No.09「ある六人の休日の出来事」

時沢沙耶(ときさわさや):身長:142cm、体重:?kg。
純粋な高校二年生の女の子。吹奏楽部員、サックスパート。
小、中学の時、色々あり地方の高校に通うことでそのことを忘れようとしている。
今でもそれを思い出すたびに正常に動けなくなったりする。
前回、柿村に話したことにより少しづつ耐性をつけようとしている。
現在はは学校近くのマンションに一人暮らししている。
ささいなことでお腹を壊しやすく(冷房の効きすぎ、アイスの食べすぎ、気温の変化、緊張等)
よくトイレへと駆け込む。そのため、そういうことに関する知識が人より多くなっている。

霧宮楓(きりみやかえで):身長:164cm、体重:?kg。
沙耶と同じ高校二年。沙耶と同じクラス、吹奏楽部員、クラリネットパート。
沙耶の(自称)友達。沙耶は認めてないっぽい。

柿村幸平(かきむらこうへい):身長:185cm、体重:73kg。
沙耶と同じ高校二年。吹奏楽部員、サックスパート(パートリーダー)。
男女問わず人に優しくしようとしている。その過程にもいろいろあるようだ。

松山詩織(まつやましおり):身長:165cm、体重:?kg。
沙耶たちが所属する吹奏楽部の部長。高校2年。
口調がきつく誰も逆らおうとはしない、その反面中身は後輩などに優しかったりする。
見た目や口調からは想像はつかないが甘いものやほかもろもろ女の子っぽいところもある。
知ってる人はそのギャップがまたいい! など言っている。
部を立ち上げた時から隠している秘密がある。

坂上真希(さかがみまき):身長:158cm、体重:?kg。
沙耶たちが所属する吹奏楽部の部員。高校2年。
彼女も過去になにかしらのことがあったようで、基本はあまり喋らないが一部の人には喋ったりする。
しかし、緊急事態になると大声を張り上げたりなどできる。
川本に恋愛中、部長と川本以外は気づいている。
他のメンバーも暗黙の了解でそのことには触れないようにしている。

川本順平(かわもとじゅんぺい):身長:?kg、体重:?kg。
上に同じく吹奏楽部員。高校2年。
柿村とはよく喋り、緊急時には目で会話できるような変な関係である。
真希に絶賛片思い中。


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 7月3日
 

 午前9時30分
 時沢沙耶は待ち合わせ場所であるファーストフード店の1階のテーブルに座っていた。
(はあ、待ち合わせより早く着きすぎちゃったな……)
 楓との待ち合わせは10時、つまり30分も早くついていたのだ。
(とりあえず、まつしかないよね……)
 ヘッドフォンをつけ買った飲み物をすする。


 同時刻、イエローキャラメル
(まち合わせより早く来てみたもののやっぱりいないか) 
 柿村幸平は入口をくぐり店内を見回し考える。
「おひとり様でしょうか?」
 店員が訪ねてくる。
「二人です。もうひとりは後できます」
「では少しお待ちください」
 そういって次の客のところに行く。
(金はなんとかなるかな……)
 重要なことを心配しながら椅子に座る。


 同じく同時刻、商店街のドーナツ屋
 川本順平は待ち合わせより1時間早く来たのだが、すでに待ち合わせの相手坂上真希は川本を待っていた。
「ごめんね、早く来たつもりだったのに」
「いや、私も今来たところだから」
「そう……」
 実は真希は川本が来る30分前に来ていた。
(初めての川本くんとのデート、緊張して早く来ちゃった。なんて言えないよ!)
 心の中ではかなり焦っていた。
「じゃあ、行こうよ」
「そうだね! 行こう!」
(今日、うまくいくよね……告白とかできるかな……いやそんな流れ作ってないし……)
 真希はひたすら混乱していた。

 10時、ファーストフード店
  ギュルギュルギュルッ……
(お腹痛い……楓はまだ来てないし今のうちにいっとこ……)
 荷物をもち立ち上がる。
 病院にいたころほどじゃないのでなんの違和感なくトイレまで歩いていける。
 トイレは時間もあるかもしれないがどの個室も空いていた。
 沙耶は何も考えずに一番手前の個室へ入る。
 今日のために買ったスカートを下痢が付いたらいけないので脱ぐ。
 入院後にかった新しいショーツも一緒に脱ぐ。

  グウォォオゴロゴロゴロゴロゴ〜〜ッッ!!
 だが、いつの間にか中身はかなり荒れ狂っていた。
(痛い! でも間に合う!)
 肛門が便器を捉えると、

  ドボドボドボドボドボドボドボーーーッ!!
  ドボオオボボボボオオオオオオオーーーーーッ!!
  ボボボボボボブウーーーーーーーーッ!!
「はぁ、はぁ」
 入院中に治らなった沙耶のお腹はひたすら痛みを訴える。

  グリュリュリュゥゥゥゥ〜〜〜〜ッ
  ドブボブボオオオオオオォォォッッ!!!
  ブチャブチャボチャボチャボチャブチャーーーッ!!

 このあともひたすら下痢を出し続け、いつでれるのか自分でも予想はついていなかった。


 同時刻、イエローキャラメル
(さすがに遅いな……電話してみるか? いやでない気がするな……)
 四人用席を陣取りカプチーノをすすりながら柿村は考えていた。
(まあ、そのうち来るだろ)
 特に時間を気にしないのでのんびりと待っていた。
 

 同じく、ゲームセンター
 2人は映画を観る予定だったのだが2人とも早く来すぎたのでゲーセンで時間を潰すことにしたのだ。
「……川本くん、あれって取れるかな……」
 真希が指さしたのは可愛いぬいぐるみだった。
「ちょっとまってて、取るから」
 そういって川本は財布を取り出しクレーンゲームと格闘を始める。
  キーーーーン
 特有の音を鳴らしながらクレーンが動いていく。
「いける! いけるぜ!」
「いけるよ!」
 クレーンはぬいぐるみを持ち上げる。
「おお! いけー!」
「いけるよ!」
 クレーンはそのまま取り出し口の上にやってくる。
 クレーンが開きぬいぐるみがおちる。
「やったー!」
 ぬいぐるみを持ち上げ歓喜する。
「ほか、欲しいものある?」
「いいの?!」
 目を輝かせながら顔を近づけて叫ぶ。
「いいよ。俺よくやるし」
「えっと、じゃあね! じゃあね!」
 とテンションMAXであちこちみまわす。
 川本ははしゃいでる真希をみながら微笑む。


 10時30分、ファーストフード店
 沙耶はげっそりした顔でトイレから出てきた。
(ああ、お腹痛い……とりあえず座りたい……)
 お腹を押さえながらもといた席に戻っていく。
 席に戻ると楓が座っていた。
「沙耶、またしてごめんね」
「いいよ、私が早く来たんだし」
「そう、それで今日はどこ行く?」
「えっとね……買い物に行きたいな」
「じゃあ行こうよ」
 そういってテーブルにあったものをゴミ箱に運ぶ。
 
 2人は商店街でも名が通ってる若者に人気の服屋に足を運ぶ。


 11時、部長の家
「ねえちゃーん、今日どっか行くんじゃなかったのか〜」
 弟が部屋に向かって叫ぶ。
「はっ!」
 約束を思い出しベッドから飛び起きる。
「なんで起こしてくれなかったの!」
「起こしたけどおきなかったんじゃねーかよ」
 急いで服を着替える。
 服を選んでいる暇はない、とりあえず着ていけるやつがあればそれを着た。
 顔を洗ったりシャワーを浴びたかったがそんなことしている時間はない。
「いってきます!」
 叫びながら家を出る。
「ねえちゃん、飯は?」
「そんな時間ない!」
 言い返して目的地に走り出す。


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 11時30分、イエローキャラメル
  ガシャーン
 ドアを壊す勢いでドアが開けられ店内にいた人が全員こっちを向く。
 店員は唖然としていたが思い出し、尋ねる。
「おひとり様でしょうか?」
「いえ……待ち合わせです……」
 息を切らしながら答える。
 そのまま柿村のいるテーブルに向かう。
「すまん……寝坊した……」
 店員が持ってきた水を飲んで口を潤す。
「言い訳にしては上出来すぎる内容だろ……」
「本当にすまない……」
「まあ、いいとして頼まないのか?」
「少し待ってくれ……」
 かなり走ってきたのかそうとうしんどそうだ。
(まあ、もう少し待つか……)
 柿村は追加注文したカプチーノをすすりながら考える。


 同時刻、ゲームセンター
「そろそろ昼飯食べに行く?」
「……そうだね……いこうよ……」
 一番でかいぬいぐるみを抱え答える。
 残りの大量のぬいぐるみは川本が持つことになった。
「あと、映画まで1時間か、どこでもいけそうだな」
「私……なんでもいいよ……」
 ぬいぐるみで顔を隠しながら言う。
 隠しているのは顔が赤い。と自覚しているからである。
「んー、なんでもいいっていわれてもなぁ……」
 困りつつ2人はゲーセンを出ようとする。
「あっ……」
 川本の服の裾をつかみ呼び止める。
「ん?」
「あれ……やってみない……?」
 真希が提案したのはプリクラだった。
「俺、やったことないんだよな〜。やり方分かる?」
「……大丈夫……やったことはあるから」
 そういってプリクラへ入っていく。
 さっぱりわからない川本をレクチャーしながらプリクラをとっていく。

「……楽しかったね……」
「初めてとったけどなかなかいいもんだな」
「……時間、あまりないよ……」
「そうだな……昼飯見たあとにするか」
「……うん……」
 2人は目的地である映画館に足を進める。


 服屋
「ねえ、沙耶こんなのどお?」
 楓はとてつもなく派手な下着を見せてきた。
「やめてよ! 恥ずかしくて着れるわけないじゃん!」
「それじゃあ……」
 楓はまた別のものを探し出す。

  グウ〜〜〜ウウウウゥゥグ〜〜〜〜ッ
(お腹痛い……確かこの店にはトイレなかったんだよね……)
 沙耶のお腹はまたもや悲鳴をあげていた。
(楓はどっかいっちゃったし、どうやって店からでよ……)
 自動的にお腹に手が当てられる。
「沙耶! これなんて…… 沙耶! お腹が痛いの?」
 沙耶の異変に気づき駆け寄ってくる。
「……まだ、大丈夫だから……」
「えっとね、ここの店従業員用のトイレがあるからそこかしてもらいな」
「いや、店の人の迷惑に……」
「そんなこと言ってる場合なの?!」
「それは……」
「じゃあ、こっちにきなさい」
 そういって沙耶は楓に連れられ店のトイレを借りることになった。

「ほら、早く入って!」
「わかってる……」
  
  グウゥゥウウウウゥゥ〜〜〜〜〜〜〜ッ
 痛みでいつものスピードで歩けない。
 それでもなんとかトイレに入る。
 漏れないようにうまいこと段を上り、屈む。

  ブピッ!! ボピピピピピピピピッ!!
  ビュルッ!! ビュッ! ビィッ! チュオオォォォッ!
 もう沙耶が意識することなく下痢が飛び出した。
 あと、少し遅かったらと思うとぞっとした。

  ビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチビチ!!!
  ブジュウウウボボボボボボボボボボボボボボ!!!
  ブウウウビイイィィイイィィィーーーーーッ!!

(沙耶、まだ治ってないんだね……)
 楓は店の人にお礼をいって無言で沙耶が出てくるのを待った。


 12時、イエローキャラメル
「よし、もう大丈夫だ。改めて遅れてすまなかった、私のためなのに……」
「もう、気にするなよ」
「なあ、柿村、なぜお前は部活を出ると私への口調が変わるんだ?」
「さあ、俺にもわからない……」
「そ・れ・よ・り、お前まだブラック飲めないの?」
「うるさいな、まだ飲めねーんだよ」
 部長は柿村をおちょくり遊ぶ。
「それで、値段は調べてるのか?」
「私に抜かりはない! 1つ3000円だそうだ」
「やっぱり以外とあるな……」
「頼んでもいいか?」
「どうぞ」
  ピンポーーン
 店の中に甲高い音が鳴り響く。
 すぐに店員が来る。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「えっと、裏メニューの超巨大いちごパフェお願いします」
「……少々お待ちください」
 唖然としたあと急いで厨房の方へかけて行った。
「どうしたんだろうな?」
「普段誰も頼まないんだろ」
「そうか」
 無駄話をしているとさっきの店員が戻ってきた。
「超巨大いちごパフェ今日はまだ誰も注文していないので行けるそうです」
「そうですか……」
「他にご注文は?」
「これ追加で」
「かしこまりました」
 カプチーノ追加、と小声で呟き入力する。
「そちらのお客様は?」
「私は……ミルクティーで」
「かしこまりました」
 またもや、ミルクティーと呟き入力する。
 つぶやきながらというのは新人なのだろうか。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「では、ご確認させて頂きます。超巨大いちごパフェが1つ、カプチーノが1つ、ミルクティーが1つでよろしいでしょうか?」
「はい」
 店員は厨房に戻っていった。
「ここって、ケーキ屋なんだよな……」
「ファミレスみたいってのは突っ込んだら負けのやつだ」
「なるほど、それでそろそろ話してくれないか?」
「何を?」
「お前がパフェを奢るようになった理由だよ」
「気にする必要あんの?」
「一応部長だからな」
「あれはだな……」
「ほら、早く話せ!」
「わかったよ、話すから。
 あの日は時沢さんがお腹を壊していたんだよ、入院の時ぐらいに。
 で、合奏ができるような状態じゃなかったから頼んだわけ。
 実際あの日は練習をちょくちょく止めてたから合奏なんてしたらダメだったかもな。
 まさか、代償がこれになるとは考えもしなかったけど」
「そうか……そういう理由があって……
 よし! パフェは私が自分で払おう!」
「いや、それはいい。一度払うといったからには払わせてもらう」
「でも……」
「いや、女に金をせがるような男になりたくなくて」
「そうか……ならたのもうか」
「まかせろ!」
(はぁ、さよなら俺の諭吉さん……)


 同時刻、服屋
(沙耶、大丈夫かな? あれから30分はたったけど……)
 ノックをしようか迷っているとき、

  ジャアアアアァァーーーーーーーーーッッ
 水の流す音が聞こえ楓が待っていた人物が出てくる。
「沙耶、大丈夫?」
「……大丈夫……」
「大丈夫そうじゃないけど、はいこれ飲み物買ってきておいたから」
「ありがとう……」
 楓にもらった飲み物をもらう、炭酸で体全体がしゅわしゅわするような感触に襲われた。
「楓……ありがとう……もう大丈夫、服見に行こう」
「そうだね! 行こう!」
 そういって2人は店に戻っていった。

「これなんてどうかな?」
「いいんじゃない? でもそんなん見せる人いるの?」
「これからつくるの!」
「楓には無理だよ」
「いったな〜! 沙耶だってどうせできないのに!」
「だから私はそんな服を買っていない」
 楓は沙耶が持っているかごをじっくり見るが反撃できるものが入っていなかった。
「さて、さっさと会計を済ませよう」
「それで、次はどこ行く?」
「時間的には昼ご飯だけど……どうする?」
「おいしいパスタの店を知ってるんだ、そこ行ってみない?」
「パスタか……いいよ」
 2人は会計を済ませて店を出て、パスタの店へ向かう。


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 12時30分、映画館備え付けの女子トイレ
(よし、今から映画、今から映画)
 と真希はなにやら変な暗示を自分にかけていた。
(……のどが痛い……薬持ってきてたよね……)
 真希は2日前くらいから喉を痛めていた。
 そのため今日も薬を持ってきておいた。
(あった、これを……ん? 色が違う気がするけど……まあいっか)
 1つを口に放り込む。
 舐めるタイプの薬だったのでひたすら舐める。
(味は……よくわからないな……いつもと違う……かな、それより早く行かないと!)
 映画のことで頭がいっぱいで冷静に判断できなかった。
 思いもよらないことを巻き起こすとは知らずに。
 荷物をまとめトイレから立ち去る。

「……ごめんね、待たせちゃって……」
「別にかまわないよ、それより行こ」
「うん!」
 2人は映画館へ入っていった。
 悪夢が真希を襲うカウントダウンは始まってしまった……


 同時刻、パスタ屋
 買い物袋を座っていない席において沙耶と楓は向かい合わせに座っていた。
「沙耶、大丈夫? お腹」
「食べる前に聞くことじゃないよ、それ。今はまだ大丈夫かな」
「行きたくなったらすぐに行きなよ。躊躇するくせがあるんだから」
「わかりました……」
「わかればよろしい」
「ねえ……まだ料理来るまで時間あるし、楓に話そうと思うんだ……」
「何を?」
「えっと……昔の話……」
「その内容、話せるの?!」
「1回話したし、それに……私のことを友達って言ってくれる楓には話しておくべきだと思うんだ……」
「じゃあ、聞くよ」
「どこから話したらいいのかな……」

 このあと、沙耶は柿村に話したことを楓にも話した。
 楓は何も言わずじっと聞いてくれた。

「そんなことが……ごめんね今まで何も考えずに接していて……」
「そんなよいいんだよ」
「そうか……だから友達がいないって言ってたんだね……」
「この先も私は……」
「いい! よく聞いて! そんな人たちの言うことなど気にしなくてもいいんだよ!
 私が改めて言ってあげる! 沙耶に友達はいるんだよ! 私が教えてあげる! 友達がどんなものか、認めれば楽しいものだと!」
「楓……」
 泣きそうになる。
「わかった? じゃあ認めてくれる?」
 笑顔で聞いてくれる。
「これが友達ってものなら……」
「教えてあげるよ。これからゆっくりと」
「ありがとう……これからもよろしくね」
「こちらこそ!」
 この時沙耶に初めての友達ができた。

「それで……このあとどうする……?」
「そうね〜プリクラとかとってみない?」
「……なにそれ?」
「知らないの? いるんだね知らない人。
 一言ではむつかしいんだけど……まあ、こういうもんだよ」
 そういって財布からプリクラを取り出す。
「なにこれ! なんかすごい! 撮ろうプリクラ!」
 手にとって見たとたん歓喜の声が湧き上がる。
「でしょ〜撮りに行こうよ」
「行く!」
 こうしてこの二人の次の行き先は決まった。


 同じく同時刻、イエローキャラメル
「すごいな……」
「ああ、これは……」
 運ばれてきたパフェを見て2人とも言葉を失っていた。
 言葉を失うのも仕方ない、なにせ今まで見たことのないサイズだったのだから。
 小学校の頃、掃除の時に水をいれるバケツサイズの入れ物に、これでもか。というくらい山盛りに積み上げられている。
「これで3000円だったらもととれそうだな……」
「ああ、だがこれを食べれるのか!」
 すでにスプーンをもって、目を輝かせていた。
「なあ、柿村! これもうたべていいんだよな!」
「ああ、どうぞ」
「いただきます!」
 そういって、パフェを食べだした。
(さて、こいつは何杯食うんだろうか……)
 金銭問題を真剣に悩んでいた。
 この部長はよく食べる、そのことは柿村もよく知っていた。
 なにせ焼肉食べ放題に行って誰よりも食べ続けるような奴で、
 時間切れを起こしたあともケーキ屋で大量のケーキを奢らせるレベルである。


 1時30分、映画館
  ギュルルルルルゥッ!!
(お腹痛い……映画始まってまだ30分しかたってないのに、なんか変なものでも食べたかな……)
 食べたものをひたすら回想していくがそれらしいものは思いつかない。

  ゴウウウウウゥゥ!!
 さっきよりも強く音が鳴るが、映画の音で周りには聞こえない。
 そろそと真希は我慢の限界を迎えようとしていた。
「……川本くん、ごめんね……ちょっとトイレいってくるよ……」
「ああ、いってらっしゃい。大丈夫?」
「大丈夫……じゃないかも……」
 そういって映画館を出て行った。
 向かう先は最寄りの女子トイレである。
(トイレ! だめだ、あれは男子トイレだ! 女子トイレは……)
 見回すが女子トイレが見当たらない。
(うそ! 入口まで戻らなきゃいけないの? そんなの、間に合わない!)

  グウォォオゴロゴロゴロゴロゴ〜〜ッッ!!
 真希のお腹は悲鳴をあげ、入口まで戻ることを許してくれそうにない。
(こうなったら、仕方ない! 誰もいないことを祈って……)
 そう願い男子トイレに入っていく。
 運が良く誰も中にはいなかった。
 そのことに安堵しつつ一番手前の個室に滑り込む。
(うそ! 洋式! 和式だと思ったのに!)

  クギュルギュルギュルゥゥ〜〜……
「うっ!」
 つい悲鳴をあげてしまう。
 何個隣かわからない和式に移動している暇はなさそうだ。
 真希は仕方なく諦め、洋式に座り込む。

  ブッ!ブチュビチビチビチッ!!! ブリチチッ! ジュボポビビビッ!!
  ヂビチチヂチチチッッ! ブピッビピビチッブリブリビチィィッッ!!
  ブリポジュビヂ! ブピビチブポッ!! ビリビシュリュリュゥーーッ!
 真っ赤に充血した肛門から発射された下痢がとんでもない勢いで便器の中を茶色に染めていく。
(痛い! ほんとに変なものなんて食べてないのに……他に心当たりは……)
 カバンの中をあさり1つのものを見つけ出す。
(これ! まさか! 便秘薬?!)
 それは、さっき飲んだ薬だった。
(確かによく見たら色も全然違うし、味も全く違うかった。なんで気付かなかったんだろ!)

「っふ、ぅぅう……っぅぅぅ……!」
  ドブリボヂャボチャボチャボチャボチャボヂャッッ!!!
  ブバビチビチビチビチビチブボッッ!!! ブジュグジュグジュビチッ!!
  ドボッビブゥーッブビッ!! ブゥーーゥゥウゥゥウウウーーーッッ!!!
 体を蝕んでいた痛みの素を吐き出そうと体は必死に努力しようとする。
 だが、体のこの努力も真希に痛みを与えてしまうのだ。
 今度は体の奥底から全てのものを出そうとする痛み。どちらかというとさっきよりも痛い。
(痛い! 本当に痛いよ! せっかくの川本君との……)
  コンコン
 突然鳴らされたノックにより思考は遮られた。
 真希は女子が入っていることを悟られないようにどうしたらいいかを懸命に考えたが、
 無駄に終わった。
「真希ちゃん? ここにいるの?」
 聞こえてきた声に驚愕しつつ返事をしようと試みる。
「川本くん! なんでここにいるの! 映画は!」

 少し時間を遡り真希が出て言った直後
(大丈夫じゃない、か……映画が無理そうならいっそ諦めてもいいか。あまり面白くないし)
 真希の荷物と自分の荷物をまとめて映画館を出る。
(えっと、女子トイレは……見当たらないな……)
 そこから、女子トイレを探して見つけたのは1階下にある女子トイレだった。
(あそこに行けるわけもなさそうだったし……男子トイレにいるのかな……でも、そんなことは……一応行ってみるか)
 男子トイレに向かうと、

  ジュボポッッ!ビヂブピブピブボボポッ!! プウウゥゥゥゥーーッ!!
  ブジュグジュジュビチッ!! ピブッ! ビビビビビィィィビィッッ!
  ブリビブゥゥブボッッ!! ブジュ!ビチチビチ! ブボボボブボボッッ!! 
 とんでもない轟音が聞こえてきた。
(まじで、ここにいるのか……)
 川本はとりあえずノックをしてみた。

  コンコン
 返事がしばらく帰ってこなかったので、こちらから声をかけた。
「真希ちゃん? ここにいるの?」
 返事はすぐに返ってきた。
「川本くん! なんでここにいるの! 映画は!」
「そんなことより、大丈夫?」
「……大丈夫じゃない……待っててくれる……?」
「トイレの前で待っとくよ」
 そういって川本はトイレを後にした。

(バレちゃったよ! でも、前にもあったことだし……とりあえず)
 真希は下痢をすべて出し切る決断をした。

「……んっぅ!……んんっ!……んふっぅう……!」
  ブビチュチチチュチチュチッ!! ……ブチュチ!ビチッ!!
  ブリ!プビチッ! プチビチプビビヂッ! ピブッ!
 痛みを感じるがそんなもの放っておいてひたすら力む。

「んっぅ……っふ!……くぅんんっっ!」
  ボブチュッ!! ブリッ! ブボビブブビブピィィーーーーッ!!
「……はあぁぁぁ……ぁぁ……」

(まだ、まだある……)

  ……ギュゥゥゴロゴロゴロゴローーーッ……
「ぅく……っ……うぅ……」
  ビィッッ! プリプリプリブリッ!! ビュチュビビヂヂヂビチブジュッ!
 
「はっ……ふっぅぅう……っう……!」
  ブリッ!ブビビビビブリッ! ブリュビヂッッ!! プスプスピブゥッ!
  ブリブリブリビュリュッ!! ブオッ! ブビビビビビブオッッ!!
  プゥーーブビブビブピーーッ! ……ピブッ!ビチビチチチッ!ブチュッ!

「はぁー、はぁー、はぁ……、……ふぅぅ……っう……うっんんぅ……!」
  ビチビチビチブリッ! ジュボボッ! ビジュビビィィィィイイィッ!
  ブジュボブボッ!プビッ!トントンッ……ポチャ……、ポチャチャ…………

 ひたすら出し切ろうと必死に力む。


 同時刻、ゲームセンター
「沙耶、もうちょいこっちによって」
「あ、うん」
 などプリクラの機械の中でなにやらはしゃいでいた。
「次はこんなポーズしてみて!」
「こう?」
「違う! ここがこうで、ここがこう! そうそうそんな感じ」
 一通り写真を撮り終え、落書きに入る。
「楓……ここは任せるよ……」
「沙耶もやりなよ、案外楽しいよ」
「やり方がわからない……」
「ここをこうやって……」
 楓のプリクラレクチャー兼落書きが始まった。

 このあと、プリントされたプリクラをみながら沙耶はにやにやしていた。
「どうしたの沙耶? そんなにやにやして」
「いや、嬉しくて……こんなこと一度もなかったから……」
「そうなんだ……」
「それでこれからどうする?」
「おいしいケーキ屋さんを知ってるんだけど……行く?」
「ケーキか、いいね! 行こ!」
 2人はケーキ屋に足を向けた。


 同時刻、イエローキャラメル
「ほんとによく食べれるね、それ」
「わはしの、ひふふろは」
「飲み込んでからおしゃべりください」
 ゴクン。と本当に飲み込む音が聞こえた。
「私の胃袋はブラックホールなんだよ。なんでも入るよ」
「宇宙のゴミを入れてみたいもんだ……」
 このあともパフェを食べ続け2つめをなに食わぬ顔で店員に頼んでいた。
「1つじゃないの……」
「私は食べ放題と思ってきたんだけど、だめかな?」
「別にかまわないよ……」
 もう、目を合わせられなくなり外をみだした。
(ん? あれは、霧宮と時沢さん? まあいるのは不思議ではないよな)


 2時、映画館
 真希は30分こもってすべてを吐き出してきた。
「お腹痛い……」
 お腹をさすりながらトイレから出る。
「おつかれ、これ」
 ジュースが渡される。
「ずっと待っててくれたの?!」
「ジュース買いに行ったりしたからずっとってわけじゃないけど……」
「そうなんだ……ありがとう……」
「さて、もうここ出るか」
「えっ、映画は?」
「見たかった? なら戻るけど」
「いや、川本くんは見たくないの?」
「別にあまり面白くなかったし」
「そう……じゃあどこ行く?」
「じゃあ、知り合いがいるケーキ屋に行ってみる?」
「ケーキ屋か……そこおいしい?」
「うん、味は確かだから」
「……案内お願い……」


 2時30分、イエローキャラメル
  チリーーーン
 高いベルの音色が鳴り響く、客が来た証拠だ。
「お客様何名でしょうか?」
 若い店員が尋ねる。
「えっと、2人です」
「あれ? 楓ちゃんじゃん。久しぶり、今日は食べに来たの?」
「私一応客だからその言葉遣いはやめたほうがいいよ」
「ごめんね、では」
 ゴホン。とわざとらしく咳込み、
「少々お待ちください」
 そういって奥へ消えていく。
「……楓、あの人知り合い……」
「私が常連だから顔を知られてるだけ」
「……そうなんだ」
 さっきの店員が戻ってくる。
「それではお客様こちらへ案内いたします」
「絶対ふざけてるよね、それ」
 楓の言葉を無視して座席に案内する。
 ここもファミレスのようなテーブルで4人用だ。
 その奥側に荷物を置き手前側に2人が座る。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「絶対わざとだろ!」
 店員はにやにやしながらレジの方へ行ってしまった。
「……楓、おすすめとかある? こんなに種類があるとわからない……」
「そうだな……ここはチーズケーキが美味しいんだよ」
「……じゃあ、それで」
「沙耶、大丈夫? 顔色悪いけど」
「大丈夫だよ……」
 ここのケーキ屋に来る前に沙耶はコンビニのトイレを借りている。
 そこでも服屋レベルの下痢を吐き出していた。
「そう、食べれる?」
「食べれるよ」
「じゃあ、頼もうか」
「待って……飲み物」
「紅茶飲めるならミルクティーオススメだよ」
「じゃあ、それで」
「飲めるんだね」
「紅茶は……大丈夫」
「コーヒーダメな人?」
「うん」
  ピンポーーーーン
 店中に音が鳴り響く。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
 さっきとは別の店員が来た。
「私はいつものやつで、この子はチーズケーキとミルクティー」
「かしこまりました。それではご注文繰り返させていただきます。
 いちごのタルトとドリンクバー、それとチーズケーキとミルクティー。
 ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「はい」
「では少々お待ちください」
 店員は厨房へ消えていった。
「……楓、ドリンクバーなんてあったの?」
「あるけど、元取るにはかなり飲まないといけないんだよ」
「……どれくらい」
「ざっと10杯ぐらいだったかな」
「……それじゃあ無理だね……」

  グギュルルグウウウゥゥ……
「!!」
 咄嗟に沙耶の右手はお腹に移動する。
「トイレはそこ!」
 そういって、トイレを指差す。
 沙耶は何も言わずに席を素早く去った。
(沙耶、間に合ってよ)
 楓は何もできずにただ席で祈った。

(早く! 間に合う!)
 トイレのドアを開ける。
 女子トイレに向かい開けようとする。
 だがそこで音が聞こえた、沙耶がよく聞く聞きたくない音。

  ブビビビッ!! ブビーービピピビビポチュブピピッ!!
  ブリブリビビビビビーーーーッッ!! ブオッ!!
(うそ! 誰か下痢してる……)
 この店には女子トイレが1つしかなく1つが埋まってしまえば終わりなのだ。

  グゥゥ〜〜ゴロゴロゴロゴロ〜〜
(まだ、我慢できる……席に戻ろう……)
 お腹をさすりながら先へ戻っていく。
「沙耶、どうしたの? 早すぎない?」
 帰還が早すぎる沙耶に楓は驚く。
「前の人が……使ってて……その人も、酷くて……」
「ちょっとまってて!」
 そう言うとレジの方へ行き、さっきの店員と何かを話している。
 そのあと、楓が店員と一緒に戻ってきた。
「あの、こちらに従業員用トイレがあるのでこちらへ!」
 そういと案内を始めた。
 限界を迎えている沙耶にとってそれは救いでしかなかった。
「頼むよ」
「任せて!」
 そう言うと沙耶は店員と一緒に奥へ消えていった。

「あの、もうちょっとでつくので我慢できますか?」
  
  グピ〜〜……グキュウウウゥゥ〜〜……
「……大丈夫です……」
 かろうじて返事をする。
 店員は歩くスピードが遅れている沙耶に合わせる。
 店の奥の扉など先回りしてすべて開けてくれた。
「あの、扉です!」
 そういって、2メートル先の扉を指さした。
「……ありがとうございます……」
 そのまま、トイレに向かって歩く。
 だが、ここでも運命は沙耶に試練を与える。
 トイレの鍵の色は赤。つまり使用中である。
(うそ……ここまできて……)
 沙耶の心は折れそうになる、そこへ。
「すいません! 早く変わってくれませんか! 大変な子がいるんです!」
 さっきの店員がノックしながら叫んでくれた。
「はいっ! 今すぐ出ます!」

  ジャアアアアァァァーーーーーーーッッッ……
 すぐに水の流れる音がして中の人が出てくる。
 中にいたのは沙耶と同い年ぐらいの子だった、が沙耶はその子を見ている暇などなかった。

  ガチャン!
 乱暴にドアを閉め鍵をかける。

  カサカサカサ
 かなり急いで履いているものを下げる。
 出ないように気をつけながら和式便器を一段登る。

  ブリュブリュブビビビビビィィィーーーーーッ!!
  ブビチビチビチブポッ!! ブジュポブビビブピピビビビビッ!!
  ブビッッ!! ブリブリブリブリブリブピッ!

 またいだ瞬間にものは出てきた。

 2人の店員は唖然としていて、一瞬なにが起きたのかわからなかった。
 沙耶をここまで案内した店員が口をわる。
「あの、ここしばらく使わないように言ってくれるかしら。
 あのこも恥ずかしいと思うし」
「わかりました、厨房にはそう言っておきます」
 そういって2人の店員はトイレを後にした。

「ぐぅぅぅぅっ!」
  ブジュビーーッ!! ジュボボボボブビーーーッ!

  グギュルルグウウゥゥゥッ!
「っぁ、ぁぁっぁ……」
  ブピッ! ブビビピピピピピピッ!
  ビジュボポポポッ! ブポジュルルビチュビチビチチチチッ……ッ!

 沙耶は顔を青くしてひたすら下痢を出し続けた。
(痛い……早く治らないかな……もう、こんな痛いのやだよ……)
 当たり前の願望を心の中で呟く。

  グウウゥゥゥゥッ!
「ぅぅっ!」
  ブジュジュッ! ブビチビチビチーーーーッ、ブビッ!!
  ビリュジュゥゥーーーーーーーー、ブポッッ!

 このあと、沙耶はしばらく出てこれなかった。


 沙耶がトイレに行く数分前、イエローキャラメル
「おい、部長それ何個目なんだ?」
 柿村が呆れて質問する。
 質問に答えるため口にあるものを飲み込む。
「そこのバケツを数えればいいじゃないか? それとも数えられないのか?」
 そう言いながらもスプーンで中身をすくっていく。
「わかってて言ってるんだよ」
「はは、ほうは。ひはみは」(はは、そうか。いやみか)
「中身を飲み込んでから喋れ」
 そこで異変が起きた。
 唐突に部長がスプーンをテーブルに置き、右手はテーブルの下に隠れて、
 顔が歪んだ。
「大丈夫か!」
 柿村が立ち上がり駆け寄る。
 右手はお腹に当てられており、お腹を壊したことは言うまでもなかった。
  
  ギュルルルルルルルル〜……ギュルギュルギュルギュルッ……
「すまん、ちょっとトイレに……」
 そういってゆっくり立ち上がりトイレに向かう。
(痛い! 腹を壊すなんて入院ぶりだぞ。まさかまだ治ってなかったのか!)
 勝手に病気のせいにしてトイレに向かう。

 運良く女子トイレは空いていた。
 そこへ滑り込むように飛び込む。
 適当に履いてきたジーパンとショーツをおろし便座に座り込む。
 座り込んで数秒もせず、

  ビチビチビチビチビチビチッ!!
  ブリュブシュシュシュシュシュッ!!
  ブビビビビビブリリリブビュブビュブビュッ!!

 もう、前にかがみひたすら中身が出尽くしつのを待つ。
 肛門に力を入れずとも出てくれるのでそこは楽だが、痛みが尋常じゃない。

  ビチビチビチビチビチビチッ!!
  ブリュブシュシュシュシュシュッ!!
  ブビビビビビブリリリブビュブビュブビュッ!!

(痛い! 変なものを食べた覚えなんかないぞ!)
 自分が今まで食べていたものはさっぱり頭の中にはなかった。

  グギュルルルルゴロロロロッ!! ゴロロロログルルルッ!!
  ブビビビビビブリリリリリリッ!!
  ビチビチブジュビィィィィッ!! ブリュッッ!!

 いつ終わるかわからない地獄に苦しみ続けることとなる。


 部長がトイレに立ってすぐ、イエローキャラメル
(食べ過ぎ、それに冷やした。か……)
 柿村は積み上げられたバケツ(のような入れ物)を数えながら考えていた。
(まあ、旨いのは事実なんだろうがこんなに食べれるもんなのか?)
 ぼーっと考えながら外を見る。
(柿本と坂上みないなぁ、この商店街にいるはずなんだがなぁ)
 この商店街にいるはずの2人のことを考える。
  バンッ!!
 それすらも忘れさせる音が突然聞こえた。
「ねえ、なんで柿本が部長と一緒にいるのよ!」
「説明しなきゃダメか?」
 めんどくさそうに答える。
「まあ、答えたくなきゃいいけど。それよりまだブラック飲めないの?」
「またそれか。いちいちそれ言わなきゃ気がすまないのかよ」
「まあ、いいよ。それより」
「わかったよ、話せばいいんだろ」
「先週の金曜日、合奏が中止になったのは覚えているか?」
「ああ、珍しく部長が気が乗らない、っていったあの日のことね」
「あれ、俺が頼んだ。その対価がこれ」
 と言ってバケツ(のようなもの)、[以下バケツと表す]
 指差す。
「あの日って、まさか!」
「そのまさか」
「沙耶には言わない方がいいわね」
「もちろん」
「あんたってほんとにやさしいんだよね」
「自覚はないんだが」
「さて」
「なぜ椅子に腰掛ける?」
「いいじゃない別に」
「良くはないと思うぞ、自分の席に荷物もあるんだろ」
「大丈夫、ここの店員は見ててくれる」
「はあ、お前ってなんなんだよほんとに」
 くだらん話を始める。


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 沙耶と部長がトイレに籠っているころ、商店街道路
「真希ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫だよ」
「そう……」
 心配そうな顔で見つめる。
「そんな見つめられても……」
「ごめん」
「……じゃあ行こうよ」
「えっと、そこなんだけど……」
 そういってすぐ右を指差す。
「……入れるかな?」
「さあ、わからないけど」
  チリーーーン
 客が来たのを知らせる音が鳴る。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「2人です」
「では、こちらへどうぞ」
 店の奥の方へ案内される。
「「あ」」
 柿村たちとすれ違い声をあげる。
「あれ、楓この2人知り合い? 奥の大部屋貸そうか?」
「店員らしく言えないの?」
「すいませんお客様、奥の大部屋に案内しましょうか?」
「それはそれでなんか微妙だな……」
 話についていけない3人は疑問符を浮かべて黙り込んでいる。
「トイレに2人行ってるからそれ待ってから案内してくれる?」
「わかりました。お荷物をここに持ってきましょうか?」
「ああ、お願い」
「了解いたしました」
 そういって店員は楓の荷物をこっちのテーブルに持ってきた。
「さすがに4人+荷物は狭いな……」
「……川本くんそこは気にしちゃダメ……」
「霧宮、あの店員は知り合いか?」
「私はここの常連だから店員たいてい知り合い」
「どんだけ来てんだよ……」
 そこへ、顔面蒼白の2人が帰ってきた。
「あれ? なんでみんなが……」
 かなりやられているのか部長の口調が穏やかだ。
「……部長とは、そこであったの……」
「店員に奥の部屋すすめられたから、そこ行く? あそこみんなは入れると思うんだ。」
「ほんとに何回来てんだよ……」
「行くか……」
 結局部長の一言で行くことになった。


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「結局、このメンバーで集まるんだな……」
「……仕方ないよ、そういう運命なんだよ……」
「ほへへ、ほはへらは」
「飲み込んでからしゃ喋れ」
「沙耶、大丈夫? お腹」
「……大丈夫だよ」
 この部屋に来て30分は経つが部長は未だにパフェを食べている。
「偶然って起こるもんだなあ、てかいつまで食べるの」
「食べられるだけ」
「部長、そろそろやめてあげなよ。柿村がかわいそうになってくるから」
「いや、こいつがいつでもいいっていうから」
「……部長、限度ってもんがあるから……」
「そうか……ではこれの次で終わりにしよう」
「はあ……」
「柿村、落ち込まない落ち込まない」
「半分出してくれよ」
「やだよ、お前が出せよ」
「はぁ」
「わかったよ、そんな目で見んなよ。この前の貸しを返すってことで1個分な」
「せんきゅー」
「店員さーん、パフェもうひとつ〜」
「……ちょっとトイレ行ってくる」
「沙耶、立てる?」
「大丈夫……一人で行ける」
「いってらー」
 沙耶は1人トイレに向かった。
 トイレのドアは赤になっていた。

「ぅぅっ!」
  ブジュジュッ! ブビチビチビチーーーーッ、ブビッ!!
  ビリュジュゥゥーーーーーーーー、ブポッッ!
 なかから沙耶が予想してなかった音が鳴り響いていた。
(この人も……! 大丈夫まだ、我慢できる)
 我慢を決意した。
「あれ? 沙耶ちゃんだっけ? どうしたの?」
「あ、どうも」
 さっきトイレに案内してくれた店員が声をかけてくれた。
 距離が遠いためか前の人が下痢であることには気づいていないようだ。
「ん? トイレ? 従業員用使う?」
「まだ、大丈夫です……」
「だめそうなら声をかけてくれたらいいよ」
「ありがとうございます……」
 笑顔を浮かべてその店員はどこかへ行ってしまった。

「ううぅぅぅ……っ!」
  ブリブリブリブリブビッ!!
 行った後も音が鳴り響いていた。
(この人、大丈夫かな?)
 自分より入っている人の心配をする。

 5分後
  ジャアアアアァァァーーーーーーーッッッ……
 待っていた音が聞こえ制服を着た学生が出てきた。
 お腹をさすりながら顔が青い人がいてかなり驚いているようだ。
「えっと、大丈夫ですか? 私のせいで、えっとすいません!」
「いえ、大丈夫です……」
「あの、これどうぞ。よく効きますよ」
 そういって下痢止めを渡された。
「ありがとうございます……」
 そういって沙耶はトイレに入っていった。

  ブピッ! ブビビピピピピピピッ!
  ビジュボポポポッ! ブポジュルルビチュビチビチチチチッ
 音が鳴り出したのは直後だった。

 同時刻、奥の部屋
「ちょっと、トイレ……」
「真希ちゃん、ここのトイレひとつしかないんだ、ちょっと待ってて」
 楓はそういうと部屋を出て行った。
 
 しばらくして帰ってきた。
「真希ちゃん、こっち来て」
「トイレは1つしかないんだよね……」
「従業員用貸してもらえることになったから」
「そう……」
 そういって2人は部屋を出て行った。
「なあ、真希ちゃん間に合うよな!」
「心配するな、あんなことは二度と起こさない」
「飲み込んでから喋れっての」

「真希ちゃん、大丈夫?」
「……まだ大丈夫」
 心配しながらトイレに向かっていく。
「ここ! 早く入って」
 無言で入っていった。

  バタン!
 壊れるような音が鳴らされドアが閉じられる。

  ブリュブリュブビビビビビィィィーーーーーッ!!
  ブビチビチビチブポッ!! ブジュポブビビブピピビビビビッ!!

 音が聞こえてきたのは布を下ろす音が聞こえた直後だった。
(真希ちゃん間に合ったよね……あんなこともう起きないよね……)
 楓は心配しながら真希を待つ。

 その約五分後、お客様用トイレ
 げっそりした顔で沙耶がトイレから出てきた。
「あの……大丈夫ですか?」
 さっきの制服をきた少女が待っていた。
「え! 待っててくれたの?」
「私、そこの中学に通うものです。大丈夫でしたか?」
「……大丈夫だったよ。ありがとう」
「そうですか、改めて私のせいですいませんでした」
 きっちりとお礼をされる。
「そんなことしなくても、顔を上げて!」
 その子は別の理由で顔を上げた。

  グキュルゥゥグウウゥゥゥ〜〜ッ
「大丈夫! これ返すよ! 私持ってるから!」
 さっきもらった下痢止めを返す。
 無言で受け取り個室へ突撃する。

  ブボポブピピビチビチビチビチビヂブパッ!!
  ジュドポブピビビビビピビビビビッ!!
 入った直後に音が鳴り響いた。
(あの子大丈夫だよね……)
 心配しながら部屋に戻っていく。

  この後、奥の部屋
「はは、ほはへり」
「だ・か・ら、口の中のもの飲み込んでから喋れっての!」
 部屋の中には楓と真希がいなかった。
「ただいま……」
「もどったか、まあ席についてくれ」
 さっきまで座っていたところに座る。
「少し話があるんだが、真希と楓が戻ってから話そうと思うんだ」
「はい……」
「そう、真剣にならないでくれ。大した話ではない」
 川本はそろそろ眠いのかソファーに横になって寝ようとしている。
「寝るな」
「まだ寝てない〜」
「殴ったほうがいいか?」
「起きます!」
 柿村に半分脅され即座にきちんと座る。

  その10分後
「たっだいま〜」
「ほはへり」
「毎度言わせるな!」
「真希ちゃん、大丈夫?」
「……大丈夫だよ。ありがとう、川本君」
「沙耶戻ってたんだ、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
 2人が席に座る。
 カラン。という甲高い音を立てスプーンを空のバケツに突っ込む。
「はあ、これでおわりか〜」
「本題に入れっての」
「まあ、私が悪かった。本題に入ろう
 さっき電話があってだな、まあ顧問からだ。
 夏休み入ってすぐにあるこの商店街の夏祭りに出ないか? という話があってだな。
 オファーってやつだ」
「……それって……」
「ああ、吹奏楽部は私たちだけだ」
「……それなら、いいかも……」
「さて、ほかの人はどうだ?」
「俺は多数派でいいぞ」
「俺は真希ちゃんがいいなら」
「川本、それそろそろ危ないよ。私も参加で」
(みんな参加だよ! どうしよう、緊張とかしたら絶対お腹壊すよね……でも出てみたいし……)
「時沢さん、どうしたの? 出たくないなら出たくないって言っていいんだよ」
「いえ! 出たいです!」
(しまった、思わず返事しちゃったよ!)
 沙耶は中学時代一度も本番に出ずにやめてしまっている。
「全員参加か、まあ私も出たかったらいいだろう」
(いいよね、初めての本番か……わくわくする!)
 結局沙耶はプラス思考に落ち着いた。
(本番か……久しぶりだな……あれもいないことだし楽しくやれそう!)
 真希は内心とても喜んでいた。


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「さて、私は目的のものを食べたから帰るとするか」
「あれ、部長もう帰るの?」
「もう食べられないらしいしな」
「じゃあ、俺も会計を済ますか」
「ほい、柿村これ」
 といって3000円を渡してきた。
「ありがと、今度飯でもおごるよ」
「コンビニのなんかでいいよ」
 そんな会話をして部屋を出て行った。
「沙耶、この後どっかいく?」
「いや……いいよ。行くなら楓に任せるよ」
「じゃあ、沙耶の家に行こうかな〜」
「えっ! なんで!」
「いや、行った事ないから一度行ってみたいな〜。とは思ってたから」
「まあ、いいよ。断る理由もないし、家のほうが落ち着くし」
「じゃあ、行こう!」
 そういって2人も出て行こうとする。
「あ、この部屋ルーム料金とかないから大丈夫だよ〜」
 そう言い残して出て行った。

 レジにて
「あれ? 柿村支払いまだだったの?」
「うるさいな〜額が大きいんだよ」
 部長は先に帰ったのかもういない。
「それ私も出そうか?」
「いや、もう払っておつり待ち」
「おつりは1000円になります」
「ありがと」
 もらった1000円を財布に入れる。
「柿村、あの2人ヘルプする?」
「しとかないと、何もしないだろ」
 そういって柿村は店を出ながら携帯をいじり始めた。
 楓も携帯を取り出しいじりだす。 
「それじゃあ楓ちゃん支払い二人まとめてでいいの?」
「いや、個別で。って言葉遣い直しなさいよ」
「もういいじゃん、店長にも怒られなかったし」
「まじで?! 怒られなかったの?!」
「うん、楓ちゃんならいっか。って言ってた」
「じゃあいいや」
「じゃあ、支払いよろしくね」
「はいはい」
 慣れた手つきで支払いをしていく、そのあと同じペースで沙耶も支払いを終わらせる。
「楓ちゃん、あの部屋に男女2人だけど大丈夫?」
「ああ、あの2人なら大丈夫だよ。心配はいらない」
「そっか、まあ店でするひとなんかいないもんね」
「そういう意味じゃなくて、あの2人は度胸が少なすぎるんだよ」
「へえ〜」
「……楓、何の話?」
「いや、なんでもない。いこ!」
 そういって2人は店を後にした。

 奥の部屋、
(やばいよ! 部屋に2人っきりだよ! どうしよう! 告白するなら今かな! でもそんなことしたら……)
 坂上真希は混乱していた。
(やべーよ! 2人きりだよ! どうしたらいい? だれかヘルプ!)
 一方の川本順平も混乱していた。
  
  チャララーーン
 2人の携帯が同時になる。
 2人はすがるように携帯を見る。
 そこに書いてあったのは
『こくれ』
『告白しちゃいな』
 柿村と楓からのヘルプメールだった。
(いいのかな? しちゃって。 きらわれたりしないよね……だめだ緊張したらお腹痛くなってきた……)
(告白、するか? いや今するべきなのか? だめだ考えがまとまらない)

「「ねえ」」
 2人は同時に声を発した。
「いや、真希ちゃん先に……」
「川本君がさきでいいよ……」
「えっと、……」
 
 このあと実に5分くらい無言が続いた。
「その! 真希ちゃん! 好きだ! えっと、うまくいえないけど付き合ってください!」
「えっ……」
「だめかな……?」
「いや、私が言おうと思ったのに……」
「ごめん、って。えっ!」
「そうだよ! 私も好きだよ! あんなことがあってそのたびやさしくしてくれてどんどん好きになっていった! もう自分でもわからないんだよ!」
「……ありがとう、俺も好きだよ」
 そういって顔を真っ赤にしてる真希を抱きしめた。
 
 真希は泣いていた。だがそれは悲しいからではなくとてつもなくうれしかったから。



<あとがき>

 はい、第4作目となりますみそかつです。

 思いっきり恋愛を突っ込みました。まあ当初の予定からこの2人はくっつける予定だったので、
 あまり不快はありません。

 1つ前から微妙に触れつつある初期メンバーの過去ですが、今回も思いっきり触れています。
 この話はいつかやります。今のところ予定はありません。
 夏祭りの話しあたりにでもいれたらいいのかな?
 過去を話してから2人をくっつけるべきだったかな?

 柿村は恋愛に走らせるつもりはありません。興味ないという設定です。
 まあ、彼自身も過去がありそのせいでってのもあるんですが。

 さて、次回は! 
 新キャラを出す予定です。
 そろそろキャラは固定しないと区別がやばいです……
(すでに、真希と沙耶の区別がやばい……)
 まあ、その新キャラは初期メンバーと深いかかわりをもつ人物の予定です。

 シリーズタイトルですが、引き続き募集します。
 他にも主人公たちの通う学校名や、他名前の付けたいものがあればBBSに書き込んでください!
 返事待ってます!


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