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「ふうううぅぅぅっ!!」
ある日の放課後、ありふれた住宅街の一角。転がるようにして家の中に飛び込んでゆく少女の姿があった。
「早希!?」
跳ね開けられるドア。
おかえりなさいと言いかけた母が、娘の物凄い形相に目を丸くして口をつぐむ。
「どいて、もうだめっ!!」
瞬く間に靴を脱ぎ飛ばした少女は、鞄を放り投げ、母を押しのけてトイレの中へと飛び込んだ。
「はあああああぁっっ!!」
扉を叩き閉めるやスカートをはね上げ、ショーツを一気にひきずり下ろす。
ブフウッ! ボタボタボタボタボタ!!
むき出された尻から溢れ出す泥が便器の内蓋を直撃する。
そのまま少女は一気に膝を折り座り込んだ。
ドブボボボボボボボボボボボーーーーーーーッッ!!!
ビチビチビチビチビチビーーーーーーーッ!!!
尻が便座に接するのと、少女の肛門が全開になったのは同時だった。
大音響のおならをともない、埋め尽くさんばかりの下痢とガスが便器の中にぶちまけられる。
間一髪だった。
「ぐくっ……ふううぅぅっ……っ!!」
ブボッ!! ブリブリブリブリブリブリブリブリッ!!
ボチャブチャブチャブチャブチャブボッッ!!
ドボボボボビビビビビイィィーーーーーーーーッ!!
一瞬の息継ぎと共に、再びものすごい量の下痢便が汗だくの尻から注ぎ込まれる。
便器の内外に派手に飛び散る飛沫。健康的な尻が泥に覆われ、内蓋にも大量に茶色い斑点が付着する。
はてしない帰り道で少女が堪えに堪え続けてきた欲求が、隆起しきった肛門から火を噴くようにして吐き出されてゆく。
ブウウウウウウゥーーーーーーーーーッ!!
尻を震わせ、割れんばかりに猛烈な放屁がそれに続く。
限界に達していた便意が制御できる域まで和らぐと、少女は回していた目に理性を戻し、殴るように水を流した。
腐った卵のようなひどい臭いはすでに個室から溢れんばかりである。
額をどろどろにぬめらせている脂汗を、少女は荒々しく左手でぬぐい散らした。
ブーーーーーッッ!!
水にかぶせて思いっきりおならをする。
少女はえぐるように唇を噛み締めながら、鼻腔から大きく息を漏らした。
ボチャボチャボチャボチャブビッ!!
ブピッ! ブリピッ!! ブピピピピブリリリッ!!
それからは、繰り返し腹をさすり、何度も水を流しながら情けない排泄の音を続けていった。
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トイレに駆け込んでから二十分ほどして、ようやく水洗の音と共に少女は外に出てきた。
ただし、その内の多くは汚れに汚れた尻と肛門、便器を拭き清めるのに要されたものである。
ウォシュレットのため、便座にカバーがかかっていなかったのが救いだった。
「早希、だいじょうぶ?」
うつむきながら周りを見回し、傍に立てかけられていた鞄に気付いて持ち上げると、母がそっと居間から出てきた。
「おなかの具合はどう? 下着とか、汚しちゃったりしてない?」
「べつに……」
少女は小さな声で、顔を上げることなく答えた。
肩にかかった襟足がはねて広がり、前髪は汗に濡れて派手に乱れている。
「学校でしてくればよかったのに……あんなにあわてるぐらいなら」
少女は、目を大きくして唇を押し合わせた。
答えることはなく、気まずい沈黙が何秒か続いた。
「早希、次からはもし具合が悪かったら、無理せず学校でトイレに行ってきなさいね」
鞄を持つ手に力がこもる。
「わかった? 何も恥ずかしいことじゃないんだから」
「……うん……」
ほとんど聞こえない声で小さくうなずく。
「本当にわかった? もう子供じゃないんだから、変に我慢して漏らしちゃったりでもしたら、そっちの方がよっぽど」
「もおーーっ! わかったってばあ!!」
少女は顔を上げて母を睨み付けると、反応を見る間もなく身を返し、階段を上りだした。
足音を立て、逃げるように上ってゆく後姿を、母は情けない眼で見つめていた。
甘い色の目立つ年頃の少女らしい部屋に入り、荒々しくドアを閉める。
少女は鞄を学習机の上に叩き付けると、切なく唇を噛んでベッドの上に身を投げた。
そしてうつ伏せになり、しばらくの間動かなかった。
やがて遠くから焼き芋屋の声が聞こえてくると、いっそう彼女は気分を乱した。