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ある日の小学校の帰り道、様子のおかしい女性とすれ違った。
真面目そうなショートヘアで地味な制服に身を包んだ、ごく普通の女学生である。
しかし僕は彼女から目を離すことができず、すれ違い様に彼女を凝視し、その後も振り返って見つめ続けた。
彼女は青ざめた顔で歯を噛み締め、腹をくりかえしさすりながら、ひどく内股で歩いていた。
すれ違う時の彼女は、切羽詰った瞳でただ正面を睨んでいた。額に汗がびっしりと浮かんでいた。
すれ違ってすぐに、濃密な異臭が鼻をついた。
卵の腐ったようなおならの臭い。しながら歩いているらしい。相当やばい状態のようだ。
彼女の後姿は二回立ち止まり、そのたびにおしりを押さえてへっぴり腰になり、けわしく体を震わせた。
二回目の後、彼女は急に足を速めたかと思うと、いなや右を向きどこかへと入っていった。
窮まった横顔。
強い違和感を覚え、僕はすぐに追いかけた。
見ると、そこは小さな駐車場だった。
息を殺して中に入ると、ブリブリビチビチという激しい音が奥の方から聞こえてきた。
胸がひどく高鳴った。
片側のいちばん奥が空いていて、大型のトラックがその空間を隠している。
近づくと、乱れた吐息が混ざり始めた。
いけないと思いつつも僕は取り付かれたように歩み寄り、トラックの反対側にしゃがんで下から彼女を覗き見た。
汗だくのおしりがぶるぶると震えながら、下痢便を地面へと叩きつけていた。
爆音と共に、むき出された尻肉の間から粥状のものがくりかえし吐き出されてゆく。
合間には茶色くぬめった肛門がひくひくと生き物のように収縮する。
ときおり巨大な放出音が鳴り響き、充血した粘膜がめくれながら噴霧する。
細い足はがくがくと痙攣し、放屁のたびに固く強張っていた。
車体越しに漂ってくる強烈な悪臭。ふうふうとえずくような激しい呼吸。
自らが生み出した汚物の渦の上で震えている、白く清楚な少女のおしり。そしてまた滝のような噴出。
……物凄い光景だった。
女学生は野糞の真っ最中であった。下痢でもう、どうしようもなかったのだろう。
白昼に尻を出して必死にふんばっている年頃の女性の姿に、僕は異様な血のざわめきを覚えていた。
やがて鞄からポケットティッシュを出して尻を拭き始めたので、僕は慌ててその場を去った。
電柱の陰に隠れて様子を見ていると、すぐに彼女は駐車場から出てきた。
ゆでだこのように顔を赤面させ、唇を噛み締めうつむいていた。水を浴びたように汗を流していた。
早足で出てきた彼女は、道路に出るなり全力で走り去っていった。
後姿が消えるまで見つめ続けたのち、彼女の出したものを間近で見たいという強い衝動がわき起こった。
だがそのとき、黒い車がゆっくりと走ってきて、駐車場の奥へと入っていった。
僕も逃げ出した。
願いはかなわなかった。
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あれから僕は、駐車場を見るだけで興奮するようになってしまった。
やがて、暇を見つけては駐車場に身を隠し、何かを期待するのが趣味となった。
その日も僕は目的地に早く着いてしまったので、駐車場の奥で車の陰にたたずんでいた。
向かいはあの時のように空いていて、道路からは死角になっている。
しばらくして時計を見ると、予定の時刻まであと十分だった。
今日もやはり何も起こりはしなかった。
結局、この趣味を始めてから一度もあのような光景には巡り合えていない。僕はすでに大学生になっていた。そろそろ潮時かもしれない。静かな空間を見つめながら、小さくため息をつく。
そのとき、真っ青な顔をした少女がものすごい形相で駆け込んできた。
窮まった瞳で唇を震わせながら、尻を押さえて突撃してくる。
めまぐるしく左右にねじれる首。まさかと思う間もなかった。
スペースへと飛び込むや、鞄を投げだしスカートをはね上げパンツを猛烈につかみ下ろす。
ブボオッッ!!! ブリブリブリブリブリブリブリ!!!
激しく隆起した肛門が露出した瞬間、それは爆発に包まれ土石流を噴出していた。
茶色い飛沫が盛大に弾け、中腰の尻からアスファルトへと下痢便の滝が一直線に打ち付けられる。
ブリブリビチビチビチビチビチビチビチビチ!!
ビチビチビチブボボボボボボボボッ!!
ブウウウウウウブリブリブリブリブリブリブリッ!!
少女はそのまま崩れるように膝を折り肛門を地面へと向けた。
真っ赤に膨れあがった排泄口から張り裂けるような勢いで軟便が溢れ出し、震える尻の下に広がってゆく。
相当長く我慢していたのだろう、激烈に排便をする汗だくの尻は大噴火の最中にある火山のようだった。煮えたぎった泥とガスが次々と爆音を轟かせ溢れ出してゆく。
ブピッ!! ボトボトボトボトボトッ!!
ビヂビヂビヂビヂビヂビヂビヂビヂビヂ!!
少女の脚は目に見えて痙攣していた。その間に茶色い泥の山がうず高く積みあがってゆく。
半脱ぎのパンツには大きな黄色いしみができていた。もう、どうしようもなかったんだろうと思った。
ブビーーーーーーッ!!
さなか少女は放屁した。泥飛沫が直下一面に炸裂し、瑞々しく張った清楚な尻に自らの汚物が派手に飛び散る。
ボピッブピピピピピップピッ!!
直後、少女は糞を垂れ流しながら、しゃがんだ姿勢のまま足をすって体をより奥へと隠した。
噴出が途切れるや腰を上げて向きを百八十度変え、入り口の方を睨みつける。そして再びしゃがみこむ。
少女は歯を噛み締め鬼の形相で、激しく腹をさすり始めた。
肛門が突き出て震えているのが見える。少女は品のある整った顔立ちをしていたが、今は直視できなかった。
ぬらつく太ももが大きく開かれ、恥ずかしげに毛の生えた陰部がはっきりと見えてしまっていた。
ブウーーーーーーーーーッッ!!
その底から巨大な放出音が鳴り響く。
少女の顔は燃えるように赤熱していた。焦りと脅えと苦しみが混ざり合い、可憐な相貌は醜く野卑に歪んでいた。
八の字に震える眉。顔中に刻まれた皺。滝のように流れる汗。覗きがばれたら殺されると思った。
ビヒイイイイイイィィィッッ!!
ブブブブ!! ボッ!! ブッ!! ブヒッ!!
パンパンに充血した肛門から搾るようにガスの塊が投下され、下劣な音が連続する。
むき出しの歯がえぐれ合い、ひくつく粘膜が苦しげによだれを垂らす。
ドビヂビチビチビチビチビチブーーーーッッ!!!
形相が極まった瞬間、大噴出が起こった。
全身が激しく強張り、猛々しく開いた尻から下痢便の洪水が撃ち放たれる。
脱さんばかりに盛り上がった肛門から垂直に叩き付けられ、直下を埋め尽くす汚泥の海。
……彼女はこれを出したかったのだ。
ブウウウウウゥゥゥゥゥーーーーーーーッッ!!!
続けざまに、そのままの形の肛門から尻の爆ぜるかのような轟音が溢れ出す。
肥溜めに吹き付けられる大量のおなら。それはどうしようもなく排泄だった。狂おしい何かが沸き上がるのを感じた。目に映る光景のあまりの情けなさに、僕は身を震わせていた。
ブジュ! グジュ! ブポッ!!
わずかな硬直の後、ガス欠のような音と共に少女の腰から力が抜けた。
大口を開けて息を吸い吐きすると、少女は即座に鞄を引きずりよせてティッシュを出し肛門を拭き始めた。
物凄い勢いで紙がつかみ出され、尻の底にこすりつけられてゆく。
相当汚れていたようで、十枚以上のティッシュが費やされた。
後になればなるほど少女の瞳は悲愴を増し、拭くたびに面を睨みつけていた。
終えた少女は目にも留まらぬ速さで下着を引き上げ、焦点の定まらぬ瞳で走り去っていった。
去り際に自分が作り上げたものを一瞥した彼女の目は、怒りにまかせて人を殺したあとの衝動犯を思わせた。
近づくと、鼻の曲がるような悪臭が漂ってきた。事実が肉を帯び、全身の血が沸騰する。
下痢便の海と化したスペースを、僕はまじまじと見つめた。
これでもかとばかりにぶちまけられ、隣の車のタイヤにまで飛び散っているドロドロの未消化物。
茶色く塗り付けられた面をみじめに晒している、投げ出されたティッシュの山。
……腹下し。少女が家まで留めておけなかった腸の中の地獄。
結果、彼女がトイレにしてしまった駐車場の一角。野糞という最終手段。
少女は普段は清楚で、年頃のはずかしみに満ちていることだろう。しかし下痢という悪魔が彼女を狂わせたのだ。こんなものが腹の中で暴れまわっていて、どれほどの苦しみを味わっていたのか想像もつかない。
少女が使ったティッシュは、薄いピンク色で可愛らしい動物のキャラクターが描かれたものだった。
それらは、べっとりと顔や体を汚物に埋められて泣いているように見えた。
利用者が見たらどう思うだろう。
何が起こったかはわかる。やはり激怒するだろうか。それともあまりの酷さにかえって同情するだろうか。その壮絶に情けの無い光景を思い浮かべて……。
僕はどうしようもなく興奮していた。
時間が無いのがおしかった。
惨状を携帯のカメラに収めると、欲求を押し留めて立ち去った。
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駐車場から一分ほどの距離にある目的地に着くと、それは白い綺麗な邸宅だった。
チャイムを鳴らして中に入ると、穏やかで品のある婦人が出迎えてくれた。
歓迎の言葉をいただき、挨拶を返して居間に入る。
僕は家庭教師のアルバイトで来たのだった。
和やかに雑談しながら、授業の時間などについて確認する。
教える予定の娘もちょうどいま帰ってきたばかりで、すぐに降りてくるのだという。
資料によると中学二年生の女の子で、バイオリンの演奏が特技、趣味は読書と音楽鑑賞らしい。
吹奏楽部と図書委員会に所属していて、いかにも清く可憐な女学生という印象だった。
真面目でおとなしい性格だが、クラス委員を務めたりと、行動力もあるようだった。
ほどなくして母親が立ち上がって名前を呼んだので、僕も振り返った。
制服姿の美しい黒髪の少女が、両手を揃えて立っていた。
緊張した面持ちで頭を下げ、名前を言う。
僕がわずかに遅れて自己紹介すると、彼女は丁寧に挨拶をし、空いているソファーに座った。
母親が少女について改めて紹介を始める。
淡く頬を染め恥ずかしそうに目を伏せ始めた彼女を、僕はじっと見つめた。
品のある整った顔立ち。あどけなくも淑やかな振る舞い。少女は絵に描いたような、良家で大切に育てられてきた子女であった。それでいてゆるぎのない芯も感じられ、正義感も強そうだった。
僕は彼女を見つめ続けていた。母親の言葉はまったく耳に入っていなかった。
少女からは年不相応な香水の匂いがした。
目の前にいる彼女は、ついさっき駐車場の奥で腹の中身を撒き散らしていた少女に他ならなかった。
やがて和やかに雑談が始まった。
娘は掃除好きで、今日のために部屋をぴかぴかにしたのだと母親が笑いながら言った。
顔を赤くして嗜める少女。よりにもよってこんな日に下痢をするとは思いもしなかったことだろう。
そのしわ一つない制服の中で少女のおなかは猛烈な下痢を起こし、彼女を野糞という行為に追い詰めたのだ。貞淑なスカートの奥に固く守られたつぼみを、許されざる場所で外気に晒させたのだ。
真っ白な靴下の内側に、茶色い斑点がわずかに付着しているのに気付いた。
目の前の彼女は、どこまでも清楚に笑っていた。
誰からも愛され、穢れなく育ってきた彼女の、人生最低の瞬間を僕は見てしまったのだ。
ふいに、真っ青な顔で屁を漏らしながら歩いている彼女の姿が脳裏に浮かんだ。
汗を垂らし、唇を噛み締め、不気味なうなりをあげる腹を必死に慰めながら、小さな歩みで進んでゆく。
やがてその瞳は戸惑いがちに、しかしじょじょに据わりながら、道路の左右を見つめ始める。
もう駄目かと思ったときに、右手前に姿を現した駐車場。
そして……。
爆音を響かせながら下痢便をぶちまける肛門。
懸命に抑え付けていた劣情が頭をもたげ、大きく膨れ上がっていた。
僕は姿勢を少し変えなければならなかった。光景を打ち消そうとして、強く膝を掴んだ。
「先生……?」
気が付くと、彼女がわずかに困惑した様子で僕のことを見つめていた。
胸がまぶしくなるほどに澄んだ、純粋な瞳だった。
見つめ返して微笑むと、彼女も目を細めてはにかんだ。