No.21「情景」

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「はあ、はあ、はあっ!!」
 ある日の午後、小さな公園の隅にある公衆便所に、血相を変えて駆け込んでゆく少女の姿があった。

「うぅぅぅっ!!」
 薄暗い個室の中に飛び込み、素早く戸を閉め施錠する。
 鞄を置きつつ便器をまたぎ、一気にスカートをたくし上げて下着をおろしながらしゃがみ込む。

  ブリュリュリュリュリュリュリュリュブビッッ!!!

 尻が便器の中に突き出されるのと、その底から下痢便が噴き出すのとは同時だった。
 一瞬で便器の底がドロドロの未消化物で埋めつくされる。

  ブビビビビビビビビビビビビビッ!!
  ビチビチビチビチビチビチビチビチッ!!
  ブボッ!! ブピピピピピピッ!! ブリッ!!
 震える汗だくのおしりから、さらに次から次へと粥のような便が排泄されてゆく。
 真っ赤に膨らんだ肛門の下に茶色い滝がくりかえし打ちつけられ、周りに撥ね散る。
 ひと耳で下痢と分かる大きな音が便所中に鳴り響き、それと共に便器は少女の腹の中身で満ちていった。

「はあーー……っ」
 ひとしきり出し終えると、少女は険しい顔でため息をついた。
 照るほどにぬめった肛門がひくひくと収縮し、手が腹をさするたびにきゅっと縮む。
 立ち上る強烈な悪臭。おぞましく煮え崩れた下痢便の山の上に、震え続ける丸みを伝って汗が落ちる。
 そのまま少女は静かに肛門を蠢かし続けた。充血した粘膜が生き物のように伸び縮みを繰り返す。

  ……ぶぴいっ
 一分ほどの後、少女は肛門をすぼめ、トイレットペーパーに手を伸ばした。
 がらがら、がらがらと、乾いた音がしばらくのあいだ続き、やがて大きく水洗の音がした。


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「おかえりなさい」
「ただいま」
 いつものように退屈げな顔で家に入る。

「どうしたの? 顔色が悪いわよ?」
「えー、そんなことないよ……」
 心配そうに見つめてきた母親から逃げるように、少女は早足で二階に上がった。

「はあ……っ……」
 そして自室に入り鞄を置くと、そのままベッドにもたれかかった。
 伸びてきた髪がばさりと布団に広がる。

「調子わるっ……」
 重い表情でつぶやきながら、左手を差し込んでおなかをさする。
 もう一度大きくため息をつくと、少女は布団に顔をうずめ、しばらくおなかに手を当てて動かなかった。

 やがて少女は宿題を始めたが、ほどなくして部屋から外に出ていった。
 ばたんとドアの閉まる音がしてすぐに水を流す音が廊下に響いた。


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 日が暮れ始めたころ、静かに階段を上ってゆく母の姿があった。
 二階の廊下は薄暗く、静寂に包まれていた。

 娘の部屋の前まで来たところで、側にあるトイレの表示が赤くなっていることに気づく。

  チュポッ……チョポポポッ……
 立ち止まって様子を伺うと、中から水音が聞こえてきた。

  チュゥゥゥゥゥゥーーーーーッ……
 まるでおしっこだが、そうでないことは直感で分かった。
 ……下痢。痛ましくふるえながら水便を放つ娘のおしりが脳裏に浮かぶ。
 暗くなってきてからだいぶ経つのに、少女の部屋からは灯りが漏れていなかった。

  ブビッッ!!
 ひときわ大きな音が響くと、母は静かに階段へと戻っていった。

  ぶうぅぅーーーーっ
 後ろから情けない音が追ってくる。
 その頭の中には、消化に良い食べ物があれこれと巡りだしていた。


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