No.03「りんはな」

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「ふぅーん」
  ぐっ ぐぐ
「あっ……? ん〜。うん、うんっ。んっ」
 むりゅ ぽちゃっ
「ふー。すぅ、んっ。んっ。んんっ」
 こんこん

「んー。……? 入ってるよー」
「りん?」
「うん。まだかかりそうだから、ちょっと待ってね」
「もう出発しようと思ったらどこにもいないから探してただけだよ。邪魔したね。俺はトイレじゃないからゆっくりしていいよ」
「ううん、もう少しで出るからお外で待っててー」
「そっか。トイレ中にごめんな。玄関で待ってるから」
「……はぁ」
  さすさす
「もう少しでトイレ出るからって言ったけど」
  ぎち……ぐぐぐ
「うんち、やっぱ全然出ないなー。最近出ないし、おでかけ前にしたかったのに」
  ぶしゅっ ぷすす

「引っ込んじゃったし」
  がらがらがらびりっ
  ぐし しゅっ ぱた ぐにぐに
  がたん ぐいっ しゅるしゅる
「小石みたいなのしか出なかった……」
  ごとっ
  ゴボジャ――ッ!
「あー、お腹へんなの」
  さすさす
「おなかいたい……」
  かちゃ ぎぃー
「お兄ちゃん、おまたせー」
「じゃ、行こうか。ほら、はなも」
「うん」

 ◇

 もじ、もじ
「はな? どうした?」
「にーさま。ちーしたい」
「トイレか。一人で行けるか?」
「やー。ついてきてー」
「はいはい。トイレまで我慢できるか?」
「もうちー出そうなの」
「我慢してたのか? じゃあ急ごうな」
「お兄ちゃん! 甘やかしちゃだめだよ」
「でも、はなが着いてきてって」
「あたしが連れていくから、待ってていいよ!」
「やだー、にーさまと行くの」
「ワガママ言わないの。ほら!」
  ぐいっ ぱたぱたぱた……

「りんもまだ子供だと思ってたけど、もう小学1年生だもんな。お姉ちゃんっぽくなったもんだ」
「お兄ちゃん、はなをトイレ連れて行くからまっててね!」
「前まではりんもあんな感じだったのになぁ。はなの前ではあんな口調だけど、優しいもんな」

「トイレ、こっちかな」
「う〜」
 もじもじ
「どうしておしっこしたくなったときに言わなかったの?」
「だって、にーさまお本探してたから」
「別に我慢しなくていいの。トイレ我慢してる方が迷惑なんだから」
「でもぉ」
「でもじゃないの。ほら、こっち」
  ぱたぱたぱた

「ちーしたい。でも、あまりお外でおトイレしたくない」
「お家まで我慢できないでしょ。出かける前にトイレしなかったの?」
「起きてすぐにちーしたから、行ってない」
「お出かけ前にトイレするって約束したでしょ」
「だって、したくなかったもん」
「したくなくてもおしっこしておかないと、後からしたくなるでしょ」
「うん……」

「はぁ……ッ」
  ばたばたばた
「走ってった今の子もトイレかな? 私と同じくらいの年かな」
  ……ばたばたばた
「トイレ、空いてるね。はな、もうトイレくらい一人でできるよね?」
「うん……。あっ、おトイレ、座るのがいい」
「和式でトイレできないの?」
「使ったこと、ない。お家も幼稚園も座るのだから」
「そんなんじゃこれから困るよ?」
「でも使ったことないもん」
「そんなこと言っても、洋式は……」
  バタン! ガチャン!

「さっきの走ってきた子が入っちゃったし」
「んっ、ちーもっちゃう」
「じゃあお姉ちゃんが教えてあげるから和式でしよ?」
「やだぁ。どうすればいいかわかんないもん」
「んもー。トイレ空くまでもうちょっと我慢できる?」
「うん」
  ぐる……
「あっ」
「どうしたの?」
「じゃあお姉ちゃんも今のうちにトイレしよっかな」
「ねーさまはお家でしてこなかったの?」
「してきたけど、その……」

  バサバサバサッ ガタン!
  ブリッ!!
「う〜ん! おなかいたい。うぅ〜〜ん」
  ブリブリブリブリリュッ! ビチビチビチ!
  ブッ! ブボバッ、ブリュッ!!
「くぅ。う〜ん、うーん」
  ぶりぶりびちびちっ びゅるるっ!

「座るところの子、うんち?」
「みたいだね。急いでた風だったし」
「まだかかるかな?」
「お腹壊してるみたいだし、まだまだかかりそう。でもはなは和式使ったことないって言うし。他のトイレいく?」
「ん、もうでそうだもん」
「そうだ、はな、とりあえずトイレ入って!」
  きぃ〜 ばたん がちゃっ

「ねーさま? だからはな、しゃがむのは、」
「お姉ちゃんが和式トイレの使い方見せてあげるから、見て覚えて?」
「はなでもできる?」
「できるよ。お姉ちゃんがおしっこするから、見ててね」
  ぱた ぱた
「まずこうやって便器をまたぐの」
「うん」
  ずるるっ ばさっ ずそっ
「それでパンツ下ろしてしゃがむ」
  ぐっ
「しゃがんだらちょっとだけ前に出るの」
  かつん かつん

「便器の前の方にお水たまってるでしょ。そこに向かっておしっこするんだよ」
「水たまりにちーってやるの?」
「そうだよ。じゃあおしっ――ちーするね。ちー」
  ちゅい〜 じょぼじょぼぼぼぼぼぼぼぼ
「んっ」
  じょぼぼぼぼぼぼぼ じょろろろちょぼぼぼ
  じょろろろ……
「ふっ」
  じょぼぼぼちょろろろろ しゅいっ ちゅいっ
「ふぅ」
  しゅっ ぴちょん

「そうやってちーするの? むずかしそう」
「そんなことないよ。はなもすぐできるようになるよ。よし」
「じゃあはなもちー、してみよっかな」
  ぷすー

「ん」
「ねーさま、早くぅ、もう我慢できない」
「えっ、うん、ちょっとまってね。出そうだから、もう少しだけ……」
  ぐぐ
「まだちーでる? もれちゃうよぉ」
「ううん、もぅ、わかったってば」
  ガラガラガラガラ ビッ
  ぐし ぐし ぼとっ

「ちーできたらちゃんと拭いて水を流しておしまい」
  ぐっ
  ゴボジャ――――――ッ!! ジャボババババ〜〜ッ!!
  ぐいっ しゅるる くいっ

「はい。はなの番だよ。お姉ちゃんは外に出てるからね」
  がちゃ ぎぃ〜 ぱたぱた ばたん
「やっぱしゃがむのやだ」
「でもおしっこしたいんでしょ。ほら、鍵かけて。ここお家じゃないよ」
「やだぁ。あかなくなったらどうしよう……?」
「大丈夫だから。もう鍵が壊れたりしないってば。お姉ちゃんすぐ近くにいるから」
「見ててよぉ。あけたままがいいよぉ」
「もう年長さんでしょ?」
「じゃあ一緒に入って。こわいもん」
「おしっこくらい一人でできなきゃ小学校いけないよ?」
「はなはまだ幼稚園だからいいの」
「待ってるから、ほらっ」
「やだ、こわい! 開けたままじゃないと、できないよぉ……」
「もう、おしっこもできないなんて、いつまでも子供なんだから。しょうがないなー」
  きぃー ばたんがちゃっ

「ほら、中にお姉ちゃんがいるから大丈夫だよ」
「うん」
「じゃあパンツ下ろしてしゃがんで」
  ずさっ するする ぐっ
「ちゃんとしゃがんだ?」
「うん。していい?」
「まだだよ。ほら、足開いて。濡れちゃうよ」
  かつん ふぁさっ
「これでいいの?」
  むずむず

「うん、大丈夫。はいっはなちゃん、ちー」
「ちー……」
  ちぃ〜ちょろろろろろろ じょぼぼぼぼぼ……
「はなはおしっ――ちーするとき、幼稚園でどうしてるの?」
「ドアあけたままでするの」
  じょぼぼぼぼぼぼ

「だって、またあかなくなって出られなくなったらこわいもん」
「あれはお家のトイレの鍵がたまたま壊れてただけだよ」
「でもぉ」
  ちぃぃ〜〜〜〜じょろろろろっ じょぼぼぼっ しょろっ
「みんな鍵してるでしょ?」
「ううん、してない子もいるもん」
  ぴちょん

「ふぁぁ。ちーできたよ!」
「すっきりした? じゃあ紙で拭こうね」
「ううん」
「まだちー出そう?」
「ぷー出る……」
  ぷすすっ ぷーっ

「あ……」
「どうしたの?」
  ぷすー

「うーんしたくなっちゃった」
「ウンチしたくなった?」
「うん」
「はなも? ううん、なんでもない。じゃあ一緒にウンチもしようね」
「はぁい。お昼ごはん食べてからちょっとお腹いたかったの」
「ずっとウンチ我慢してたの?」
「だってそんなにしたいって感じじゃなかったもん」
「ご飯の後だからかな? 朝はウンチ出た?」
「今日は出なかったの。きのうのきのうの朝にしたよ。だからいっぱいうーん出そう」
「そっか。じゃあいっぱいウンチさんしようね」
「はぁい。うーんはどうやってすればいいの?」

「じゃ、じゃあ! うーんの仕方も見せよっか?」
「いい。もう出そうだからがんばる」
「そ、そう。そのまま座るのみたいにうーんってすればいいんだよ」
「ちーみたいにお水の中入れなくていいの?」
「ちゃんと便器の中にできれば大丈夫だよ」
「じゃあこのままするね」
「あっだめ、このままだとウン――うーんが便器の外に出ちゃうよ。もう1歩前に出てね」
  ずり ずり

「こう?」
「いいよ。元気よくうーんしようね。はなちゃん、お腹に力入れて。はい、うーん」
「うーん……」
  ぐぐ
「うーん。んん」
  ぐっ
「でない」
「大きいのかな?」
「うーん、う〜ん」
  ぐぐぐ

「ねーさま、うーん出てきた?」
「わたし立ってるから見えないよ」
「おうちみたいにすぐでない」
「慣れてないからだよ。慣れたら大丈夫だよ」
「しゃがむの、やー。足いたい」
「だから洋式入ってるんだってば」

「はぁー。はぁー」
  ――ガラガラガラ

「洋式の子、もうお尻拭いてるみたい」
「座るおトイレ、空く?」
「かもしれないけど、はなちゃんは和式のトレーニングしないと。がんばってうーんしよ?」
「うん。すぅー、う〜〜ん」
  ぐっ ぐっ にちち

「はぁ、はぁ」
「はなちゃん、もうちょっとうーんがんばろうね。はい、う〜ん」
「う〜〜〜〜んっ」
  ぐぐぐ ずずっ
「う〜ん、う〜〜〜」
  ずずっ ぐぐぐっ
  にちちち にち

「ん〜〜〜……出るぅ。んぅ」
  にちにちち ぼちゃん
「はあぁ」
  ぶりりりり
「はぁ〜」
  むりゅっぶりゅっ

「うーんでたぁ」
「ちゃんと和式でうーんできたね」
「うん。じょうず?」
「これからも和式でおトイレできるね」
「うん!」
「もううーん全部した?」
「えっと」
  ぐぐぐ……
「まだうーん出るぅ」
「足痛いかもだけど、もうちょっとうーん頑張ろうね」

「うぅ〜〜〜ん」
  みり みち
「うーん、う〜ん」
  むりゅ みちちちち…… ぶりっ
「はぁっ!」
  みちちちちぶりっ! ぷりゅっ
  しょろろろ……

「いっぱいでたね」
「うん、すっきりしたー」
「じゃあお尻ふいてね」
  がらがらがらがら びりっ ぐしゃ
「んー、拭きにくい」
  ぐしぐし

「前から拭かなきゃ」
「なんで? 拭きにくいよ」
「なんでって……汚いよ?」
「そうなんだ」
  がらがらがらがらびりっ ぐしゃ
  すっ ぐしぐし ぐに ぽちゃ

「終わったよ」
  ぐっ するする ばさっ
「うわ、いっぱい。しゃがむのだとうーん見えるんだね」
「洋式だと沈んでわかんないからね」
「でもくしゃい」
「じゃあ流そ」
  ぐいっ
  ごぼぼぼっジャババ――ッ!!

「ねーさま、すごいすっきりしたー」
「よかったね。さ、戻ろっか」
  がちゃ ぎぃー
「……うんちしたくなくなっちゃった。ま、いっか」


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