求める事である。
「栓っ……せんを抜いて……、おなかがっ……ばくはつしちゃう〜〜〜」
 ゆえに優香は高坂にお尻を向けて淫らに哀願するしかない。当人にその自覚はないだろうが、四つんばいでふっくら育ったお尻を振るその姿は、男の情欲を強く刺激するものだった。
 しかし今の優香には、どのような卑猥な要求がこようと受け入れざるを得ない。
 例えば個室から出て建物の裏手に回れだとか、衣服を全部脱げだとか、
「良し、これを履け!」
 バッグから取り出したブルマを履けだとかいった変態要求であってでもである。
 知里の穿かされたブルマより若干大き目で、優香の巨尻にピッタリフィットしそうなサイズだったが、そんな違いに気付く余裕もない優香は言われるがままに震える足を上げて通す。
 膝、太ももを通りお尻を覆おうとする――そこで不意打ちに栓を抜かれた。
「ひぐっ!」
 その痛みと衝撃も覚めやらぬままにブルマをするっと履かされる。
 栓により一旦はぽっかり広げられた肛門だったが、収縮するも窄まりきらずに柔らかいソフトクリーム状の物をにゅるにゅると溢れ出させた――ブルマの中に。
 まるでブルマの締め付けの圧力などないかのように、こんもりと急速に膨らんでいく。さきほどの知里の粗相など比べ物にならないほどに大量に、ねっとりとした感触が尻いっぱいに広がるのを感じながらも、緩んだ肛門は自動的な排泄をし続けていた。
 例え意識的に締められたとしても今の優香に止めようという気などなかったし、この瞬間だけは栓を抜いてくれた高坂に感謝さえ感じていたのだ。
 勿論恥じらいも感じない訳ではなかったが、それを些細な事象と済ませてしまうほどに優香は腹痛にさいなまれ続けたのだから。
 もっとも、尻の膨らみと反比例して理性を取り戻しつつあった。
(あふぅ、気持ち悪いけど気持ちいい……お漏らしになっちゃたけど不可抗力だし、皆に見られちゃった由布や知里さんに比べればマシだし、ってそんな風に考えちゃう私って最低……)
 由布はともかく、確実にプライドが傷付いているだろう知里に対して、配慮の無い考え方を思わずしてしまい嫌悪に陥る優香。
 そんな彼女の気持ちと関わりなく、その体は堰き止められていた大量のモノを少しもこぼすことなくブルマ内にひり出し終わらせたのだった。
 優香の持ち前のプロポーションだけでもちょっとした迫力のあったヒップは、今や内容物に底上げされて成人女性のサイズを遥かに凌駕した人外の領域にまで到達していた。まるでブルマの下におむつを着用しているかのようである。
 優香は不恰好に膨らんだ自身のそれを見て、コンプレックスを大いに刺激された。
 しかし高坂はそんな優香など何処吹く風で、
「良し、じゃあそのままの格好でちょっとこっち行こうか」
「え、えええええどこへ、っていうかいや、あの待って……」
 戸惑う優香の腕を高坂は強引に引っ張る。落ち込んでる暇も、どこへ連れて行かれるのかと訪ねる間もなく、
「させるかバカヨー!」
 突如として上の方から満の声がかかり、そちらを振り向いた高坂に飛び蹴りを食らわせる。
 公衆トイレ上からのダイブである。
「誰ガブァッ!」
 誰何の途中で蹴りを顔面に食らい、色気のない悲鳴をあげて高坂は白目を剥いてその場に倒れ伏した。
 首の辺りから鈍い音が聞こえたのだが、息はあるので大丈夫だろう。
「セイギの味方さんじょう!」
 正義の味方にしては少々手遅れ気味な、ある意味おいしいタイミングで駆けつける満であったが、優香にはこの登場の仕方に少し疑問があった。
「助けてくれてありがとう……って素直に言いたいところなんだけど、一つ確認したいことがあるの」
「なんだよ?」
「いつの間にここ」
 と建物の上を指し、
「に上ったの?」
 にこやかな笑顔を浮かべて可愛く小首を傾げる優香だが、目は笑っていなかった。
「……ここでお前が涙目んなりながら服ぬいでたあいだ」
「じゃあ何でもっと早く助けてくれなかったのカナ?」
「ケリ食らわすタイミングがむずかしかったんデスヨー」
 笑顔のままだがジト目で責める優香の視線から、逃げるように顔を逸らし空っとぼける満。高坂に蹴りを食らわせようと目論んだはいいものの、バッグの前でしゃがみ込んでいたり、優香にブルマを履かせるために屈んでいた姿勢だったりして、叩きのめすチャンスが上手く見つけられなかったのは本当である。
 しかし優香のピンチに悶える姿を見続けたい気持ちや、よりにもよって高坂に協力を求めるという優香に対する意趣返しも、なくはなかった満であった。
 糞膨らみブルマ以外纏う衣服なしという自身の現状を忘れて更に文句を募ろうとした優香だったが、建物の反対側に人が通る気配に気付く。
 周りからの視界を遮断してくれている木陰を利用しつつ、こっそりとそちらを覗き見ると、どうやらこの公衆トイレ前はどこかへ通じる小道らしく、まばらながらも人通りが出来てしまっており、トイレの利用者も少なからずいるようだった。
 そもそも人が来ないような場所にトイレを建てるはずがないので当然だ。
「ど、どうしよう」
 無意識にぺたんこな胸をかき抱いてそわそわする優香。
 パンパンに膨らませたブルマからは濃厚な臭いが滲み出ており、例え上からスカートを履こうとも誤魔化しがききそうもなかった。
 これを脱いでも尻が拭けなければ同じである。お尻の処理をしないとトイレに行けないが、トイレに行かないとお尻の処理ができない二律背反に苦しめられていた。
「そうだ。満が個室から紙を取ってきてくれれば……」
「ヤダ。てゆーかそなえ付けのトイレットペーパーなんぞ持ち出したら、後で使う人が困るだろうが」
「そんな〜」
 満は頭をかきつつ辺りを見渡し、ふとその視線が気絶中の高坂で止まり、悪巧みを思いついたかのような笑みを浮かべる。
「これでふいちまえばいいじゃん」
 満は高坂のジャージ上着のジッパーを下げて上半身をあらわにさせると、胸元に巻き付けてある布を手間取りながらも剥ぎ取っていく。
 すべてを巻き取り終えると、下に締め付け抑えられていた脂肪がぽよんとせり出して、満は反射的にビクッと体を竦ませた。
 最近の満が高坂を苦手とする理由が、先日の銭湯の巨乳少女を連想させるこの胸である。
 高坂 加世(たかさか かよ)18歳。飛び級で教員免許を手に入れた天才で、熱血馬鹿で、常時その学校指定のジャージ姿で、美少女をこよなく愛する、Gカップの爆乳女教師という、色々てんこ盛りなキャラクターである。
 男性教員と女子生徒の間でセクハラ問題が起きないようにとの名目で美少女コンテストを行い、上位を自身のクラスに集める程の美少女好き、もとい少女に対する思いやり深い教員でもある。
 そんな思いやり誰も信じちゃいないが。
 少女好き貧乳好きが昂じて自身の巨乳を嫌い、サラシで強引に締め付けているのは、生徒の間でも有名な話だった。
「ほい」
「あ、ありがと……」
 ためらいもなく女教師の胸をはだけさせるという満の行動に、優香自身にも良く分からないスッキリしない思いを抱きつつも、さらしを受け取って満に背を向けると、ブルマを脱ぎ下ろそうとしてふと手を止める。
「あ」
「ん? どうした」
「なんで満君は当たり前にそこで見てるのかな?」
「へ?」
「私これからこの服脱いでお尻きれいにしたいんですけど。そっぽ向いたり見張ってくれたり紳士な態度はとらないのですか。変態という名の紳士ですか、そうですか」
 優香は満の前での排泄やその処理に抵抗が無くなった訳ではなかった。
 さっきの個室内の強行手段も、四つんばいお尻突き出しふりふりも、高坂が女性教師であったというのが大きい。
 にも関わらず居るのも見るのも当たり前みたいに満が佇んでいるのだから、さっきのスッキリしない思いも含めて皮肉の一つも言いたくなるってものである。
 しかし満はまさか今更な突っ込みを入れられると思っていなかったのだろう、顔が真っ赤に染まったのは、このような変態的シチュエーションに慣れかけた自分に気付いた恥ずかしさゆえか。
「俺はヘンタイじゃねーっ」
 満なりの照れ隠しなのだろうか、怒ったふりをして両手でズルンと思いっきり優香のブルマを脱がし下ろす。スカートめくりの上級技、パンツ下ろしを綺麗に決めたその姿はどう見ても変態です、本当にありがとうございました。
 優香が吐き出した汚物は粘着性が高かったようで、優香の大きな色白の肌は完全に覆い隠されていた。それでいて満の両手は意外なほどのブルマの重みを感じ取っていた。
「ひぁんっ…………あ、それどっか捨ててきて、よね」
 脱がされた瞬間は驚くも、持ってくれるならば好都合とばかりに振り向きもせずに両足を抜き取り、もはや汚物入れと化したブルマを満へと押し付ける。
「……なんかツマンネーの」
 中身のたっぷり詰まった手元と茶色く塗りたくられた尻を交互に見比べつつ、優香の恥じらいのない淡白な反応に、何やら満足のいかない満だった。
 しかし先ほどの見られたくないという文句からも分かるように、優香は羞恥を感じなくなった訳ではない。
(中身をジロジロ見ないでよね馬鹿ッ! ううう早くきれいにふいちゃおう)
 恥ずかしがる素振りを見せる事が恥ずかしくて、表情を見られないように背を向けているのだった。その顔は色白ゆえに分かりやすくピンクに染まっていたのだが、満の位置からはそれを確認できなかっただけだ。
 最後は崩れてしまったとはいえ、毅然とした態度を取り続けた知里を見習いたいという気持ちもあるのだろう。
 なるべく平静を装いながら、手を汚さないように気を付けつつ、尻たぶにへばりついた汚泥を削り落とすように拭い取る。
 手馴れてこそいないものの余裕を持って清拭を行なえるのは、やはり汚れた自分を全て受け入れてくれた満という存在がすぐ側に居るがゆえだろう。
 その肝心の満は何をしているかというと、優香のお漏らしブルマを気絶中の高坂の頭に被せてやろうかというイタズラを本気で企んでいた。まあ結局は止めたのだが。
 ともかく優香は体に付いた汚れを跡形もなく拭き取ると、皮肉にも全裸にされたがゆえに汚れ一つ付かずに済んだ衣服をバッグから取り出して身に付け、ようやく落ち着いて一息付いたのだった。
 未だにブルマを処理してないままの満に文句を付ける優香だったが、
「そっちもいっしょに片さないとだろ」
 満はそう言って、処理でドロドロになったサラシをブルマの中に詰め込むと、優香が止める間もなく空高くに放り投げた。
 おそらく満の狙い通りに公衆トイレの上に着弾しただろうベチャッという音が伝わり、真上から見たら散々たる有様に違いないと想像できた。
「にしても今回のこれはマジやりすぎだな。いくらナリモノイリとは言ってもジドーギャクタイでキョーイクイーンカイとかにうったえ出て、クビにするレベルだろ」
「理解できない言葉を使うのはバカっぽいから止めた方がいいよ……、普通に葵先生とかに報告すればいいんじゃ、というかそもそもどうやって高坂先生の仕業だって証明するの? たまたまお腹痛くなっただけな可能性だってあるし」
「ふふん。俺も朝にこれをもらってるのを忘れたのか」
 誇らしげにポケットから取り出したのはピンクの錠剤。
「このしょうこの薬があればナッ?!」
 満が台詞を言い終わる直前、いつの間にか目を覚ましていた高坂が、薬を摘んでいた満の手ごと、ばっくりと口の中に収めてしまった。
「なんてまねしやがる、てめえ!」
 慌てて手を引き抜くがよだれまみれになった手の中に錠剤は残っていなかった。
「色んな意味できたねえ……」
 満は高坂の持っていたバッグに目を付けると、さりげなくバッグで手を拭きつつその中を探り始める。
「お探しの物はこちらかな?」
 高坂は酔い止めの箱をポケットから取り出す。
「あ、てめ、それよこせ!」
 薬を奪おうと突っ込む満を、高坂は避けるかと思いきや逆に前進する。そしてガバッと頭を両腕で抱きとめてその大きな胸にうずめさせた。
「胸を肌けさせたのが仇となったようだな。貴様の弱点はまるっとお見通しだ!」
「むぶ、むぐぐぐむぶ!」
 じたばたともがく満だが、抱擁はそう簡単に外れない。
「ふはははは、母なる胸に抱かれて原初へと還るが良い」
 意味不明なテンションを炸裂する高坂からようやく満が離れられた時には、フラフラで息も絶え絶えになっていた。
「満……そんなに大きい胸が嫌なんだね」
「ゲホッ、はっ、いや、ふつーに息できなくて、苦しかっただけだっつーの」
 優香が満とそんなコントじみたやり取りをしている間に、高坂は中に残った錠剤をパッケージから全て取り出し飲み込んでしまった。
「はっはっはっ、これで証拠は全て隠滅されたな」
「くそっ、ちっくしょう」
 ジャージが前開きで乳丸出しのまま勝ち誇る女教師高坂加世だったが、優香にはある種の疑問が湧き上がっていた。
「あの、先生?」
「なんだ、優香」
「そんなに薬飲んだら、帰りのバスで凄く下っちゃうんじゃないですか?」
「…………はっ!」
「バカだ。やっぱこいつ、バ加世だ」
 下らないオチが付いた所で優香のお腹も落ち着きを取り戻したようだった。

 当然これで話が終わるはずも無く。ってか満が終わらせません、はい。


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『帰りも辛い』

(行きは散々だったな。帰りは何もおきないで欲しいもんだが……)
 ハンドルを握り高速道路を走らせながらバスの運転手の男は一人そんな事を願う。
 ロリコン趣味もスカトロ趣味も持たない、せいぜいが巨乳に惹かれる程度の性癖しか備えていない運転手にとって、行きの道程におけるハプニングは辛いものでしかなかった。
 バスの窓を全開にしなければ臭いが抜けそうもなかったし、その間は戸締り用心のためバスの側から離れる訳にもいかなかった。
 おかげで休憩時間が大幅につぶれてしまって、本当に踏んだり蹴ったりだった。
 だからもう何事だって起きないで欲しいのだが、しかし隣に目を向けるとその願いは叶わないような気もしている。
(この女はさっきから何をそわそわしてるのか……てゆーか、こいつ女だったのか)
 そこにはテロップ辺りで落ち着きなく立っている女教師の姿があった。
 化粧っ気のない顔と全身ジャージ姿という色気のない格好で声もハスキーで男性的、傍目にしか確認しなかったために男と間違えたのだが、よくよく見るとそのスタイルは紛れもなく女性にしか作れない丸みを帯びたラインで構成されており、顔立ちも整っていて美形の部類であり、部活中でジャージ姿の女子高生と説明されればそんな気もする、はっきりいって運転手の好みのタイプであった。
 しかし何より好みにあっていたのは巨乳である。ジャージ越しの胸の膨らみが今は明らかに大きく主張しており、バスが揺れたり当人が動く度に揺れるその反応からノーブラだと容易く察知できた。
 たかだか乳が揺れる程度で喜ぶほど運転手は若くはなかったが、いかんせんグラビア雑誌やテレビでしか見れないほどの爆乳が、真ん中の上げきれていないジッパーから溢れんばかりに谷間を主張し、そのうえ当人は色っぽく体をくねらせたり、艶めかしいため息を吐いたり、「やん、だめっ」「くふぅ…」といった妙にあだっぽい小声が耳に入ってくるのである。色気のない服装と中身とのギャップからも少々クるものがあった。
(何か怪しげなもんでも体に入れて、愉しんでるんじゃなかろうな)
 良からぬ妄想に下半身が膨らみかけるのも止むを得ない話であった。

 運転手の不安だか期待だかに相反して、何事もなく目的地である学校前に到着したその時、
「行けっ、優香!」
 補助席の倒される音と同時にそんな子供の声が聞こえた。
 そしてその後すぐに女教師に、覆いかぶさるように一人の女生徒が飛び込んできた。
 抱きつくような姿勢で生徒の両膝が女教師の腹に突き刺さる。とても痛そうな一撃で、それでも生徒をきちんと抱き止めた女教師は立派だといえた。
 女教師は生徒を抱きしめたままブルブルと小刻みに体を震わせ、弱々しく口を開くと、
「ら…………らめぇ〜〜〜」

  ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリーーーーーーッ!!!

 白目をむきかけた女教師のジャージのお尻部分が勢いよくモリモリと膨れ上がってゆく。
「下らない企みの、ジゴウジトク、だよね? 先生♪」
 抱きしめられた生徒はこの事態を予期していたかの如く、何か諭すような笑みで楽しげに糞漏らし女教師に話しかけた。
 目の前の茶色く染まった膨らみと反比例するかのように、運転手のこれまでの興奮は一気に萎んだのだった。
 生徒も教師も、運転手にとっても、忘れらない一日となったのであった。


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