No.06「ある雨の日の出来事」

時沢沙耶(ときさわさや):
身長:142cm、体重:?kg。
純粋な高校二年生の女の子。吹奏楽部員、サックスパート。
中学の時、色々あり地方の高校に通うことでそのことを忘れようとしている。
そのため、今は学校近くのマンションに一人暮らししている。
ささいなことでお腹を壊しやすく(冷房の効きすぎ、アイスの食べすぎ、気温の変化等)
よくトイレへと駆け込む。そのため、そういうことに関する知識が人より多くなっている。

霧宮楓(きりみやかえで):
身長:164cm、体重:?kg。
沙耶と同じ高校二年。沙耶と同じクラス、吹奏楽部員、クラリネットパート。
沙耶の(自称)友達。沙耶は認めてないっぽい。

柿村幸平(かきむらこうへい):
身長:185cm、体重:73kg。
沙耶と同じ高校二年。吹奏楽部員、サックスパート(パートリーダー)。
男女問わず人に優しくしようとしている。その過程にもいろいろあるようだ。


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 6月24日(金)
 この日も朝から雨が降っていた。
 とあるマンションの一室、トイレのドアは日が昇ってないころから閉ざされており轟音が響いていた。

  ブバビチビチビチビチビチビチビチビチブボッッ!!!
  ブリブリブビビビビビビビビビーーーーーッ!!!
  ブリブリブリブリブリブリブチャ!!
  ブチャベチャビチビチビチビチビチビチ!!
  ブビッッ!! ブポビチビチブブブブブブーーー!!
「っく……お腹いたいよう……」
 しかし、彼女がどれだけつぶやこうが腹の調子がよくなることもない。
 それどころかそれをあざ笑うように痛みは強くなり、汚水と化した下痢が続けて便器にたたきこまれていく。
  ビジャーーーーッッ!!
  ブリュリュリュブポブポブポブポブポッ!!
  ビヂヂヂビヂブジューーーーーーッ!!
「やっぱり、昨日の『あれ』がいけなかったのかな」
 昨日の『あれ』とは、雨である。


<2> / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 / Guest / Index

 時はさかのぼって昨日にいたる。
 この日の朝は晴れていたが、天気予報は昼から雨が降ると言っていた。
 しかし出るときに色々とあって傘を持っていくのを忘れていまいそのまま出てきてしまった。

 〜学校〜
「さ〜〜や〜〜」と近づいてきたのは、彼女のクラスメイトであり、同じ吹奏楽部所属である、霧宮楓である。
 しかし、珍しく顔に疑問符を浮かべて机に突っ伏している沙耶を覗き込む。
 そして、改めて尋ねた。
「どうしたの?」
「いや、傘をね…」と口をつぐんでしまった。
「さ〜や〜、あんたね〜なんで忘れちゃうのよ。あんたただでさえお腹壊しやすいのに雨なんかかぶったら…どうなるの?」
「そこで聞くの? というか、忘れたくて忘れたわけじゃないわよ」
 楓は肩を落とし、ため息をついた。
「今日は貸してあげるよ」
 沙耶はハッと起き上がり、つい叫んでしまった。
「いや! いいよ! 忘れた私が悪いわけだし楓が貸す義理なんかないよ!」
 突然叫んだことに、クラス中が沙耶に注目する。それに恥じらいをもち、またうつむいてしまう。
「これは、命令よ、貸すから必ず使いなさい」
 楓はうつむいている沙耶に詰め寄る。
「はい……」詰め寄られて、返事をしてしまう。
「それでよろしい」
 と楓は笑顔になり別の人のところにいってしまう。
「そんなの……つかえないよ……」
 と小声でつぶやいたが誰にも聞こえていない。

 〜五時間目〜
 昼休みから雲行きが怪しくなってきたが、五時間目の最中に降ってきた。
(やっぱり、降ってきたか〜、楓の傘を借りるわけのもいかないし、部活休んじゃおかな休めば楓とは会わないし)
 この学校の吹奏楽部は二つある。
 もともとあった、ガチで全国大会突破する吹奏楽部と、それののりがつらい人たちがつくった今年できた真新しい吹奏楽部だ。
 沙耶は後者の吹奏楽部に所属している。
 なので、アットホームな感じで、休みたければ休める。そんなかんじなのだ。

 〜放課後〜
 コンコン と職員室のドアがならされ、その五分後には沙耶は校門にいた。
 このときはもうかなりの本降り状態だった。
「はぁ、走って帰れば何とかなるかな」
 沙耶のうちは徒歩15分くらいのところにある。走れば10分くらいでつける。
(よし! 走って帰ろう)
 沙耶は走り出した。

 音楽室では、「霧宮〜、時沢さん知らない?」と楓にサックス担当の男子生徒『柿村幸平』が話しかけてきた。
「えっ! 沙耶いないの!」
「いないから、聞いてるんだよ」
「あっ、ごめん」
「今日は、合わせたいとこがあったのにな〜、いないなら、仕方ないか」
「柿村、沙耶が好きなの?」
「違うけど」
「平然な顔でいったらこっちが悲しくなるじゃない」
「何故に?」
 不思議な顔をして幸平は練習に向かった。
(どうして、休んだんだろ? 体調でも悪かったのかな?)
 楓に傘を借りたくないがために帰ったことは、知る由もなかった。

 〜沙耶のマンション〜
(早く! 早く! 何でエレベーターこないのよ!)
 エレベーターのボタンをとんでもない勢いで連打している。彼女が急いでいるのは無理もないだろう。

  ……ギュルゥゥッ……ゴロゴロゴロゴロゴロ……
 彼女のお腹からくぐもった音がなっている。
 それにあわせて手足が小刻みに震える。
  5…4…3…2
 エレベーターがゆっくりと下りてくる。
(早く! 早く〜!)
  1 という数字が表示され、ゆっくりとドアがあく。
 そして、ものすごい勢いで飛び込み自分の階を押し、閉まるボタンを連打する。
 それをあざ笑うようにエレベーターはゆっくりと閉まる。
 普通の速さなのに何十倍も遅く見える。
(早く! 早く! さっさとついてよ!)
 沙耶の部屋は6階である、3…4… と上っていく。

  ブーーーーーッ!
 おならが出てしまった。エレベーターの中には沙耶だけというのが幸いだった。
(まずい! 次は……出る)
 そして、ドアが開き、すぐさま飛び出る、部屋の前まで普段ならでないスピードで駆け抜けた。
 部屋の前にたどり着く、ポケットから鍵がすぐに……でない。
 雨でぬれて、ポケットに手が入りにくい、その上ポケットにはいってるものと絡まって余計出にくい。
  ギュルギュルギュルッ……グウウゥゥゥゥ……!
 その間にもお腹の中身が荒れ狂う。
 鍵を出した。が、今度はうまく鍵穴に入らない。
 そして、家に飛び込む。走りながらスカートのホックをはずし、ショーツに手をかけトイレのドアを引き飛び込み座る。
 その途端、

  ブピーーーーーーーーッ!!
  ビュルルルルルッ!! ブブウッ!!
  グボボボボボボボボボボ!!
  ドボボボボボボボボボーーーーーッ!!!
  ドボチャボチャボチャボチャボチャボチャ!!!
  ドポドポドポドポドポブゥビイイィィィィーーーーッ!!
 座った途端汚水が便器に流れ込む。
「ぐううぅー、ふうーー、うーーー、いたいよー」
 泣き顔になりながらつぶやく、しかし腹の調子は収まらない。

  ブリブリビチビチビチビチビチビチビチビチ!!
  ビチビチビチブボボボボボボボボッ!!
  ブウウウウウウブリブリブリブリブリブリブリッ!!
「はあ〜、まにあった〜」
 ため息をつき、前を見た。
 そして、気づいた。
(ドアっ! 開いてる!? まさか、玄関も?!)
「ふっ!!」
 無理やり、肛門を閉じショーツとスカートをあげ、お腹をおさえながら玄関に向かう。

  グゥゥゥグオオオォォォ〜〜〜ッ
 嫌な音が鳴るが、それを気にとめず玄関に向かう。
(やだっ! やっぱりあいてる!)
 玄関を閉め、トイレに戻ると思いきや台所に向かう。
 下痢止めと冷蔵庫からお茶の入った2Lペットボトルを取り出し、それをもってトイレに向かう。

  ……ギュルゥゥッ……ゴロゴロゴロゴロゴロ……
 お腹は限界を訴えている。
(早く…いかないと…もれる…)
 壁をつたいながらトイレに向かう。
 そして、トイレに入り、もう一度スカートとショーツを下ろし座り込む。

  ジュボッ!! ジョボボボボブビビビビビビッ!!
  ボピブピブピブピブピッ!! チュボボボボブポッ!!
 また、汚水を叩き込む。
「はあ、明日いけるかな〜、行かないと楓心配するだろうなー」
 つぶやいたが、それはすべて肛門が発する轟音によってかき消される。

  チュボボボボボボボーーーーーーッ!!
  ブボッ!! ブウウビイイイ!! ジャーーーーッ!!
「はっううぅぅぅぅ……っ!」

  ビピーーーッ!! ボチャボチャボチャボチャッ!!
  ブボチュッ!! チュボボブビッッ!! ブボッッ!!

 一時間後、彼女はげっそりした顔で出てきた。
 もっている2Lペットボトルは空になっていた。
 下痢止めをテーブルに置き、ペットボトルは手から滑り落ちたが、気にする様子もなく、ふらふらとした足取りでベットへ向かう。
 彼女は一人暮らしである、故に心配する人などいない。
「6時か……かなり籠ってたな〜」といいながらベッドに倒れこむ。
「楓……ごめんね……どうしても……それだけは……」
 つぶやいていたが、急に途切れた。
 なぜなら、彼女は眠りに落ちてしまった。

 〜学校(部活)〜
「柿村〜帰ろうぜ〜」チューバ担当の川本が話しかけてきた。
「ごめん、ちょっと霧宮と話があるから……」
「もしかして……まさかお前!」
「ちげーよ! 時沢さんのことだよ。珍しく休んでたから」
「そういえばそうだな。あの人皆勤だったのにどうしたんだろな? ってまさかお前時沢さん狙いか?!」
「純粋に心配してんだよ。善意だよ」
「っちぇ。つまんねーな、それじゃあ俺はかえるわ」
「おう! また明日」
 霧宮楓も同じことで悩んでいた。
(沙耶今日はめずらしく休んでどうしたんどろ?)
 朝あんなやり取りをしたことはさっぱり忘れている。
 そこに彼がやってきた。
「なあ、霧宮……」
 彼が続きのせりふは楓によってさえぎられた。
「わかってるよ! 聞きたいことはわかってるよ! でも私にもわからないんだよ」
「……そうか、じゃあな。また明日」
 そういうと彼は帰っていった。
「沙耶、明日になったらくるよね……」
 小さい声でつぶやき、かばんを持ち上げた。


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 そして、話は今にいたる。
 昨日寝落ちした沙耶はお腹の悲鳴により目が覚め、トイレに急行した。というわけである。
「ふっ!」
 改まってしかめっ面でお腹を押さえるがなにもでない。つまり現状渋っているのだ。
 じつは渋るほうがめんどくさい。
 一気に出たほうが楽なのである。

  ゴボジャアァ――――ッ
 実に一時間ぶりぐらいに水が流された。
 といっても朝からかなりの回数を流しているので何回目かはもうわからない。
 お腹を押さえながら立ち上がり、ショーツとスカートをあげる、昨日の夕方から着替えてないのでいまだに制服である。
「のど……かわいた」
 今回は緊急事態だったためトイレに飲み物を持ち込むのを忘れたのだ。
 ふらふらとした足取りで台所に向かい、冷蔵庫からお茶を取り出す。

  ゴクゴクゴク
 かなりいい音が鳴りお茶が沙耶の体に取り込まれていく。
 顔色が良くなり、足取りももとに戻ったところで次の行動に出る。
「もう、六時か……何時間こもってたんだろ。とりあえず着替えないと」
 そういって自室へ戻っていく。
 制服をとりあえずハンガーにかけ、選択した下着をもって、下着姿で脱衣所まで行く。
「ブラジャー、つけっぱなしだ……そりゃ苦しいか」
 こういうのも無理はない。
 ブラジャーのワイヤーが食い込み苦しめていたのもまた事実である。
 慣れた手つきで下着を脱ぎ、洗濯機に放り込む。
「洗濯は……帰ってからまとめてしよう」
 そして、シャワーを浴びた。
 幸い、シャワーの最中に催すことはなかった。
 洗濯したパンツだけをはき自室に戻る。
「あっ、携帯! 昨日から放置だ」
 携帯のことを思い出し、自室へ駆け戻る。
 大きめのサイズの家用Tシャツをとりあえずきて、携帯をチェックする。
「楓……やっぱりきてる」
 そこには予想通り楓からの着信とメールがあった。
「もう、六時半か……出るまで一時間はあるし、ゆっくり準備するか」
 そして、学校へ行く準備をはじめた。
 しかし、その最中、

  ギュルルルルゥッ!
 沙耶のお腹がねじれるような痛みを発する。
(またっ! あれだけじゃないの?!)

  グリュリュリュゴロゴロゴロゴロゴロッ!
 そう考えてる間にも腸を圧迫する異物はどんどん降りてくる。
(だめっ!)
 即座に走り出した。
 なんとか、出る前にたどり着き、便器に座る。

  ブブブブブブブブブーーーーーーーッ!!
  ブリブリビチビチビチビチビチビチッ!!
  グボボボボブヂュブヂュブウウウゥゥゥゥッ!!
 音が鳴り出したのは、座るとほぼ同時だった。
(どうしてなおらないの! もうなにもないのに!)
 そう願うも肛門はそれをまったく意に介さず、

  ボチャボチャボチャブビーーーーーーーッ!!
  ドポドポドボボボドボドボドボーーーーッ!!
  ジュボボボボブウウウウゥゥゥゥーーーーーッ!!

 結局彼女は予定してた、7時半を三十分もまわり家を出た。
 その上、予定より遅れて急いでいたため、代えの下着や下痢止めを忘れてしまった。


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「おはよー」
「あはよー楓」
 と何気ない会話が行われる。
(あれ? 沙耶、鞄はあるのに本人がいない。どこいったんだろ?)
「ねえ」
 と言いかけてとまる。
(そうだ、この人たちに沙耶の話題をふっちゃいけないんだ)
 重要なことを思い出す。
 だからこそ、黙って、席につき、沙耶の帰りを待ちつつ今日の準備を始める。

 結局沙耶は授業始まる寸前に帰ってきたため何も聞けなかった。

 〜昼休み〜
(ふっ! まだいたいよう)

  ブウウウウウウウウゥゥーーーーッッ!!
  ブブブウーーブウウウボボボボーーーーッ!!
  ブリブリブブブブブーーーーーッ!!
 沙耶は昼休みもトイレに籠っていた。
 だが、教室から近いトイレではなく学校でも知る人しかしらない、体育館裏のトイレだ。
 設置理由が校長以外誰も知らないという謎のトイレである、中は普通のトイレと大して変わらず個室が4個並んでいる。
 その個室の一番奥に沙耶はいた。
 沙耶は、今のところ今日すべての休み時間をトイレですごしている。
 理由は明快であり、下痢が一向に治る気配を見せないのだ。
(もう、クラスの人にはばれてるよね、しかたないよね、生理現象だもの)
 その時、女子トイレに人が入ってきた。
「でさー」
「まじで! それかなりうけんじゃん」
 沙耶は驚愕した顔で、
(うそ! クラスの人? まずい、ここだと知られたくない!)
 なんとか、肛門に力を加えるが、

  ブチュッ!!
 そう簡単に完全に閉まるものではない。
「ねえ、この音それにこのにおい」
「気づかれないようにほかのトイレいこ」
 少女たちは相手に聞かれないようにいったつもりだったが沙耶にはすべて筒抜けだった。
  キュゥルルルゥルルルウゥゥーーッ!!
 お腹が悲鳴をあげる。
(もういったよね……)
 そして、開放する。

  ビジュブリブプウゥゥッ!! ブリジュビジュビイィィーーッ!!
  ブピィッ!! ブビイィィーーッ! ブビジュジュジューーーーッ!ブリッ!
  ブジュゥゥーーッ! ヂュビチュウゥゥーーー! ブジュブジュビジュビチッ!!
  ゴロゴロゴロゴロオォッッ!!
  ビチビチビチビジュッ!! ブジュビチビチジュビィィーーッ! プウゥッ!
  ……クキキュルキュルクキュルルゥゥゥッ!!
(おなかいたい……! いたい! 叫びたい! 何なのこの痛み!)

  ピチャ……チュビッ……プビッ、ポチャ、ポチャン…………
 沙耶の肛門はようやくおさまってきた。
(はあ、やっと終わった。それにしても……)
 考えることはただひとつ、先ほどのクラスメイトである。
(もう、いやだ。あんなことは、もういや、教室に戻りたくないよ……)
 彼女の持つトラウマが呼び起こされる。
「ひくっ! ぅぇえ、ぇんん……ぁぁあぁあ……」
 誰もいないトイレで、沙耶は泣き出した。

 〜教室〜
(沙耶またいない、近くのトイレにもいる感じなかったし、どこいってるんだろ)
 そこにクラスメイトが帰ってきた。
「それにしても、さっきのは……」
「あれ、絶対うちのクラスの時沢さんだよね」
「いうまでもないでしょ」
 その話を偶然聞いた楓は、勢いよく立ち上がりその生徒の所に走っていく。
「ねえ! 沙耶はどこにいるの?!」
「楓ちゃん急にどうしたの? あんなこのことをきにして」
 だが、楓は続ける、クラスの立ち居地とか、噂話とか、そんなことをまったく考えず続ける。
 いや、わかっていたのかもしれない、わかった上で聞いたのかもしれない。
 そしてききだして、走る、ただ走る、目的地まで。
 そして、たどり着く。そこで聞いたものに驚いた。
「ぁぁぁぁ……ひくっ! ……ぅえぇぇ、ぇんっ……」
 泣き声だったのだ。本当に悲しくこちらまで涙を流しそうなるなそんな泣き声。
 ゆっくりと声のするほうへ歩み寄る。
 そして、ゆっくりとノックする。

  コンコン
「はいっ! ぐすん、入ってますよ」
「沙耶、私だよ」
「楓……?」
「ごめんね、気づかなくて、ほんとにごめん……」
 そういうと、こんどは楓のほうからすすり声が聞こえてくる。
「楓、責任を感じないで、すべては私にあるんだから」
「それでも! 気づいてあげられた! なにかできた!」
「ねえ、ちゃんと顔をみて話そうか、私もうでるし」
 そういったときだった。

  ギュルゴロゴロゴロゴロ……
 個室の外にまで響く音が鳴った。
「!!」
「ごめん……もうちょっとまって……」
「外にいってるね……」
 そういって、楓は外に行き、沙耶は便器に腰掛けた。

  ブシュゥイイイイイィィィィィーーーーッ!!
  プビィィッ!! シュウウゥゥゥゥゥーーーッ! シュイイイィィィィ……

 10分後、沙耶は青い顔でトイレから出てきた。
「ごめんね、またして」
「いいのよ、気にしないで友達でしょ」
「友達……私にはいないよ」
「いい加減認めなさいよ、私はあなたの友達なの」
 そんな会話をしながら二人は教室へ戻った。
 教室に帰ってからは、クラスメイトからの態度はなぜか前と変わらなかった。
 教室でなにがあったかは、ふたりの想像できるものではなかった。


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 〜放課後〜
「沙耶、今日は部活休みなさい」
 と、急に楓が話しかけてきた。
「いや、今日は行くよ。昨日休んじゃったし、それに心配かけてるだろうし……」
「そうだなー、じゃあとりあえず顔だしなよ、むりそうならかえったらいいじゃん」
「そうだね、そうさしてもらうよ」
 笑顔で答え二人は部活へ行った。
 途中に沙耶がトイレに行ったため、音楽室についたのは、かなり遅れてみんなもう吹き始めていた。
「おはよー」
「楓、今はおはようの時間ではないよ」
「いや、おはようは一日中使えるという話をきいたことがある」
 などドアの近くにいた部員と話し始める楓を尻目に沙耶は鞄を置き、譜面を取り出し自分のパートのところへ行く。
「時沢さん、一日ぶり」
「「時沢先輩、昨日はどうしたんですか?」」
 とサックスパートの三人が出迎えてくれた。
「いや、たいしたことはないよ。昨日はごめんなさい」
 パートリーダーである柿村幸平は難しそうな顔をしながら、頭をかき、
「硬いよ、時沢さん」
 と言った。
「とりあえず楽器出しておいで、ちょっと休憩にするから音出しとかしておいて」
 そう言うと楽器を置いて別のところへ行ってしまった。
 沙耶は言われたとおりのことを進めていった。

 柿村の行き先は霧宮楓だ。
「霧宮、ちょっといいか?」
「いいよ」
 と会話をして二人は廊下に出た。
「やっぱり雨が降ってると寒いね、それで本題は?」
「時沢さん、どうだった? なんともないでごまかせるレベルを超えてるぞあれは」
 そういわれると楓は降参のポーズをとり、
「そうだね、柿村にはいっておくか。沙耶ね、なんかとんでもないくらいお腹こわしてるのよ。たぶんあんたに想像できないレベルよ」
「そんなに酷いのか?」
「かなり、やばいよ」
「それだけわかればいい」
「ちゃんと面倒みてよ〜サックスパートパートリーダー」
 柿村の後姿にそう声をかけると、楓は自分のパートにもどった。

 柿村が自分のパートに戻ると、後輩はすでに練習を始めていた。
「時沢さん、ちょっといいかな?」
「いいですよ……」
(すでに危険じゃねーかこれ)
「先輩、何の話ですか〜」
「まさか、二人だけの大事な……キャー」
 サックスパートには二人の後輩がいる。二人とも真面目なのだが、こういうことにはうるさい。
「ちがうよ、サックスパートに関わる重要な話」
「「つまんないですね〜」」
 二人ははもって、練習し始めた。
 そして、柿村と沙耶は廊下にでた。
「それで、重要な話って何ですか? ファーストの話ですか?」
「あれ、うそ」
「うそ?」
「話は、霧宮から聞いたよ。とりあえず、危なくなったら何かしらのサインを送ってくれ、そうすれば休憩をとるから」
「楓がいったんですか……」
「ああ」
「わかりました……お願いします」
 普段の沙耶なら断っていただろうがこのときは思考が麻痺していた。

 そして、練習が始まったが沙耶のピンチのたびに止めていたためあまり進んでいない。
(この調子じゃ合奏は無理か……無理してなくしてもらうか)
 そう思うと、柿村は部長のところまで行った。
 吹奏楽部部長兼指揮者、2年松山詩織。
「部長、折り入って話があるんですが……」
「柿村か、どうした?」
「ここで話しにくいので廊下でもいいですか?」
「廊下は寒いから、部屋の端にしろ」
「はい……」
 この部長、かなり口調がきつく、部員そろって下手にでてしまう。
 〜部屋の端〜
「それで、話というのは?」
「今日の合奏をなくしてもらいたいんですが……」
「明確な理由は?」
「いえません、でも大事な理由なんですお願いします」
「そうだな……商店街のイエローキャラメルの超巨大イチゴパフェでどうだろうか?」
 商店街のイエローキャラメルの超巨大イチゴパフェとは、商店街のイエローキャラメルというケーキやの裏メニューである、パフェなのだが、スケールがおかしいのだ。
 バケツサイズの入れ物にイチゴパフェがつめられている、値段は5桁いくかいかないか、と噂されるほど値段がかなりたかいのである。
「あれですか……」
「どうだろうか? わたしはあれをたべたいのだ」
「まあ、いいでしょう、日時はこちらでかまわないですか?」
「まあ、いいだろう。よっしゃー! わたしもついにあれをたべられるのか!」
「はあ、おれの財布が……」
 とつぶやくが部長の耳には入らないようだ。
 そして、部長が指揮台にたった。
「みんな、ちょっといい?」
 その声でみんなが音を止める。
「今日、なんか調子でないんで合奏なしでもいい?」
 まあ、部長がいうなら。などの声がもれ承諾された。
 そして、柿村のすれ違い際
「わすれるなよ」
 ホラーにも聞こえる声でつぶやいた。柿村の背中にとんでもない寒気が走る。

 一方女子トイレ、
(まだ、いたい……、柿村君も待ってるし、早く戻らないと……)
「うっ!」

  ブビィィィ……ッ……ビチビチビチッ……ブチュッッ!
  ブボッッ! ビチビチブプゥッ! ……ブリ……ブリビチジュグゴポッ……
  ビチビチッ……ブッ! ブリィッ! ブチュブチュブチュッ
 また、下痢を吐き出す。
 音楽室でなにが起こってるのかを知らずに、一人苦しみ続けていた。


<6> / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 / Guest / Index

 〜部活終了後〜
 楓が柿村に声をかけた。
「ねえ柿村、沙耶と一緒に帰ってくれない?」
「なんで?」
「家、沙耶より近いんでしょ。それに万が一は柿村の家のトイレ貸してあげて」
「時沢さんの家知らないし、そもそも方向いっしょなの?」
「知らなかったの?」
 柿村は無言でうなずく
「私は方向が逆だからお願いね」
「いいけど、このことは本人に話しておいてくれよ」
「わかった〜」そういって、沙耶のもとへ走り去った。
「柿村〜かえろうぜ〜」
「ああ、川本悪い、なんか今日、急に用事が入って帰れなくなった」
「ああ、そうなんだ。今日は来るんだろ、その話をしたかったのに」
「電話してくれよ、家に帰ればたぶん暇だから」
「おっけー」
 そういって川面とは帰っていった。
「ねえ、柿村君……今日はよろしく……」
 そういって、沙耶が柿村のブレザーの裾を持っていた。
「帰るか……」あさっての方向をむきながら答えた。

 〜校門〜
「風……強いね、傘の意味あるかな……」
「時沢さん雨合羽あるのにどうしてそんなこと心配するの?」
「柿村君の心配……」
「ああ、俺の? ありがとう」そういうと沙耶はうれしそうににっこりと微笑んだ。
「さあ、かえろ」
 そういって、二人は帰った。
「柿村君の家ってどのあたりなの?」
「徒歩で10分くらいのとこだよ」
「私のとこより近いね」
「時沢さんはどのくらいなの」
「私は……」
 言いかけたとき、異変は起きた。

  ギュルルルル……ギュグウゥウウゥウゥゥウッ!!
「「!!」」
「えっと、そこにコンビ二があるからそこに寄ろう!」
「だめ……恥ずかしくて寄れない」
「じゃあ……俺が雨宿りにしたいからいこう!」
 そういって半ば強引にコンビニに二人は入っていった。

  ピロピロピロー
「らっしゃいませー」店員があいさつするがそれにきをとめることなく沙耶はトイレに向かう。

  ギュゴロゴロロギュルッッ!
(いける、まにあう!)
 しかし、運命は時に非情だった。
 トイレのランプが光っている、つまり使用中。
 ここに来て、希望が遠のく。
(そんな、いけると思ったのに!)

  グリュリュルルルゥゥ……グリュ、ゴポコポッ……
 お腹の中身はより一層降りてこようとする。
(開いて! 早く!)
 その願いが通じたのか、

  ジャアアアアァァァーーー……
 水音が鳴り、ドアが開く。出てきたのはOLっぽい女性だったがそんなことはきにしてられない、すぐさま飛び込む。
 なんとか、ドアを閉め、スカートに手をかける、がホックが外れない。
(なんで? こんなときに?)
 落ち着いて考えればレインコートを着ているからなのだが今の沙耶にそこまで思考が回らない。
(なんで?! なんで?! あっ! レインコート!)
 レインコートに気づき脱ぎ捨てスカートとショーツを思いっきり下げ、偶然にも蓋が開いていた便器に座り込む。

  ビュルッ! ビュルルルッ!! グチュブチュブチュブチッ!!
  ブビッビビピビビビピピブボッッ!!
  ブボビヂヂヂビヂブボボボボボボボッッ!!
  ブビチビュチチビヂィッ!! ブピュビビュビュッ!!
 雨によって冷やされた分きょうだしてきた分の何倍もの量が出る。
「ふぅぅ、ぅっ、ううぅぅー……っ……!」

  ブビヂヂヂチ……! ビヂヂヂヂビヂュッッ!!
  ブッ! ビチビチビチブビッ!! ブピビュルビュルブビビッ!

 10分後ゆっくりと扉が開けられ並んでた人から冷たい視線を向けられながら走ってその場を去った。
 柿村はコンビニの前で待っていた。
 そこに今にも倒れそうですって感じの女の子が中から出てきて、思わず倒れそうになるのを受け止める。
「かき……むら……くん……」
「とりあえず、これ飲め!」といってコンビニでかった清涼飲料水をあたえる。
 なんとか、飲んだようで普通に立てるようにはなっていた。
「ごめんね、みっともないとこ見せてしまって」
「とりあえず、家の人に迎えにきてもらうか……」
「あっ、私一人暮らしだから……」
「そうか、じゃあとりあえず俺の家に行こう」
「家の人に迷惑かかるから……」
「俺も一人暮らし!」といばって、ゆっくりと雨の中歩き出した。

 その10分後、沙耶はまたもや苦しんでいた。
「ぐぅぅぅぅぅう……っ!」

  グピィーーーゴロゴロゴロゴロォォーーッ!!
「もうすぐつくから、あとちょっとの我慢だ」
 事実柿村の家は見えていた。

  ……グリュリュリュリュ……ゴロゴロギュルル……キュルルルルッ!
 あとは時間の問題だった。沙耶の荷物はすべて柿村がもっていて、沙耶は両手をお腹に当ててゆっくりとあるいていた。
 だが、まだ関門があった。柿村の家もマンションであり3階なのである。
 つまりエレベーター、

  グウウウウゥゥゥッ!!
「んふ……っ!」

  プスプスプスッ
 今度は運よくエレベーターが一回にあり、なおかつ人が乗ってくる気配もなかった。
 ゆっくりとのぼっていく、その間にも極限状態の沙耶のお腹はなりやまない。

  グリュリュッ! グリュリュリュリュリュゥ〜〜ッ!
「大丈夫、もうすぐだから」
 必死に励ます、がそんな声は今の沙耶にはとどいていない。
 エレベーターのドアが開き二人は飛び出る。
 先に部屋の前まで行き、鍵を開ける、少し遅れて沙耶もやってくる
「一番手前の扉!」そういうと、そこに飛び込んだ。
 個室に入り、スカートを持ってる手を離すとスカートが落ちた。エレベーターでホックをはずしておいたのだ。
 同時にショーツもおろし座り込む、

  ジュボボボッ!! ボジュッ! ビチュービチュヂュヂュヂュブビーーッ!
  ヂョボボポポポポッ!! ブピッビヂヂチチッブヒィィッ……!
  ブボビヂュヂュヂュヂュブボボボボブボォッッ!!!
  ブピチヂチチブピピ……ブビューッ! ブビィィッ!! ……ビィッ……
「はあ、はあ」と息切れを起こしている。
  ギュルギュルギュルギュルググウウウウグウーーッ!!
「っ!!」痛みがこみ上げ新たなる下痢を肛門に送り込む。

  ブビイッ! ブヂュボボボボボボッ!!
  ジョボボボボボッ!! ブヒッ!! チョジョボボボポッッ!!
  ヂュビビビビビビチッ!! ブヂュヂュブビビビビッ!

 一方の柿村は、鞄をリビングに置いて、出かける準備をしていた。


  ヂュビビビビビビチッ!! ブヂュヂュブビビビビッ!
 未だに鳴り止まない個室に向かってノックする。

  コンコン
「はい……」か弱い返事が聞こえる。
「ちょっと買い物にいってくるよ。そっちもあまり音とか聞かれたくないだろうし」
(寂しい、一緒にいてほしい、でも恥ずかしい)
沙耶の心のなかで様々な葛藤が生まれていた。そしてだした結論は、
「いってらっしゃい……」というシンプルな答えだった。
「いってきます」そういって、自分の家を後にした。


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 行き先は薬局とスーパー、下痢止めと清涼飲料水と晩御飯の買出しをしにいくのである。
 そして、薬局によって現在スーパーである。
 そこに良く知った人物がいた、霧宮楓である。
「柿村、どうしたんだ?」
「買い物だよ、買い物」
「そういえば、沙耶どうなった?」
「俺の家にいる。合鍵の場所教えてないから一人で帰らないとは思う」
「そっか、そりゃよかった。それでさ……」
 そこで話は途切れた、いや正確にはある音が会話をさえぎった。楓のお腹からなった奇妙であり、柿本は今日何度も聞いた音、
  グピーーーゴロゴロゴロギュゥゥーーーッ……!
「あはは、もうおなかすいちゃった、てへぺろ」と愛想笑いを浮かべたがそれが通じるわけもなく、
「このスーパー、男女兼用だがトイレはあるから早くかりにいけよ」
「ごめんね、かご見といて」そういって一目散に駆け出した。
(まにあえうかな、あいつ)
 と少々不安ながらも買い物を続けることにした。
(間に合え! 間に合え!)
 そう願いながらトイレへ駆けていく。
 そして、たどり着いた。運よく使用者はいない。
 飛び込み、和式だったがそんなことはきにしてられない。
 ショートパンツとタイツとショーツをまとめて下ろす、そしてかがみこむ。

  ビュリリブチュブチュブチュブリュリュリュブボッッ!!
  ビュボッ! ブビュビチビチビチビチビチ!! ブリブリブリブリブッ!!
  ブリリブリブリブリブウウウウウゥゥゥゥゥーーーッッ!!!
 爆音が生み出され便器に跳ね返ったものが自分のお尻につき変な感覚を生む。
「はあ、はあ、はぁ……はぁーー、はあ、はぁー……!」
 間に合った安堵によるため息と疲れが混じった声が出る。

 それからしばらくして、楓はトイレから出てきた。
 柿村は買い物をすませたあとのようで両手いっぱいの買い物袋を持っていた。
「ごめんね、なんか雨で体冷やしちゃったっぽい」
 笑いながら帰ってくる。
「はい、これ」
 といって、ひとつの袋から紙箱をとりだし、楓に投げる。
「これは?」
「店員いわく、お前みたいな症状によくきくんだとよ」
「下痢って言って構わないよ」
「公衆の面前で言えるほどデリカシーを捨てた覚えはない」
「それもそうか」
「それじゃあ」
 といって柿村はスーパーを後にした。
「あいつ、やさしいんだよなあ」
 と少々にやつきながらつぶやいた。

 〜柿村家〜
「ただいまー」
「おかえりなさい……」
 といった沙耶はリビングのテーブルの前に涙目になって正座で座っていた。
「……どうしたの?」
「ぅぁあ、あぁぁぁぁっ、あああぁーーーー……っ!」
 柿村の顔を見るなり号泣した。

 沙耶は少し間に合わなかったらしく、便座カバーを汚してしまった、ということらしい。
 それに罪悪感をおぼえ、泣きじゃくったそうだ。

「責任なんか感じなくていいんだよ、仕方のないことじゃないか」
「でも……」
「こんなの洗濯すりゃすぐに落ちるよ」
「すみません、私もう帰ります」
 立ち上がる沙耶を引き止めた。
「いや、待って。今雨酷いしとりあえずやむまでうちにいたら」
「いや、でも迷惑ですし……」
「迷惑なんかじゃないよ」
「いえ、こちらのもんだいなので!」
「いや、こっちとしても濡れて帰ってまたお腹壊されたら困るじゃん」
「それは……」
「とりあえず、まってみようよ」
「では、お言葉に甘えさせていただきます……」
 そういって、沙耶はゆっくりと座った。


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 便座カバーを変えたあとも、沙耶は何度もトイレにかけこんだ。
 柿村が買ってきた清涼飲料水もすでに二本が空になっていた。
 だが、駆け込むペースは少しずつ落ちていった。
 一方で雨は一向にやむ気配もなく、それどころか徐々に強くなっていき、現在午後7時である。
「止みそうにないね、雨」
「そうですね」
「今日は泊まっていく?」
「いや、それは! いいです!」
「でも、雨酷いよ」
「でも、着替えがないですし……」
「上下は俺が貸すとしても……」
「どこみてるんですか?」
「いや、やっぱり下着はどうしようもないか」
「いま、大きさで必要ないとか思いましたよね! ねえ!」
「予備の下着とか持ってる?」
「私の話を聞いてください! ちなみに、もってません……」
「風呂に入ってる間に洗うってのはどう?」
「オトコノコにそんなことさせれません! わたしがやります!」
「ノーパンだったら、またお腹ひやすんじゃないの?」
「それは……」

  ギュルルルルルルルルルルルル!!
「ごめんなさい、トイレに……」
 また駆け込む。

  ブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリブリ!!
  ボチャボチャボチャボチャボチャボチャボチャ!!
  ブビビビビビビビビビビーーーーーーーーーーッ!!
  ブポッッ!! ブピブピブピブピブピッ!!
  ドポポポボポポポポボポポポポポポボポ!!
「ぐううううううううぅぅぅーーーーっ!」
  コンコン
 ドアが突然ノックされた。
「はい……」
「今、風呂沸かしたから、終わったら風呂に直接行って。場所はわかる? トイレの隣のドアだから」
「わかりました……」
「それで、下着今から洗濯乾燥すれば、時沢さんが風呂から上がるころには乾くと思うんだ」
「……わかりました、へんなことに使わないでくださいよ」
 トイレの中で足をショーツをから抜き、とりあえず制服を脱ぎ、シャツも脱いでブラジャーも外す。
 制服だけをもう一度来て残りをゆっくりドアをあけ、「おねがいします……」と小声でいってドアの外に置く。

  ギュルルルルルルルッ!!
「あの、すいません音が恥ずかしいのでそろそろ……」
「あ、ごめん」
 慌ててドアを閉める。

  ドボボボボボボボボボーーーーーーッッ!!
  ブピボピブピブピビピボピッ!! ブボッッ!!
  ボチャボチャボチャボチャボチャボチャボチャ!!!
  ブーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!
  ブオッ!! チョオオオォォオオォォ!!
  ブウウウウビイイイイイイイイイィィィィィィィ!!

 トイレから洗濯物をもって離れた柿村は洗濯機を洗濯乾燥にセットして洗濯物と洗剤をいれて、スイッチを入れる。
 台所に行きお湯を沸かした。

 〜トイレ〜
(ああ〜やっちゃったよ! ついにやっちゃったよ! 仕方がなかったとはいえ男の子に履いた下着渡すなんて……)
 顔を真っ赤にしながらそんなことを考える。
(柿村君、変なことに使わないよね……)
 その後、洗濯機の音が聞こえそんな妄想はふきとんだ。
(まさか、柿村君の洗濯物と一緒、なんてことないよね……確かめにいかないと!)
 そう思い、立ち上がろうとしたが、

  グリュリュリュゴロゴロゴロゴロゴロッ!
 お腹から発せられる、音によって力が抜け手はお腹へ逆戻りする。

  ボチャボチャボチャブビーーーーーーーッ!!
  ドポドポドボボボドボドボドボーーーーッ!!
  ジュボボボボブウウウウゥゥゥゥーーーーーッ!!
 結局、こんなループでひたすらトイレから出られなかった。
 なんとか、トイレから出て言われたとおり風呂場へ向かう。
 通路の先のリビングのソファーで柿村が寝ていたので、声をかけずに風呂場へ向かう。
 トイレのドアの前に置手紙と一緒に清涼飲料水を置いてくれていたので、それで水分を補給し、風呂に入る。
 洗濯機を見たが、量的に自分のだけだった。

 〜風呂〜
(はぁ、何もかもお世話になって悪いよね。柿村君が変なことするってのは私の妄想だったっぽいし……)
 足を曲げ肩まで浸かりながらそんなことを考える。
 もちろん、浸かる前に五分以上かけて念入りに体をあらったわけだが、
(汚れてないよね、ちゃんと隅々まで洗ったからたぶん大丈夫だよね)
 そして、改めて自分の体を見る。
(私って……やっぱり小さいよね……)
 自分の一番のコンプレックスを改めて実感する。

 一時間後。
 洗濯乾燥終了の音が部屋中に鳴り響く。
 柿村はソファーでくつろいでいたが、立ち上がり、脱衣所へ向かう。

  シャーーーーー
 シャワーの音が鳴り響いている。
 ノックして、声をかける。
「ここに着替え一式置いとくよ。下着は洗濯機から取っておいて」
「はい……」
 柿村は台所へ行き、晩御飯の支度をし始めた。


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 〜風呂場〜
 沙耶は風呂から上がり、しっかりと、体を拭いていた。
(確か下着は洗濯機の仲だったよね……)
 洗濯機をあけ取り出す、洗剤のにおいがして余計に申し訳ない気持ちになる。
(服は……これだよね。やっぱりでかいね。ズボンなんか、もう長ズボンレベルまであるし、上に至ってはひざぐらいまであるよ……)
 そんなことを考えながら服を着ていく。
(このバスタオルは……あとで聞こう。それよりこのにおいとてもいいにおいがする)
 台所の料理のにおいが風呂場にまで届いていたのだ。
 風呂場を後にして台所のほうに向かう。
「あの……お風呂いただきました……」
 それにやっと気づいたのか火を止め振り返る。
「んん〜予想はしてたけどやっぱりでかいね」
「いえ、貸していただけただけでも……」
「そういわれると照れるな、とりあえず、ソファーでも座ってテレビでも見ててよ」
「あの……」
「今、晩御飯作ってるから、雑炊にしたんだけど、食べれそう?」
「だ、大丈夫です。残さず食べます!」
「いいよ、食べられる分だけ食べて、食べれなきゃ食べなくてもいいし」
「あ、ありがとうございます……」

  ギュウ〜〜グルグルグルグルグル!
「ごめんなさい……」
 そういうと、またトイレに駆け込んだ。

(痛い! まだ痛い! せっかくやさしく話してくれてるのに!)
 トイレに駆け込み大慌てで着ているものを下ろし、座り込む。

  ブボオッッ!! ビチビチビチビチビチ!!
  ビチビチビチブリリリブリブリブリブリブリ!!
  ブウウビイィブビイイイイイィィィィィィィッッ!!
 最初に比べれば水っぽくはないが、それでも相当酷い。

 結局また10分以上篭ってしまった。

「すみませんでした、会話の最中に……」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。それより大丈夫?」
「はい、柿村君のおかげで、少しずつましにはなってきてます」
「俺はなにもしてないよ。それよりましになってるなら良かったね」
「いえ! 謙遜しないでください! 柿村君がいなかったらアウトでしたよ」
「……俺そんなとこした自覚ないんだけどな。それより食べれそう?」
「はい、今、結構出たので食べれそうです」
「それは、あまりオトコノコの前で言わないほうがいいかもよ……」
「ごめんなさい、食事前に……」
「とりあえず、座って。運ぶから」
 そういわれて、テーブルのの前に座り、言われたとおり待つ。
 しばらくして、持ってきた。
 きれいに器に入れてくれた。
「どうぞ」
「いただきます……」
 味は、とてもおいしかった。
 昨日の昼から何も食べてないのでどんどん、お腹がすいていき最終的には結構な量が胃の中に送られていった。
 柿村の「大丈夫?」を何も食べてないので。と華麗にながして、胃に詰め込めていった。

「結局ほとんど食べたね……」
「すいません、とんでもなくお腹がすいていたもので……」
「あっ、これ飲んどいたほうがいいよ」
 と言われて下痢止めを差し出した。
「ありがとうございます」
 そういってお茶で流し込む。
「そういえば、薬をお茶で飲んでも効果薄まるって、微妙らしいな」
「そうらしいですね、この前テレビでみましたよ」
「……そろそろ敬語やめてもいいよ、なんかこっちがきまずいし……」
「いえ! でもそちらが望むなら……努力します」
 両手でガッツポーズをされて、かなり困った顔をして、
「あっ、ああ頑張ってね」
 と曖昧な返事をする。
「じゃあ、洗い物してきま……じゃないや、私がするよ」
 といって鍋を持ち上げようとした。

  ギュルルルルルルルル!!
「トイレ借りるね……」
 そういってまた走り出す。
「病み上がりで食べ過ぎたな……」
 とつぶやき片づけを始める。

 結局、彼女の胃は急激な大量摂取に耐え切れなくなり、一刻も早く詰め込まれた異物を出そうとしているのだ。
(やっぱり、食べ過ぎたな。なんか食欲に制御ができなかった!)
 そんなことを考えながらトイレにたどり着く。
 充血した肛門が便器を捉えたとき、

  ブリュリュリュリュリュリュリュリュリュブボッッ!!!
  ブリブリブリブリブリブリブビーーーーーーッ!!
  ボトボトボトブチャブチャブチャブチャッ!!
  ブボボボボボボビビビビビビブゥビッ!!
  ボチャボチャボチャブビイイイイイイイィィィッ!!
 今日一番、形があり、量が一番多いものが便器にたたきつけられる。
「……はあっ、はあっ、はぁっ……っ!」
 しかし、異物はこれだけでは済まされるわけがなかった。

   キュゥゥゥグウウウウゥゥ〜〜〜ッ!
「はあっっ……!!」
 そして、まだ腹の潰れるような腹痛は収まらない。

  ビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチ!!

 無意識にシャツを思いっきり握ってしまう。

「っふっ……くくっ……!」
  ブピピッ! ブッ! ビュルルルルッ!!
  ビジューーーーッ!! ボピブピブピブピッ!!

 結局、詰め込まれた異物はすべて吐き出したものの、代償は大きかった。
(お尻痛い……、もう痔になっちゃってるよ。いつものぬり薬は家だし、買ってきてもらうわけにもいかないし……)
 そんなことを考えながらリビングに戻ると、片付けはとっくに終わっていて、柿村は風呂に入っていた。
(はっ! 私、バスタオルのこと言ってない! 行かないと!)
 脱衣所に飛び込み風呂をノックする。
「ん?」
 とのんきな声が返ってきたが、沙耶にとっては事態はそんなほのぼのとしてなかった。
「あの……、バスタオルどうしたらいいですか……」
「あ〜、洗濯めんどくさいし、時沢さんが使ったやつ使うよ」
「そんなのだめです! えっと……不潔です! 私がつかったやつなんか! だから別のを使ってください!」
「あっ……、そう……、じゃあ別のを使うよ」
 声に圧倒され、別のタオルを使うことにした。

(これで大丈夫、焦って言い過ぎたかもしれないけど、これで大丈夫)
 と一安心していた。

 当の柿村は言われたとおり別のタオルを使った。


<10> / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 / Guest / Index

  チャラララー
 とどこからか着信音が鳴る。
「鳴ってるよ」
 と沙耶のかばんを指される。
「ありがとう」
 といって携帯を取り出して、そこに表示された名前に驚く。
『霧宮 楓』
「ちょっと、ベランダ出てくるよ」
「濡れないようにね」
 沙耶はベランダに出て窓を閉めて出る。
「もしもし」
『もしもし〜さや〜元気〜大丈夫〜そろそろ大丈夫と思って電話かけたんだけど』
「うん、少しずつ治まってきた」
『結局さー私も雨に濡れてお腹壊しちゃった……、なんか柿村との会話の最中にトイレに駆け込んだから申し訳ないんだよね』
「柿村君と?!」
『そうだよ、そういえば柿村どうした? 家まで送ってってくれたの?』
「えっと……今柿村君の家……」
『ええっ! マジで……?』
「ごめん、まじ」
『ちょっといきさつを教えなさい』
 このあと、沙耶は楓に今日楓と分かれてあったことをすべて話した。
『そんなことが……、じゃあ私からのお礼言っといて』
「わかった。それじゃあ切るよ」
『ばいばい、それと……過ちを起こしてはいけないよ……』
「おこさないよ!」
 そういって乱暴に通話を切った。
 部屋に戻ると、普通にテレビを見ていた。
(過ちか……私が柿村君と……いや、だめだ! まだ高校生だ! 思い出せ時沢沙耶、私たちはまだ高校生だ!)
「ああ、終わったの。じゃあ寝る準備するか」
 といって立ち上がった。
「ついてきて」
(寝るの? ベッド? まさか! いや、理性を取り戻せ! 我々はあくまで高校生なんだ!)
 そして、寝室へと案内された。
「とりあえず、今日はベッドで寝て」
「その! か、柿村君はどこで寝るの?!」
「そんなにてんぱってどうしたの? 俺は今日ソファーで寝るよ」
「いや! そこは私が寝るよ! 客は私なわけだし!」
「そんなに息使い荒くしてどうしたの? いいことでもあった?」
「いや! そんなことはないよ!」

 余計に息遣いが荒くなる沙耶を見て首をかしげた。
「いや、ソファーって案外寒いからベッドを貸したんだよ。それにここの方がトイレが近いだろ」
「私は頻尿ではないよ!」
「いや、そんなこといってない。というかなんかおかしいよ、早く寝たほうがいいよ」
「おかしくない!」
「……さっぱりわからんが、とにかくおやすみ。電気はここね」
 といって、電気の場所を教えて、部屋から出て行った。
(なんか、楓のせいで変になっちゃったよ。とりあえず言葉に甘えて今日は寝かしてもらおう)
 とは考えたもののなぜか寝付けず、結局寝たのは寝床にはいって三時間ぐらいしたあとだった。



<あとがき>

 初めての投稿ととります。みそかつ、と申します。
 読むのは簡単なのですが、いざ書いてみると難しいものです。でも楽しかったです。
 これは、初めての癖に続きがあるようなつくりにしてしまいました。
 とりあえず、最低でもこのシリーズで二本は書くつもりです。
 部長の食べすぎ、沙耶の過去など書いてみたいものはたくさんあります。
 新しく、書き始めるものですがこれからよろしくおねがいします。


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