No.15「小四冬期講習」

 岩崎 真雪 (いわさき まゆき)
 10歳 みそら市立下里第一小学校4年1組
 身長:132.7cm 体重:28.5kg 3サイズ:61-47-65
 透明感のある長めのおかっぱが可愛らしい、内気でおとなしい女の子。

 ヒロインの物語開始直前一週間の日別排便回数(←過去 最近→)
 1/4/2/1/2/1/1 平均:1.7(=12/7)回 状態:健康

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 はじまりは、極めて何気なかった。

「――というわけでAB=AD=AD'なので、まず三角形ABD'が二等辺三角形と分かるわけです」
 静粛な教室に、講師の声と板書のチョーク音、そして真面目な筆記音が連鎖していた。

 小学四年生の冬休み、僕は近所にある学習塾の冬期講習に参加していた。
 日能研という有名進学塾で、上から二番目のクラスに居たこともあり、授業内容はおそらく高度だった。
 僕は特に受験というものに興味があったわけではなかったが、「日能研」の上位クラスにいるという事実は親を喜ばせ、また、周囲からも評価が高かったので、通塾はそれなりに楽しかった。

「90−28×2=34度。これが角BAD'。するとさっき求めた条件を使って角ABDが出せますね。(180−34)÷2=73。あとは直角からこれを引くだけ。角xは90−73=17度です」
 そしてこの日は冬期講習二日目だった。
 授業は、間に休憩を挟みつつ、一時間を毎日三コマ行っていた。
 私語はなかった。あっても眼下の教科書に関することだった。学校に於いて騒がしかった僕などは、この空気を常々さすがだと感じていた。受験A組というクラス。全六クラス中、別格最上位の栄冠組を除けば、AからEまである受験組の中でのトップ。生徒の多くが近隣小学校の各組三位以内という秀才の集まりだった。

 ――しかし、そんな堅苦しい雰囲気の中で。
 いくつもの奇跡が重なり、僕は夢のような体験をすることになった。


「つまり、BAD'を求めたところで止まってしまった人は、図だけを見ていたから詰まってしまったわけです。迷った時は問題文に戻り、未使用の要素がないか探す癖をつけてください」
 二コマ目の授業開始から二十分ほどが経っていた。
 内容は、算数の平面図形問題演習。この日は最初から応用問題で、クラスの雰囲気はいっそう緊張していた。この先生はいつも正答者に挙手をさせるが、手を挙げたのはクラスの半分にも満たなかった。

「――それでは、今使ったテクニックをもとにして、今度は問の六番をやってみてください。かなりの難問ですが、頑張ってもらいたいと思います。時間は六分取ります」
 次に先生が指定した問題を見ると、その言葉通り、何やらかつてなくややこしそうな図形が描かれていた。
 算数だけ妙に得意だった僕は幸いにしてさっきの問題を正答できたが、今度のはちょっと解けそうにないと感じられてしまった。
 そして、次の先生の言葉でさらにやる気をなくした。
「特に次のテストで栄冠入りを狙っている上位層の人は、是非クリアしてもらいたい。この問題は昨日あちらでもやりましたが、制限時間四分で全員正解しました。本気で目指している人は、これぐらいを達成してほしいと思います」
 おそらくクラス中が凍りついた。
 この日は雪が降るほどの寒さで元々凍えていたが、今度は真剣に動けなくなった。
 栄冠の連中は受験A組の1.5倍の早さで問題を解くので進度が早いと、先生は以前冗談めかして話していたが、今度の目付きは本気だった。ちなみに栄冠の生徒の多くは近隣各小学校の学年トップである。
「ちなみに栄冠一列目は全員一分以内に正答を出し、白鳥窓風に至っては二十秒で解きました」
 さらに先生が続けると、クラスは凍結から戦慄へと至った。
 成績順に前から座席が決められるという分かり易いシステム。A組一列目<栄冠最後列。さすがに栄冠組は天井知らずだ。誰かが「すげえ……」とつぶやく。僕はもう一度問題を見てみた。ややこしい図形が絡み合っている。これを二十秒ってなんだ。ありえない。さすが全国一位。素直に人間じゃないと思った。
「先生! 僕たちは人間ですよ?」
 直後に一人のひょうきんそうな少年が挙手して沈黙を破ると、今度はクラスは笑いに包まれた。
 同じ四列目にいて顔がよく見えたのが記憶に残っている。向こうは一番左で、僕は右から二番目だった。ちなみに、各クラスは六列か七列から構成されていたと思う。一列は六人で、左右三人ずつに分かれ、中央に通路があった。

「気合を入れてもらおうと思って言ってみたのだけれど、さすがに白鳥の話は逆効果だったかな。申し訳ないです」
 数秒で爆笑が穏やかになると、先生は苦笑しながらそう言った。
 そしてすぐに先生は表情を真面目に戻すと、
「まあ、頑張れるだけ頑張ってみてくださいということで。それでは六分。始めてください」
 腕時計を見つめて開始を宣言した。

 ――それとほとんど同時だった。

「ごめんなさい……」
 二列目の一番右。小柄な女の子が、畳まれたコートを膝の上から下ろして立ち上がった。
 すぐに三人共用の椅子の後ろに回ると、隣の男子の背中に胸を押し付けるようにしながら、三列目の机との間のごく狭いスペースを通路に向かって進み始める。生徒の多くはまだ顔がほころんでいたが、一瞬だけ見えた彼女の白い顔は少しも笑っていなかった。――それが、強く印象に残った。

 そして少女は先生と小さく会話をすると、会釈して教室から出ていった。
 わずかに残るざわめきで声は聞こえなかったが、トイレに行ったことを推測するのは容易だった。
 どうやら、この時間が始まるのを待っていたらしい。少しでも目立ちたくなかったのだろう。

 僕はすぐに腕時計を見つめ、時間をカウントし始めた。
 それは僕の趣味で、女子が授業中トイレに立った時は必ず行っていたことであった。
 なぜそんな奇妙なことをしていたのかというと、当時から少女の下痢に興味があったからだ。
 すなわち、これでもし少女が戻ってくるのに五分以上かかれば、彼女はおそらく大便をしているということになり、そして授業中に女の子が大便をしに行かなければならないと言うことは、それは下痢をしている可能性が極めて高いということになる。――その可能性に憧れて時を数えていたのだった。
 もちろん現実には、女の子が五分以内に戻ってきてがっくりとするのが常であった。が、それでも、もしかしたら今度こそ下痢かもしれないと胸を高鳴らせながら時計を眺めるのは楽しかった。十分に興奮できた。まず外れると分かりながら、宝くじを買い求めるようなものである。


 女の子は、五分二十秒で戻ってきた。
 細い左腕に巻かれた可愛らしい腕時計を真っ赤な顔で睨みながら。
 初めての五分超えを達成し、胸が真剣に高鳴り始めた矢先のことであった。
 彼女は教室のドアを閉めるなり恥ずかしそうにうつむくと、きわめて早足で座席へと戻り、いきなり平然とした感じで鉛筆を走らせ始めた。
 その不自然に普通げな行為と微妙な時間とに、僕はだいぶ困惑した。
 戸を開けた瞬間に始めてまともに見た彼女の顔は、険しくなってこそいたが、とても可愛らしかった。こんな娘が下痢をしていたとしたら、それこそまさに興奮の極みだ。しかし、どこまでもそうあってほしいという想いに反して、確証は少しも得られなかった。

 釈然としない興奮をどう処理すべきか戸惑いながら、僕はとにかく彼女の後姿を見つめ続けた。
 地味な色の厚手のパーカーを着て、チェック柄のロングスカートを穿いていた。おとなしい印象の女の子。そのおかっぱに切り揃えられた髪型は、心なしか少しだけ乱れていた。机上を動く彼女の手を眺めながら、彼女が戻ってきた時にそれが明らかに乾燥していたことに、僕は気付いた。どうやら手を洗わなかったらしい。理由は分からない。もし彼女が願い通り下痢をしていたとしたら、女の子としてはえらく汚らしい話だ。また、彼女は右斜め前にいたので、その左頬を見ることができた。よく見ると、汗がにじんでいた。ただ愚かだった僕は、それがどういう汗なのかをはっきりと掴めなかった。
 暖房さえ飲み込むほどの勢いで外の寒波が教室に流れ込んでいた。どこまでも具体的に下痢を指し示す何かを、小学四年生の僕は彼女の小さな体に求め続けた。

 十分、十五分、と黙々と時間が流れていった。
 彼女は普通に板書をノートにとり、そして問題を解いていた。やはり彼女も寒いらしく、ただでさえ狭いその肩をさらに縮めていた。彼女の頬はいつの間にか乾いていた。

 が、二十分経った頃から、再び彼女は汗をかき始めた。汗を流しながら彼女は震え始め、それは徐々に大きくなっていった。そしてすぐに、彼女は左手で何度も何度もおなかをさすり始めた。それが始まるなり、僕は目を見開いて胸をどくんどくんと大きく鳴らしだした。――やっぱり、下痢だ。単純だった僕はいきなり絶対的確信へと至った。
 おなかをさするという行為はすごく分かりやすかった。それまで不安定だった妄想が、急速に生々しく精細になり始めた。彼女の下半身を舐めるように見つめながら、そのスカートに包まれたおしりからドロドロの下痢便がブリブリビチビチと排泄される様を想像した。実際に二十数分前にしていたんだと思うと、全身が灼けるように熱くなり、股間が痛くなった。下半身がえもいわれぬ気持ち良さに覆い包まれるのを、はっきりと感じた。

 みんなが問題を解いている最中。校舎中が授業を行っている最中に、静寂に包まれたトイレで、彼女は独り尻を出してウンチをしていた。軟らかく臭い消化不良のウンチ。下痢ウンチ。五分足らずで戻ってきたのは、それを悟られることのないよう大急ぎで排便をすませたからだろうと気付いた。だから手さえ洗わなかったのだ。
 女子トイレ。和式便器。まくり上げられたスカート。下ろされたパンツ。むき出しのおしり。膨らむ肛門。下品で汚らしい音を伴う茶色い爆発。白い陶器に泥が吐き出されてゆく。さらに激しい放屁。悩ましげな息遣い。苦しげな表情。震える両足。そして猛烈な悪臭。――女の子の下痢便排泄。あのおかっぱ髪の可愛い子が。そんなことを行っていた。女の子は下腹をさする手の動きを休めない。おなかが痛んでいる。本当に下痢だ。下痢してる。女の子が下痢してる。下痢してる女の子が同じ空間にいる。――物凄い興奮。もはや僕は気違いのように彼女を凝視していた。

 いつのまにか、彼女の背筋は大きく曲がっていた。腹痛に苦しんでいる彼女の姿は魅力的だった。
 しかし、その荒々しい苦しみ方は、腹痛のそれを超えているようにも見えた。やがて僕は気付き始めた――。


 ――そして、さらに三十分。授業終了五分前に、異変が起こった。

「ここまで全てチェックできればあとは簡単です。対頂角が等しいことを利用して、」
  ガタッ!

 先生が解説をしている最中、彼女は急に派手な音を立てて立ち上がった。
 そして今度は何も言わず、明らかに慌てたような動きで座席の後ろから通路へと急いだ。僕が状況を把握するのよりも彼女の方が速かった。

「40+55+x+50=20+60+65+40。よってxは40」
 かまわず説明を続けていた先生は、傍に立った彼女が何か話しかけると、静かに口を止めた。
「君、さっきもトイレに行かなかった? 我慢できないんですか? もうあと少しですよ?」
 そしてわずかに顔をしかめてそう言った。
 教室の空気が張り詰めた。普段は温厚だが、時に神経質な印象を見せる先生だった。
 彼女は切なく悲しそうにうつむいてしまった。

「……ごめんなさい……ぐあいが……わるくて……」

 数秒ののち、彼女は顔を真っ赤にし、今にも泣き出しそうな顔で小さくそう言った。
 静かな教室に澄んだ声が大きく響き、今度は僕の耳にも入った。「ぐあいが……わるくて……」胸がどくんと跳ねた。具合が悪いという表現。彼女は隠したが、どこの具合が悪いのかは明白だった。……おなか。おなかの具合が悪い。=下痢。下痢。下痢だ……。
 そして今再びトイレの許可をもらいに立ったということは――、

  ギュルギュルグウウゥゥゥゥ〜〜
「――っ!!」

 いきなり、彼女のおなかから物凄い音が響いた。
 彼女はびくんと震え、両手でおなかを抱え、頬を限界まで紅く染めた。
 僕はそれを見て究極的に興奮した。彼女の姿勢は内股中腰で、膝と膝とがぴたりとくっついていた。両腕はそれぞれ胴体にぎゅっと押し付けられていた。もう僕は理解していた。彼女は腹痛に苦しんでいただけではない。いつしか再びもよおしていたのだ。これからその便意を処理しに行く。トイレに下痢をしに行く。便器の中に下痢ウンチをぶちまけに行くのだ。

「……はやく行ってきなさい」
 先生がそう言うと、彼女は無言で走り出した。
 恥ずかしくてたまらなかったことだろう。クラスの面前で下痢を告白したようなものだ。状況からして便意も相当激しかったのだろうが、羞恥はおそらくそれ以上だったことだろう。先生は申し訳なさそうな表情で静かにドアを閉めた。

 僕は彼女の姿を想像しながら時間を数え始めた。
 五秒経過。必死な表情で走っている。
 十秒経過。おなかを抱えて走り続ける。
 十五秒経過。トイレに着き、個室に駆け込み、スカートをまくって下着を下ろしている。
 二十秒。噴射が始まった。
 二十五秒。茶色いものが次々とぶちまけられ、便器の中に激しく飛び散っている。
 三十秒。おならも大量に混ざりブリブリブーブーと壮絶な音が響きわたっている。
 三十五秒。便器の中はもう彼女が排泄したビチビチウンチでいっぱいだ。
 四十秒。震えるおしり。叩き付けるような排泄。物凄い音。物凄い臭い。彼女の荒い息遣い。
 四十五秒。激しい下痢。彼女の便意と腹痛は一向に治まらない。
 五十秒。便器に向かって盛り上がった彼女の肛門から、彼女の腸の内容物が吐き出されている。
 五十五秒。おなかをさすりながら、苦しげな表情でうなっている。
 一分。もう興奮と快感のあまり、僕の視界は白くなっていた。
 とにかく彼女はいま下痢をしている。今まさにトイレで下痢をしている。疑いなく下痢をしている。おしりを便器に向けてピーピーのウンチを排泄している。彼女の肛門から悪臭放つ未消化排泄物が噴出している。荒れ狂った腸の中身を下している。たまらない。下痢してる。下痢。ゲリ。げり。

 僕は目を血走らせて時計を凝視していた。
 便器をまたいで下痢をぶちまけている彼女の姿がどこまでも鮮明に脳裏に描き出され、他の情報は全てシャットダウンされていた。
 二分、三分、四分、五分――。彼女のことしか考えられない。いつしか授業が終わって昼休みが始まったが、僕は教材を鞄に入れることすらしなかった。ただ彼女の下痢を味わってびくんびくんと震えていた。傍から見たら明らかに異常だったと思う。それでも、今まさに彼女がトイレでしているという事実は、僕を爆発的興奮の渦から離そうとはしなかった。理性などあったものではなかった。僕の机上同様に授業中のまま時が止まっている彼女のノートや教科書や文房具が、ものすごく生々しかった。


 結局、彼女は十四分後に戻ってきた。
 告白して開き直ったのか、今度はもはや時間さえ露骨だった。
 完全に昼休みの空気と化した教室に、ふらふらとした足取りで入ってきた彼女。
 僕はその姿を見てぞくりとした。
 明らかにそれのあとだと分かる、ひどくげっそりとした表情。
 両手は左右のふとももを掴んでいたが、背が完全に曲がっていた。

 疲れきった様子の彼女は静かに座席に戻ると、しかし素早い動きで勉強用具を次々と鞄の中に入れていった。後ろの方で「やーねー」という声が聞こえ、続いて小さく嘲笑が起こった。彼女はすごく惨めそうだった。それがまた僕の情欲を刺激した。

 そして彼女は何もかも鞄に入れると、そのNマークのついた正確にはリュックをいきなり背負い、逃げるように教室から出て行ってしまった。
 それきり次の授業が始まっても戻ってこなかった。
 体調不良で参加できないと判断したのか、恥ずかしさに耐え切れなくなったのかは分からない。
 彼女は早退したのだった。――下痢で。


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 僕は睡眠不足に陥っていた。
 あの日の三時間目の授業内容を、かけらたりとも思い出せない。
 帰宅後も彼女のことを考え続け、一日中興奮しっぱなしだった。予習復習は全て放棄した。激しい性的昂ぶりを処理する方法が分からず、ただひたすら悶々としていた。知っていたら猿になっていたことだろう。夜は目がさえきってほとんど一睡もできず、一晩中彼女のことを考え続けた。女の子の下痢に、どこまでも本能的に興奮を覚えていた。

 そして、翌日に至っては、一日丸ごと授業を思い出せない。
 座っているだけで、全く聞いていなかったのだ。

 講習三日目のその日、彼女は授業を全て欠席した。
 安易に塾を休むようなタイプではなかったので、下痢が酷くて来れないのだと僕は解釈した。

 すると、ただでさえ興奮しきっていた僕だったが、その度合いは何かがはち切れんばかりになった。
 下痢で欠席という事実に強烈に興奮した。きっとおなかがめちゃくちゃにピーピーで、家のトイレから離れられないのだ。それでトイレの住人となり、おなかを抱え込んで水のような下痢ウンチをビュービューと便器に噴射し続けているのだ。
 今ごろ彼女がパジャマ姿で家のトイレに篭って下痢をしているのだと思うと、もうどうすればいいか分からなかった。

 それで授業どころではなかった。

 いっそう激しくなった欲望は帰宅後も収まらず、僕はもう頭の中がめちゃくちゃになり、自由帳を引っ張り出して下痢をしている彼女の姿を稚拙に描いてみたり、それを漫画にしてみたり、あるいは小説にしてみたりした。「ブリブリ」だの「ビチビチ」だのといった彼女が下痢をする音を、それこそ何十回何百回とノートに叩き付けた。しかしいくら吐き出しても、欲望は無限に下半身から湧いてきた。ノートを一冊使い切ると、さらに二冊三冊と消費していった。どうせ眠れなかったので、徹夜でそれをしていた。僕はまるで精神病患者か何かのようであった。じじつ限り無く発狂に近かった。だが、異常だと自覚していたものの後ろめたさは感じなかった。むしろ、こういう時にこそ興奮すべきだと感じていた。理由をまだ知らなかったが、僕の下半身は永久に硬かった。小便がしづらくて何度も便器を汚し、そのたび母に叱られた。


 そして講習四日目。一時間目の国語。
 彼女は四十分遅刻してやってきた。いかにも体調不良といった蒼白い顔色で。いきなりげっそりとした表情を見せながら力なく教室に入ってきた。
 今日もまだ下痢が酷くて来れないのだと思って興奮を新たにしていた僕であったが、彼女のその様を見るなり、興奮の程度は跳ね上がった。それまでの期待が裏切られたにも関わらず。やはり生の魅力はすごかった。
 彼女はコートの下に、クリーム色のセーターと紺色のロングスカートを身に着けていた。
 いかにも暖かそうな格好。彼女はコートを脱いで膝掛け代わりにすると、さらにその上にマフラーと手袋を乗せた。

 その後彼女は特にそれらしい動作も見せず平然と授業を受け、僕は少しがっかりした。
 そうしてすぐに昼休みになった。

 彼女は鞄の中から小さな弁当箱と魔法瓶を取り出すと、もそもそと食事を始めた。
 ピンク色のスチール箱の中には、オレンジなどの果物しか入っていなかった。
 どうやら食欲が無いらしい。あるいは消化力を失っているのだろうか。小さく切られた果物を、彼女はまさに病人のように力ない動きで少しずつ口に運んでいった。弱っている。本当に下痢が酷いのだと分かった。かなり無理をして塾に来たようだ。

「あの子、まだおなかの調子悪いみたいだね……」
「やーねー。おとといの今ごろトイレに行ったらひどいにおいがしてたのよ」
「ゲリなんだからしかたないよ……こういうこと言うの、もうやめよ」
「そだね……」

 ちょうど僕の席の真後ろで、仲の良さそうなグループが彼女の下痢について噂していた。
 彼女の便臭が話題に挙がった時、僕はまた気持ち良くぞくりとした。
 後ろの噂が止まると、僕はそれまで以上に強く意識を彼女に集中させた。

 彼女は半分ほど食べ終わると、静かに弁当箱の蓋を閉めた。やはり食欲が無いようだ。
 弁当箱をサックに入れて鞄に戻すと、彼女は今度は小さなティッシュの包みを取り出した。
 そして彼女は周りをきょろきょろと見回したのち、包みを開き、中から赤い錠剤を数粒重ねてつまみ出すと、即座にそれを口の中に入れた。間を置かずにお茶を飲んで胃に流し込む。それまでとはうって変わっての素早い動きだった。

 ……すぐに分かった。彼女は下痢止めを飲んだのだ。
 真っ赤に染まった彼女の頬が物語っていた。下の不調に関する、恥ずかしい薬。女の子でありながら、人前で下痢止めを服用した。その行為への羞恥に彼女は悶えていた。
 きっとどんなに恥ずかしくても、薬を飲まざるをえないほどにおなかの具合が悪いのだろう。
 僕はいっそう興奮を激しくしながら、獣のような目付きで彼女を凝視し続けた。

 下痢止め服用を済ませた彼女は、再びその動きを力ないぐったりとしたものに戻した。
 白く細く小さな両手でコップを持ち、肩を縮めてこくこくと残りのお茶を飲んでいた。
 やがて瓶が空になると、彼女はゆっくりと机につっぷし、そのまま動かなくなってしまった。
 かすかに上下する丸い背中を、僕は片時も離れず撫で見つめ続けた。


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「問四の答えは、アから順に、釧路、石巻、焼津、境――」

 三時間目。社会。授業内容は日本の水産業。

 二時間目は期待に反して何もなかった。
 が、この三時間目になって、彼女に再び異変が起こった。

 開始から十分ほどが経った頃から、彼女はおなかをさすりだした。
 同時に体を少しずつ前屈みにし始め、さらに五分が経つ頃には、はっきりとその姿勢が周囲から浮いている状態となった。おなかをさする頻度もどんどんと上がってゆく。
 腹痛の波に襲われたのは明らかだったが、このとき僕はどういうわけか、便意も来たのだと断定した。
 当然にまだ確証はなかった。が、とにかくそんな気がした。そうあってもほしかった。


 そして、開始から二十分、彼女の様子がおかしくなってから十分。
 僕の願望は彼女自身の動きによって、どんどん現実と重なっていった。

 彼女はもはや、ほとんど常におなかをさするようになっていた。
 それどころか、時折その可愛らしいおしりに手を触れるようにもなっていた。尻肉を撫でたり指でつまんだりしていた。
 また、しばしば左手を握り締めて腰に押し付けるようになり、膝同士を擦り合わせたり、踵を小刻みに上下させるようにもなっていた。

 ――下痢を我慢している。すでに露骨だった。
 彼女の頬はそれを堪える苦しみからか桜色に染まり、そしてまた汗が滲み始めていた。僕はこの時になってようやく、その汗は激しい便意への悶えによって生じているものだと気付いた。……脂汗というものだ。
 彼女の腹痛と排泄欲求は早くも相当のものになっているようだった。
 それでも、目立たないようにこっそりとおなかをさすっているのが愛らしかった。実際、彼女のほかには、僕ぐらいしか気付いていないだろう。

 そんな彼女を後ろから見つめながら、僕はどこまでも狂おしい性的興奮を味わっていた。全身が灼熱し、股間は異常な感覚に包まれ、そこに心臓があるかのようだった。頭が日射病のようになり、鼻血が出そうな感じがして不安だった。

 もうウンチしたくてたまらないんだよね?
 おなかがゴロゴロ痛くて、おしりの穴を今すぐにも開きたいんだよね?
 そろそろトイレに行くのかな?
 いつ行くのかな?
 一分後? 十秒後? 次の瞬間?
 もう、ガマンするのつらくてつらくてたまらないんでしょ? ゴロゴロピーピーで下痢便したくてたまらないんでしょ? 放ちたいんだよね? ――ああ、もうこっちがたまらない! ウンチ。ウンチ、ウンチ、うんち。

 僕は人の域を失墜して野蛮だった。
 女の子が下痢してる。
 可愛い女の子が、その甘そうな身体の中に、大量の臭くて汚いドロドロ下痢を詰め込んでる。
 おなかをピーピーに下して、ビチビチの下痢ウンチを排泄したい欲望に悶えてる。
 ぶるぶる震える彼女のおしり。
 限界を超えて性的刺激を叩き付けられ、僕は小学生の域を超越して発情していた。すごすぎた。

 しかし彼女はなおトイレに立たなかった。
 したくてたまらないのは明らかなのに。
 やはり、恥ずかしくてなかなか勇気を出せないようだった。
 これまでさんざん醜態を晒してきた彼女。恥の上塗りが怖いのだろう。また、社会の先生が厳格な印象の熟年男性であることも、おそらく大きな理由だったに違いない。男子は平気だったが、女子はみんな怖がっているようだった。


 ――そして、開始から三十分、彼女の様子がおかしくなってから二十分。
 彼女と僕は極限状態を迎えつつあった。彼女は下痢で、僕は興奮で。
 まだ彼女はトイレに立っていなかった。
 玉のような汗が頬を流れ落ちる。彼女の肉体の震えはだいぶ大きくなっていた。時折びくん、と痙攣する様はもう普通ではない。便意がどんどんと激しくなっているのは明らかだった。にも関わらずトイレに行かない。――正確には、行けない。下痢を我慢し続ける彼女。常に先生の様子を伺っているようだった。

 僕は筆舌不能な勢いで彼女を凝視していた。
 途中で隣の男子が何か話しかけてきたような気もするが、余裕で無視した。
「というわけで、日米漁業協定に於いてはそうだが、日中、日韓の場合は200カイリは規定されていないわけだ……」
 授業は念仏より耳に入らない。
 ノートなんて真っ白だ。彼女も多分そんな感じか、ぐにゃぐにゃの文字をかろうじて蠢かせているだけだろう。左手でノートを抑えることさえできない彼女。もっと近づきたい。間の一列がもどかしい。

(――っ!)
 その時、いきなり異臭が漂い始めた。
 下品な悪臭。温泉に漂っているような、強烈な硫黄の臭い。
 おしりに手を当てて震えている女の子を見て、すぐに僕は彼女がおならをしてしまったのだと気付いた。
 同時に、彼女の頬は真っ赤に赤熱していった。意に反して肛門が緩み、恥ずかしいガスを放出してしまったのだろう。限界状態の肛門から、すかしっぺを放ってしまったのだ。

 静かな教室に彼女の屁の臭いが拡がってゆく。
「ねえ、なんだか臭くない……?」
「だれかおならしたみたいね……」
 三列目の女子がささやき合う。
 誰も何も言わないが、犯人が彼女であることにはみな気付いていることだろう。
 ついに、彼女は自身の肛門さえ制御できなくなったのだ――。

 そう思うやいなや、今度は彼女は左手をその丸いおしりの下にずぶりと埋めた。……肛門を抑え始めた。
 おならの臭いが漂っている中でそんなことをしたら、放屁したのは自分ですと言っているようなもの。彼女もそれぐらい分かっているはずなのに。――しかし、もはやそうせざるをえなかったのだろう。
 そして彼女は全身を強張らせて悶絶した。

 ああ、もう限界なんだ。
 僕ははっきりとそう感じた。

 刹那、僕の意識にあるひらめきが浮かんだ。
 それは恐ろしいひらめきだった。たぶん、悪魔が啓示した。
 いま授業を抜け出して女子トイレに隠れれば、彼女の排泄を間近で味わえるかもしれない――。
 そう思いついたのだ。思いついた瞬間、僕は否定した。が、直後に再肯定した。とんでもないことだ。もしばれたらどうするんだ。僕の理性は叫んだ。しかし、その一握程度の思いは、次の瞬間に全身を満たす本能によって握り潰された。
 彼女の下痢便排泄。その音に。臭いに。空気に。……生で触れてみたい。彼女の下痢に近づきたい。ぐちゃぐちゃに溶けたウンチが激しく噴出する音、便器に叩き付けられる音を聞きたい。臭い未消化の便臭を嗅ぎたい。苦しみながら下痢便を排泄する彼女の、その荒々しい息遣い、うめき声、腹を撫でる様、とにかく全身体の動きを感じたい。性の知識もない小学生でありながら、下半身がそれを求めているのが分かった。汗まみれで震える彼女。僕は決心した。

 だとしたら、もう一刻の猶予も無い。
 さすがに漏らすまで我慢し続けるわけはない。彼女がトイレに立つのはもう時間の問題だ。
 僕は衝動に包まれ、即座に立ち上がった。欲望が僕の体を突き動かしていた。
「先生、トイレに行ってきてもいいですか?」
「おお、行ってこい」
 機械的に許可を仰ぎ、当たり前に許可を受ける。
 そして静かに教室から廊下へと出た。

 すぐ傍にある男子トイレではなく、廊下の突き当たりにある女子トイレへ。
 僕は静かに、しかし素早く歩行した。
 途中にあるそれぞれの教室から、めいめいの講義の声が聞こえてくる。
 世界は平然としていた。自分がそれから乖離しているのを感じた。

 女子トイレの入り口で後ろを振り返る。――まだ彼女は教室を出ていない。
 よし。いける。僕はすかさず中に入った。

 誰もいない静かなトイレ。授業中のトイレ。
 向こうとは違う、ピンク色の床タイル。個室は四つあった。男子トイレの倍。やはり多いのだなと感心する。――女子トイレ。女の子のための便所だ。これだけでも興奮する。
 胸をぞくぞくと震わせながら、僕はすばやく入り口横の個室に忍び込んだ。

  カチャ……ッ……
 音を立てないように扉を閉め、同じく慎重に鍵を掛ける。
 もう足元には便器があった。白い陶器製の和式便器。こちらは男子トイレと全く同じものだ。しかし毎日のように女の子の糞尿を受けているのだと思うと、明らかに違うものに感じられる。
 そして、隣の個室にも同じものがあるはずだ。
 彼女が下痢便をぶちまけることになる便器。彼女が隣に駆け込む可能性を僕は確信していた。とにかく入り口から近いところに飛び込むはずだ。

 僕は少しでも彼女に近づくべく、その場にしゃがみ込み、そして体を隣との壁に貼り付けた。
 その瞬間、また僕の頭に恐ろしい考えが浮かんでしまった。
 これ、見れる。のぞけるんじゃないか――?
 仕切り壁の下端と床のタイルとの間には、かなりの隙間があった。これなら、床に這いつくばり、顔を接地すれば、壁の向こうが見れる……。彼女の……排泄を。この目で、見れる……。
 身体中の血がどくん、と沸騰した。性欲がさらに加速暴走する。だが同時に、また理性も反発した。それはいくらなんでもやばすぎる。それこそ、もしばれたらどうするんだ。叫ばれる。顔を見られたらシャレにならない。ダメだ。ダメだ。ダメだ。でも――、

  ダタタタタタタタッ!!
「っ!!」

 まさにその時、彼女が物凄い勢いでトイレに駆け込んできた。
 ――もう、ダメだ。
 僕は即座に体を寝かせ、顔面を壁に貼り付けた。

  バタガチャンッ!! ブリリリッッ!!

 激烈な勢いで施錠すると彼女はいきなり放屁し、どたどたと激しく足踏みをしながら荒々しくスカートをまくり始めた。
  バサバサバサッ! バサッ!
 必死で布をめくり上げてゆく音。下半身をさらけ出してゆく彼女に僕は胸をばくつかせた。
  バサバサブビッ! ブビュベタベタベタッ! ボタッ!!
 その最中いきなり、上から茶色いものが降り注いだ。
 え?、と思うよりも早く、
  ブリブリブリブリブリブリブリブビビビビビ−−−−ッ!!!
  ブボビチビチビチビチビチブチビチビチビチビチビチビチビチ!!!

 全開になった肛門から下痢便を噴射しながら彼女のおしりが下りてきた。
 いきなり僕の興奮は頂点に達した。下痢まみれになった床。彼女は情けなくも、肛門を便器に向けるまで我慢できなかったのだ。

  ブオッブブブオッ!! ブリッブリブリブリブリブボッッ!!
  ブピーーービチビチビチビチブリッ!! ブリビチチチチビチビチビチ!!
 そして彼女の下痢ウンチ。止まらなかった。物凄い勢いで便器に叩き付けられてゆく。
 雪のように白い彼女の丸いおしり。その双球の中央にある肛門が雄雄しく盛り上がり、爆竹のように激しい音を立てながらビチビチの下痢便を吐き出していた。便器に激突する音もすごい。眼前の肛門と便器から壮絶な下痢の音が鳴り響く。茶色い泥が落下のたびにはじけ飛ぶ。下痢だ。下痢だ。下痢だ。下痢だ。ああ、女の子が下痢をしている。ピーピーだ。下りきった腹の中身を排泄している。下痢をしている!
  ブボッ!! ブビブビビブピッ! ブリッブリブリブリッブリリリッ!!
  ブリブリブリブリブブブブブウーーーッッ!!
 赤く膨れ上がった肛門から次々と茶色い軟便の塊が発射される。
 こんなに出るんだ。こんなにいっぱいおなかの中に溜めていたんだ。だからあんなに苦しそうだったんだね。ビチビチの下痢泥ウンチ。大量にぶちまけられて床と便器の中から湯気が立ち上ってる。本当に酷く下痢してるんだね。僕は脳髄を貫く快感にびくびくと震え、目を見開き口から心臓を出しかけながら、極めて本能的にズボンの上から股間を擦り始めた。
  ブブブォォォッッ! プウーッブウゥブウウゥゥーーッ!!
 下痢便の噴出が途切れると、汗まみれの彼女の尻は今度は猛烈に放屁した。
 眼前の汚い肛門が収縮し、皺が縮んで伸びるたびに爆弾のようにガスが投下される。
 物凄い下品な音。なんて汚い音を出すんだ。信じられない。女の子がこんな音を出すんだ。女の子のおなら。下痢腹ならではの強烈な腹圧による、激しすぎる放屁。
  ブビッブビビッビィィィィ〜〜、ブビッ!
 直後に放ち終わると彼女の穴は静かになったが、今度は悪臭が漂ってきた。
 眼前の恥ずかしいおしりから放たれた、彼女の乱れきった大腸の中身。その強烈な未消化臭が、ついに僕の鼻腔を侵し始めた。
「……、っ……!」
 あまりの臭さに、僕はたまらず喘ぎそうになった。くさい。完全に下痢の臭いだ。濃密な硫黄臭、腐った卵のような物凄くきつい臭い。生臭さも伴う病的な便臭。教室で嗅いだ屁の臭いの非ではなかった。やはり実弾は違う。これが今日の下痢をしている彼女の大便の臭いだ。

「はぁ、はぁ……はぁぁ、っう……ぅぅ……」
 尻の上から喘ぎ声が聞こえた。可愛い声。彼女自身は耐えられなかったらしい。
 彼女の細い脚はがくがくと震えていた。繊細な女の子の身体。下痢の苦しみに悶絶しているのだろう。僕は彼女の可愛らしい顔を思い浮かべた。おとなしげなおかっぱ髪の女の子。あの彼女がいま僕の目の前で尻をむき出して下痢便を排泄し、この凶悪な猛臭と大人顔負けの物凄い爆音を産み放ったのだ。下痢ってすごい。
  ポタッ、ポタポタポタ……プビ……ッ……
 茶色くなった肛門がひくひくと蠢き、ぽたぽたと軟らかい塊が落下した。下痢をしている肛門。可愛い彼女の秘密の穴はこうも惨めに汚れていた。
  グゥゥゥゥゥウウーーッ!
「ぅぅぐぅっ、ぅぅぅう……!」
 静寂を取り戻したトイレに今度は彼女の腹のうなりが響き、そして苦しげなうめき声が続いた。
 わずかに布の擦れる音もした。激痛を発するおなかを必死にさすっているのだろう。痛ましい様相。これが女の子の下痢なのだと知った。白い靴下がまだら模様になっていることに彼女は気付いているのだろうか。
  グギュゥゥ〜〜ゴロゴロゴログウーッ
 すごい。まだおなかが鳴ってる。
「はっ、ぁぁ……っ! はぁー、はあ、はぁーっ……!」
 彼女の荒々しい呼吸は、もはや泣き声に近かった。
 ぶるぶるぶるぶると苦しそうに震える小さなおしり。大量の汗が天井の明かりを反射し、てらてらと鈍く輝いている。ゲル状の軟便が少しだけブリリと出て、すぐにボタッと落ちた。桃のような尻に白い下痢湯気がまとわりついている。
 僕はいつしか股間をめちゃくちゃにもみしだき始めていた。

「んぅっ!」
  ブボッッ!!!
「ぅんんんんぅぅ……っ……!」
  ブリュリュビチチチチチビチビチビチブビッッ!!
 そしてまた噴射が始まった。
 にわかにすぼまり始めていた肛門が再び大きく盛り上がり、腹痛の元をすごい勢いで吐き出してゆく。さっきあれだけぶちまけたにも関わらず、その勢いは全く衰えていなかった。あれだけ激しくおなかが鳴っていたのだ。彼女はまだ大量の下痢ウンチをその下りきった腸の中に抱えているのだろう。彼女の排泄はもはや暴力的で、大腸がその中身を拒絶しているのがよく分かった。赤く腫れた肛門はまるで悲鳴を上げているかのようだった。
「んんんぅぅーーっ……!」
  ブビィィッ! ビュービュシャビチャビチャァーッ、ブオッ!!
 次の噴射から眼前の茶色は一気に軟らかみを出し、すぐに水のようになった。
 彼女が苦しげにふんばるたびに、充血した肛門から黄土色の水流が飛び出す。
 液状化した大便は次々と便器に叩き付けられ、小便のような激しい音を立てた。ここまで水っぽくなるものなのか。噴出が便器を叩くたびに茶色い飛沫が飛び散り、彼女の白いおしりを汚してゆく。本当に物凄い下痢だった。彼女は見事なまでにおなかを下していた。
「ふうっ! ぅぅぅんんっ……っ!! んっふうっ、ううぅぅ……!」
  ジュボボボッ!! ボジュッ! ビチュービチュヂュヂュヂュブビーーッ!
 彼女はそれまでよりも大きく股を開き、より幅広く開かれた肛門から搾り出すように下痢便を放ち続けた。
 ガニ股にも等しい下劣な排便姿。あの可愛い顔からは想像もつかない下品で野蛮なうなり声。もしこの様を人に見られていたと知ったら、彼女はきっと恥ずかしさに耐えきれず泣き出すことだろう。彼女の秘密の中の秘密。自分以外には絶対に見せられない最低の瞬間。――そう思うやいなや、僕の目の前は急速に白くなり始めた。
  ブウウウウウゥゥゥゥーーー!!!
 直後に彼女の肛門が限界まで膨らんで逞しすぎる屁が放たれた瞬間、僕の全身に電撃が走った。
 それまでの波を超絶する、人生初の壮絶な快感と開放感とが股間から背筋へと駆け巡った。
 下半身が無くなるかのような異常な甘覚に全身が痙攣し、その物凄い気持ちよさに全神経が打ち震え、心臓が痺れて目の前は雪のように真っ白になった。腰がびくんびくんと跳ね、僕は思考力と肉体力とを喪失した。
  ヂョボボポポポポッ!! ブピッビヂヂチチッブヒィィッ……!
 白い世界に、僕を喜ばせる音はなお響きわたり続けていた。
 吐き気さえもよおさせそうな酷い悪臭を、僕はどこまでも気持ちよく吸い込んだ。下半身が汗でびっしょりしていることに気がついた。股間の辺りが、何かすごく濡れているような気がする。でもどうでも良かった。ただ世界中が気持ち良くて、もうそれ以外何も分からなかった……。

「ぁ……はぁ、あぁ……んんっんんんん……っ!」
  ブピチヂチチブピピ……ブビューッ! ブビィィッ!! ……ビィッ……
 最中、彼女のおしりの穴からの噴射は、出るたびに色と勢いとを失うようになっていた。
 どうやら向こうも終わりが近づいてきたらしい。
 誰にも言えない、まして見られるなんてとんでもない。――はずの、可憐な女の子の下痢便排泄が、ついに終局へと至ってゆく。荒れ狂っていた彼女の腸は、ようやく治まりを見せ始めた。
  プビッ……ビビビビッ……ジュビ……ッ、……プウッ!
「……はぁぁぁ〜……」
 ――そして、最後に小さなおならを放つと、彼女の肛門はおとなしくなった。
 まるで嵐が過ぎ去ったかのように。……ああ。終わった。終わったんだ……。僕は依然快感の渦に肉体と意識とを飲み込まれながら、わずかに残った理性的意識でそれを把握した。


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  ガラガラガラガラガラガラーーッ、ビリッ!
  カサカサカササッ、ガサガサガサ……ポチャッ、ガラガラガラガラガラーーッ!

 一息もつかぬ間に、彼女はもう肛門を拭き始めた。
 トイレットペーパーを激しく巻き取る音がすると、すぐに白く細い手がそれを掴んで汚尻まで下りてきて、そして丸まった紙を下痢まみれの肛門にぐしゃぐしゃと擦り付けた。それを便器に落としたかと思うと、彼女はもう次の紙を勢いよく巻き取り始めた。かなり焦っているようだった。一分一秒でも早く教室に戻りたいという気迫が感じられた。
 僕が教室を出た時のいかにも限界といった様相からして、彼女がトイレに立った時、何をしに行くのかは教室中の誰もが気付くほどに露骨であったことだろう。それでも本人はばれていないとでも思っているのだろうか。それはそれで可愛らしいが。……もしかしたら、おととい十四分かかって戻ってきた時も、あれでいて実は焦っていたのかもしれない。乙女心というやつだろうか。

 その後彼女は弱く小刻みな小動物のような呼吸を繰り返しながら、汚れきった肛門を、しかし素早く拭ききった。
 最後にペーパーでくるんだ人差し指を穴の中に挿入していたのが印象的だった。時折ペーパーの茶色く染まった面が見え、それは彼女の「おしりを拭く」という恥ずかしすぎる行為と共に、僕に新たな興奮を与えた。
 それから彼女は立ち上がると、またガサガサと音を立てておしりの辺りを拭き始めたようだった。これはよく分からなかった。次々と舞い落ちてゆく紙を見つめながら、もう十分に綺麗になったのではと感じた。しかし十回ほど同じことを繰り返すと、彼女はしばらく静止し、ゆっくりとパンツを上げた。そして最後に、それまでよりも大量に紙を巻き取ると、床に撒き散らしてしまった下痢便をごしごしと拭き取り始めた。

 この時には、僕はもう仕切り板から離れていたので、ほとんど物音しか分からなかった。
 床の汚物を拭く作業に、彼女はかなり時間がかかっていた。途中で紙が足りなくなったらしく、慌てて隣の個室にロールを調達しにゆくという可愛らしいハプニングもあった。最後に衣擦れの音がしたので、彼女はスカートをたくし上げたパンツ姿のままで作業をしていたようだった。ロングスカートの裾に下痢便が付くことを恐れたのだろう。


 そして。

  ゴボジャアアアアァァァーーーーーーーッッッ……
  ガチャッ

 おそらく十分以上をかけて全ての作業を終えた彼女は、静かに個室から外へ出た。
 今回はさすがに手を洗っていた。僕はその水音を聞きながら、教室を出てから初めて腕時計に目をやった。……午後3時5分。授業終了までは実にあと五分しかなかった。僕がトイレに立った時は2時42分だった。あれから23分も経っていたのか。もしかしたら、彼女が急いでいたのは、なんとか授業中に教室へ戻る為だったのかもしれない。

 やがて彼女の小走りな足音がトイレから廊下へと出てゆくと、僕も急いで個室から出た。
 全てを産みだした少女が排泄の許されない空間へと戻り、奇跡の時間は終わりを告げていた。
 だが、僕はまだ最後に、どうしてもやりたいことがあった。

  ……ガチャッ
 時計を見ながら、僕は隣の個室へと入った。
 同時に彼女の腸の中の臭いがむわりと漂う。下痢便の腐敗臭。彼女が今さっきまで壮絶な脱糞放屁を演じていた、物凄い悪臭が漂う空間。これまでとは段違いの異臭に堪らず股間をいじりながら、僕は血走った目で便器を見下ろした。彼女がまたがり、むき出しのおしりからビチビチのウンチをぶちまけていた便器。その底にはほんの一分前まで、物凄い量の下痢便とトイレットパーパーが山をなしていたはずだ。
 そして僕は彼女がそうしていたようにしゃがみ込み、その便器に顔を突っ込んだ。――やっぱり。便器の壁面に茶色い飛沫が大量に付着していた。デザートにこれを見たかったのだ。僕は満足した。もちろん、できれば何時間もそれを見つめ続けていたかった。が、残念ながら時間が許してくれなかった。

 僕はそれを目に焼き付けると、静かに立ち上がった。
 午後3時7分。あと三分しかない。僕は最後に、彼女の闘いの舞台となった個室を見回した。静かなトイレ。どうやら縁だけは拭いたらしく、見た目は綺麗になっている便器。そこにしゃがみ込んでいる彼女の姿を思い描いて再度興奮する。
 そして床を見つめた。女の子を表す、ピンク色のタイル。彼女が中腰でドロドロの下痢便を噴射してしまった床。まさかあそこまで切羽詰っていたとは。本当に酷い下痢をしたのだと改めて興奮した。今は綺麗になっているこのタイルも、ほんのさっきまで茶色い未消化物に埋まっていたのだ――。

 ……そう思った瞬間、この日最後の奇跡と僕は出会った。気が付いてしまった。
 タイルは綺麗になっていた。天井の光を照らしてぴかぴかと輝いていた。いわば彼女の体液によって水洗いをされたようなものなのだから。
 が、それぞれのピンク色の隙間にある、白いセメント。その色が変色していた。……薄い黄土色に。便器の後方一帯にかけて。また、胸がぞくりとした。快感の絶頂を迎えてから落ち着いていた胸の鼓動が一瞬で元に戻った。しゃがみ込む。セメントの色はその一帯だけ明らかに違った。放射状に黄色くなっている。どくん、どくん、と胸から血の暴れる音が聞こえる。指を伸ばして触ってみた。ざらざらとした荒い質感。――分かった。ぶちまけられた下痢便の水分を、色素ごと吸い込んでしまったんだ。これは、簡単には洗えない。子供でも分かった。洗剤でも使って、ブラシか何かで徹底的に磨かないと無理そうだ。
 だから彼女はあんなに床を拭くのに時間がかかっていたんだ……。胸を詰まらせて必死な表情で何度も何度もペーパーを擦り付けて……それでもどうしても汚れが取れなくて……。それで、授業終了の直前に諦め、泣く泣くトイレから逃げていったのだ。下痢の痕跡を残して便所を後にした彼女。きっと物凄い羞恥を――、ここから駆け出した瞬間も、そして今も教室で味わっていることだろう。胸の締め付けられそうな恥辱。彼女が授業終了に間に合うようにここを出たのは、この個室を自分が使ったという事実をぼやけさせる為でもあったのかもしれない。これでもし授業終了までここに篭っていて、そして誰かが外で待っている状態で外に出る羽目になったら――。そうだ。きっとそうだ。僕は、彼女の想いが解ってしまった。悲惨だ。なんて惨めなんだ。たかが下痢でここまでの悲劇に見舞われるとは――。

  キーンコーンカーンコーン――

「っ!!!」
 しまった。授業終了のチャイム。時計を見ると、きっちり3時10分。
  ガチャッ!
 僕は慌てて外に出た。気配で分かっていたが、女子トイレの中は誰もいない。
 素早く入り口側の壁に隠れ、廊下の気配をうかがう。
 ――良かった。まだどこのクラスも終わっていない。廊下は無人だ。僕は即座に外に出た。

 そして全力でA組に戻り、慌ててドアを開けた。
 教室中が固まる。一瞬の静寂ののち、クラスのあちこちで笑いが起こった。
「おまえも大便か」
 プリントを配っていた先生が立ち止まって苦笑いする。
 しかし僕はこの時、彼女だけを見ていた。
 彼女は真っ赤な顔で、目を赤く腫らしてうつむいていた。ああ、予想通りの表情だ。かわいい。なんてかわいいんだ。僕はまた胸がぞくぞくとした。下半身を着衣で包んでそこに座っている彼女。一人の内気でおとなしげな女の子。雪のように儚げな美少女。もう、大便なんてしそうにない。――でも。僕は知っている。全て見ちゃったんだ。君が駆け込んだトイレの中でした物凄いことを。君の全ての中で一番汚くて臭くて恥ずかしくて下品な行為を。――君が無様にも便器の外に下痢をしてしまったこと、爆竹のような壮絶な音を立てて下痢便をぶちまけたこと、そのビチビチの泥ウンチが恐ろしく臭かったこと、大砲のようなおならまでしてしまったこと、そしてガニ股で獣のようにうなって腸の中の糞をひり出したこと、最後にみんなのための個室を排泄物で汚したまま逃げ出してきたこと。――そんなに可愛い顔で。小さな可愛い体で。服も可愛くて、髪形も可愛くて、妖精みたいな愛らしさに包まれていて。それなのに、下痢をしてやってしまったんだね。ピーピーで我慢できなくて。それで本能に従って……。
「おい、どうした。早く戻らんか」
 聞こえない。
 その時、彼女がふと顔を上げた。そして目が合った。だが彼女はびくっとして、一瞬後には恥ずかしそうに顔を伏せてしまった。……ああ、やっぱり可愛い。羞恥に悶えてる。いま恥ずかしくてたまらないんだね。きっと何もかもが、この世界の全てが恥ずかしいんだね。僕は本当に酷いことをしてしまった。女の子の大便排泄、それも凄まじい下痢を覗き見てしまうなんて。
 今でも目を瞑ればあの丸く柔らかそうなおしりが、下品に盛り上がった恥ずかしい肛門が、そこから火山の噴火のような勢いで飛び散るドロドロの下痢便が――何もかもが全て目に浮かんでしまう。焼きついてしまっている。鼻にも、まだあのブピブピとぶちまけられたピーピー下痢ウンチの強烈な臭いが残っている。未消化のまま小腸から駆け下ってきた食べ物のカスの、腐った卵のような物凄い悪臭。『ぶびぶぼぼぶぴっ!』頭の中に彼女の肛門の音が響き続けている。耳も全てを記憶している。
 ……ああ。本当に。夢を見ていたようだ……。

「おい、おまえだいじょうぶか?」
 また誰かに声をかけられた。この時ようやく僕は現実に戻った。
 見ると、授業が終了していたのだ。みな教材を鞄の中に入れ始め、早い者はもう席を立ち上がっていた。
 そしてそれに気付いた瞬間。彼女がうつむきながら僕の目の前を駆け抜けた。
 同時に僕は二重の意味ではっとした。一つは単純に、あの彼女が僕のすぐ側を通ったから。
 そしてもう一つは――。彼女の小さな体から――。

 ――ウンチの、臭いがした。


<5> / 1 2 3 4 5 / Novel / Index

 僕は帰宅と同時に倒れて病院に連れていかれた。
 過労と診断された。小学生では珍しいらしい。当たり前だ。
 親にすごく心配されたが、本当のことなどは言えるはずもなかった。

 そして僕はそのまま今度は発熱を起こし、三学期の始業式の翌日まで起き上がれなかった。
 それで十二月中の残りの回はもちろん、新年の五日から七日まであった講習にも参加できなかった。

 十日にあったテストでは全教科ぶっちぎりで過去最低点を取り、受験B組に落ちた。
 なぜか彼女は栄冠組に上がっていた。

 次のテストで僕は頑張ってA組に戻ったが、栄冠の壁は高く、いくら頑張ってもあとわずかで届かなかった。
 やがて僕は親の仕事の都合で引っ越すことになり、日能研をやめて近所にあった四谷大塚に移った。
 二年後、そこそこの私立中学に受かった。

 ――結局、あれから彼女がどうなったのかは分からない。
 もちろん、必死に彼女のいる栄冠組に上がろうとしていた頃――あの冬休みから半年ほどの間は、彼女のことが気になって気になって仕方がなかった。毎日彼女のことを考え、彼女の脱糞を思い起こして興奮を反芻していた。夢にもいつも彼女が出てきて、僕の目の前で恥ずかしそうに臭い下痢便を肛門から噴射した。僕は塾の廊下などで彼女とすれ違ったりするたびに胸をどきどきとさせていた。彼女のことで頭がいっぱいだった。
 けれど、それも思い出だ。
 引っ越しが決まって、僕が通っていた日能研下里校に最後に通塾した日、僕は彼女に何かを伝えようかとも思った。だがやめた。そんな勇気は出せなかったし、排便中の肛門を覗き見た僕は、彼女とはっきり目を合わせて会話をすることなどできそうにもなかった。

 もしあの究極の恥態を見られていたとしったら、彼女は確実に泣き出すだろう。
 彼女が羞恥心溢れる思春期直前の少女であり、その性格が内気で極めて繊細そうであることを考えれば、肛門を見られたというだけでも、極端なところ死さえ選びかねない。
 結局、そんな彼女に、何もかも見てしまった僕は近づくべきではなかった。
 おそらく茶色い性欲から発展して僕は彼女のことが好きになっていたが、その想いはおそらく神が許すものではなかったのだ。

 彼女は、文字通り、僕の夢を叶えてくれた。
 それで十分だ。僕だけの奇跡は、僕だけの胸の中にしまっておこう。
 彼女は腹を壊してトイレに駆け込んだだけだ。恥ずかしいトラブルこそ多くあったが、それ以上は何もしていない。

 いずれにせよ、全ての欲求が完全に満たされたあの夢のような瞬間を、僕は忘れることができない。
 色褪せない記憶。今でもそれを頻繁に情欲のはけ口に使っている。
 彼女がどんなにそれを嫌がったとしても、あの奇跡の23分を僕は永久に忘れられないだろう。

 時間も、距離も。何もかも離れてしまったが。
 あの日の小学四年生の可愛い彼女は、今でも僕の中に在り続け、そして喜びを与え続けているのだ――。


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